観光ダンジョン
「お前ら……マサに言われた事を忘れたのか」
「けど、やっぱりダンジョンって言ったらモンスターとの戦闘じゃないですか! お願いしますクレス様!」
「お願いします!」
「……お前らな」
なんとなく二人の気持ちが分かるのか、クレスも強く言い返せないみたい。それはそうだよね。リースくんはマサさんに憧れてるし、ニッカちゃんだって将来自分で食材モンスターを捕まえてお店をやるっていう夢を持ってる。
そんな二人にとって、練習ダンジョンは稀とない予行練習の機会だもんね。
「クレス」
「なんだ」
「諦めたまえ!」
ぽんと肩を叩きながら親指を立てると、汚物を見るような視線を向けられた。
なんだよ! 失礼だな!
「お荷物があるだけでも頭が痛いのに……」
「頑張れ勇者御一行の一人クレス様!」
「殴っていいか?」
「暴力はんた~い」
へっへっへ。この前は言い返すしか出来なかったからね。ここいらで反撃しておかないと。
お、大人げなくなんてないんだからね!
「……すまん。挑発笛も貸してくれ」
リースくんとニッカちゃんの期待と羨望の眼差しと私の応援が聞いたのか、見事にクレスが折れた。
ニッカちゃんとリースくんがハイタッチしているのを見て、私は目を細めた。
「いや~、若いっていいねぇ」
「たく、面倒事しかお前は持ってこないな」
「いや~それほどでも」
「褒めてない」
華麗なる一刀両断。そんくらいじゃ私のハートには傷一つつかないぜ。
「ミーたちはドームで待っててくれ」
『分かったわ』
『ちぇっ、俺様の華麗なる技を見せてやろうと思ったのに』
『今度にしなさい』
「ぎゃう~」
三匹は従族専用の控え室へと歩いて行くので、どんな感じなんだろうと覗いたら、食べ物いっぱい、ふかふかのベットたくさん、遊び場ありの子供部屋みたいになってた。
なんか、私も一緒に中で遊びたい。
「ほら、とっとと行くぞ」
クレスからこん棒を貰い、ブラックホールの前に立つ。
「油断だけはするな……行くぞ」
クレスの後を付いて、ブラックホールを抜ける。
直後、眩しい光が視界を覆ったかと思ったら――。
「ここが練習ダンジョン最低ランク。ウゾウの森だ」
目の前に森が広がっていた。
「おお!」
思わず感銘の声を上げる。
前に続く獣道。奥が見えない程、うっそうと生えた木々。どこからともなく聞こえてくる鳥の囁き声。
なんか、別世界に来たみたいだな。
「凄いね」
「はじめはそうだろうな。……行くぞ。戦闘もしたいならゆっくり進んでると日が暮れてしまう」
「は~い」
そんな感じで始まったダンジョン探索。といっても、私はのんびり三人を付いて歩くだけなんだけどね。
道は一本道なので、それなければ洞窟まで一直線。大変な事はなにもない。さすが観光ダンジョンって言われているだけあるね。




