練習ダンジョン
なんとかしないとこっちでも喧嘩が起きそうだよ。
「クレス。クレス」
「……なんだ」
「ここはさ。もう男らしく『俺が皆を守ります!』的なこと言ってくれない?」
「は?」
「なんかこのままだと取っ組み合い始めそうなんだもんあの二人。それに、マサさん早く会議行かないと迎えに来たクレスが怒られるんじゃない?」
「そ、それは」
『そうね。ここはクレスが言った方が早いかも』
「ミーアちゃんもクレスが言った方が良いって言ってるよ。ほら、頑張れ男前!」
ぽんとクレスの背中を叩くと、めちゃくちゃめんどくさそうな顔をしつつもクレスが二人の間に入ってくれた。
結果、日が沈む前に帰ってくること。危険があったら即座に戻ってくることで話がついた。
良かった良かった。
「絶対に、絶対に危険だったすぐに逃げるんだぞ」
何度も言いながらマサさんは城に向かってった。そんな心配しなくてもと思うけど、実は練習ダンジョンって危ないのかな?
「ミーアちゃん」
『なにかしら?』
「練習ダンジョンって、そんなに危険なの?」
『モンスターが出るし、私たちが行けないからじゃないかしら。けれど、何かあったときは支給される笛を吹けばすぐに管理の冒険者が飛んできてくれる仕組みになっているから、怪我はあっても死ぬことは絶対にないわ』
「ほうほう」
それなら、安心か。まぁ、油断大敵ってことだね。
「ほら、着いたぞ。ここが練習ダンジョンの入り口だ」
クレスに連れられてついたのは、大きなドームの施設。
観光の時に何度か見かけてたけど。
「まさかこれがダンジョンでこんな街の中にあるとは」
「ダンジョン自体は別の場所にある」
「そうなんだ」
てっきり街外れにでもあるのかと思ってた。
「武器は貸し出された物しか持てない。笛は絶対に手放すな。何かあったときは躊躇わずに吹け。いいな」
「「「は~い」」」
三人で手を上げる。うん。なんか遠足みたいになってきた。
中に入ると、思ったよりも広かった。学校の体育館くらいはあるだろう。
手前に受付があって、受付嬢がにこやかに私達を迎えてくれる。右には休憩所。左にはアイテムや貸し出し用の防具がそれぞれ置いてある。
そして、受付の奥にはブラックホールのような黒い大きな穴が三つ渦巻いていた。きっとあそこから練習ダンジョンに行くんだろうな。
なんか、わくわくしてきた。
「クレス様。お久しぶりです。今回もいつものように最高難易度の練習ダンジョンですか?」
「いや、今日は最低ランクの……洞窟がある練習ダンジョンで頼む」
「かしこまりました。でしたら、武器をお預かりします」
クレスは腰から剣を外すと、受付嬢に渡す。変わりに彼女が出したのは、こん棒。
「え、それで行くの?」
「は?」
「だってさ。仮にもダンジョン行くんでしょ? それなのに殴ることしかできない武器で行くのは流石に不安なんだけど」
「最低ランクの練習ダンジョンは観光ダンジョンとも呼ばれてて、一般人でも気軽に行けるように設定されたダンジョンだ。出るモンスターはラットと呼ばれる小型のモンスターのみ。あいつらは臆病だから、挑発笛を吹かない限り襲ってくることはない。それに仮に襲われてもこん棒で殴れば倒せる」
なるほどね。それなら安心なんだけど。
「クレスクレス」
「なんだ?」
「明らかに隣の二人がしょげてるんだけど」
「は?」
ちょいちょいと私が指をさした先にはがっくりと肩を落とすニッカちゃんとリースくん。背後の空気がとてつもなく重いのは気のせいではない。
「なんだいきなり」
「クレスがダンジョンの説明しているうちに二人共しょげていったんだけど」
まぁ、なんとなく理由は分かってるんだけどね。
どうやらクレスも察したらしい。大きなため息を吐きながら呆れたような表情を浮かべる。
「まさか、モンスターと戦いたい。なんて言わないよな」
同時に跳ね上がるリースくんとニッカちゃんの肩。
こんな分かりやすい図星の表現初めて見たや。




