怪しい雲行き
「だが、俺はこれから会議がある」
「え! 王様は今日お休みって……」
「さっき水通信で急遽決まったんだ。すまない」
一難去ってまた一難みたいな状態になってきた。
けど、冒険ライセンスを持ってる人がいれば中には入れるのだから全てが閉ざされたって訳じゃない。
「誰か冒険ライセンスを持ってて強い人がいると良いんだけど……」
私も心配だし付いていきたいからね。出来ればお荷物あっても簡単にモンスターを倒せる人求む。
「それなら適任がいるぞ」
「本当ですか!」
「あぁ。丁度呼んでおいて正解だったな」
マサさん頼もしい~! と思ったけど、なんだこの嫌な予感。
確かマサさん。水通信で急遽会議が決まったって言ってたよね。冒険者ライセンス持ってて、それなりに強くて水通信が出来る人物。
「……まさか」
きっと私の表情はこわばっていただろう。そんな私を見てにやりと嫌な笑みを浮かべるマサさん。
やばい、嫌な予感が確定になったぞ!
「マサ。迎えに来たぞ」
丁度いいのか。悪いのか。店のドアが開いて一番会いたくない人物――クレスが顔を出す。ミーアちゃんは相変わらずかわゆいぜ!
向こうも同じらしく、私を見てものすごく嫌な顔。おいこら、怒るぞ。
「ミーアちゃん。今日も可愛いね! ついでにクレスこんにちは」
『あら、カヤじゃない』
「マサ。なんでここにこいつがいる」
「俺に用があったらしくてな。ニッカがクッキーを焼いてくれたからついでに一緒に食べてた」
「なるほどな……。なら話は済んだだろ。会議に行くぞ」
「それなんだが、クレス。お前はちょっとカヤたちと一緒に練習ダンジョンへ行ってくれないか?」
「は?」
突拍子もないお願いに、クレスはぽかんと口を開いていた。や~い間抜け面! ってはやしたてたかったけど、ここでクレスがぐれたらせっかくのマサさんの好意が無駄になる。
頑張れカヤ! ここは大人としてリースくんのために我慢するのよ!
「なんで僕が練習ダンジョンなんて行かなきゃいけない」
「あそこの洞窟にあるシオル石が欲しいんだ。だが、行きたいリースくんが年齢制限に引っかかっちゃうからさ。俺の変わりに同伴してあげてよ」
「……だからなんで僕が」
「今度、稽古つけてやるからさ。どうだ?」
私は見た。クレスの目が輝き、嬉しそうに笑みを浮かべた後、はっと無表情になるのを。
私は見たぞ!
「……仕方ないな。付いてってやる。この子の付き添いをすればいいのか?」
「私も行く行く!」
「……なんでお前が」
「リースくんとクレスだけじゃ心配なんで」
「邪魔だから付いて来るな」
「いいじゃん! 行きたい行きたい!」
「お前は子供か」
実のところ、ダンジョンっていうのに興味深々なんだよね。クレスと一緒っていうのは嫌だけど、彼の実力は火山の時に見てるからね。お荷物二つ三つ増えても大丈夫って事くらいは知ってるもんね~。
「あ、あの!」
「どうしたの? ニッカちゃん」
「わ、私もダンジョン行きたいです!」
その発言には、私だけじゃなくてマサさんもびっくりしたのか、石のように硬直してた。
「ニッカ……本気で言ってるのか?」
「はい。私、お父さまに言った夢諦めてないです」
「……。練習ダンジョンとはいえ、お前を行かせるわけにはいかない」
「お父さまは十二歳で既に練習ダンジョンに入ったと聞いています。私もあと数日で十八歳です。ダンジョンは従族と契約するまで我慢します。ですが、その予行として練習ダンジョンにカヤお姉さまと共に行くことをお許し下さい」
「お前は大切な一人娘で妻の忘れ形見だ。そんな大事な子を危険な場所にやれない」
「お父さま!」
……おっと。これは怪しい雲行きになってきた。




