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店を持った理由

「今から笛を吹いてラットを誘き出す。いくら弱いと言ってもモンスターだから気を抜くな」


「「はい!」」


「それじゃ、最初はリースからだ。ニッカはカヤの傍にいてくれ」


「「はい!」」


 リースくんが棍棒片手に前へ出る。初めての戦闘のせいか、武器を握る手が微かに震えている。


「行くぞ」


 クレスが笛を吹く。ホイッスルのような高く細い音が森に響き渡ったと思った直後。


――ガサガサ!


 草木が揺れ、成猫くらいの大きさの毛のないねずみが現れる。きっとあれがラットなのだろう。


くそ~、毛があったらもふもふしてたのに……!



 ラットは、リースくんに狙いを定めると、そこそこの速さで突進をしてきた。


「焦るな。良く引き付けて……今だ!」


「てい!」


「ギャア!」


「おー!」


 リースくんの振り上げた棍棒がラットにクリーンヒット!


 めっちゃ良いタイミングに、思わず拍手しちゃった。


「よし! 良いぞ!」


「はい!」


 初めてのヒットはとっても嬉しかったんだろうな。リースくんの顔から緊張が徐々に消えて、こん棒を振る手もぎこちなさが無くなっていく。


 だけど、ラットもラットで結構丈夫なのか、バトルはもう少し続きそうだな。


「そうだ……」


 今のうちに……。


「ねぇねぇニッカちゃん」


「はい、なんですか?」


「ニッカちゃんはどうして店を持とうと思ったの?」


 十八歳と言えば、高校生を卒業する年。確かに就職とかする人もいるけど、私なんて適当に大学に入れればみたいな感じで、未来なんて全然考えてなかった。


だからこそ気になってた。なんでニッカちゃんは、お店を持つことにしたのだろうって。


「前にも言いましたが、私には夢があります。それにお父さまの手助けをしたかったのです」


「手助け?」


「……私をこの世界に産んでくれたお母さまは私が産まれてすぐに亡くなったと聞いています。そんな私を勇者という大変な立場でありながら、男手一つで育ててくれたお父さまは育ててくれました。前の世では親の愛情を知らなかった私に、あの人は確かな愛をくれました。そのご恩を親孝行という形で返したいのです」


「……すごいな。ニッカちゃんは」


私は苦笑を浮かべてしまった。


こんなに色んな事を自分でしっかり考えて、決意して……しかも夢もある。


本当に尊敬って言葉しか浮かばない。


「カヤお姉さまは、この世界でなにかやりたいことはないのですか?」


「私は……」


 何か言おうとするけど、言葉が見つからず口を開いては閉じてしまう。


 今の生活は楽しい。ダリアもいてオパールもいて、帰れる家もあって、楽しく暮らせて。

 けど、全て好意によって手に入れたものだ。


 このままでいいのだろうか。ふと浮かぶ言葉に、胸を締め付けられる。


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