ページ貝の煮込み、流水の実のソース添え
――ぐ~。
「……」
「……」
私のお腹のばかぁ!
けどさけどさ! 試作とはいえ、こんないい匂いがしてたらお腹だって鳴るよね。今のは不可抗力じゃ!
「あの、もしよろしければ試食していただけないでしょうか?」
「え! いいの!」
「えっと、お姉さまがよろしければ」
お姉さま……。なんと素晴らしい響きなんだろ! 胸がどきどきしちまうぜ。
「まだ自己紹介してなかったね。私は狭山華夜。この世界ではカヤって呼ばれてるよ。前の
世界ではブラック企業で事務やってました~。猫助けようとして車道飛び出したらこっちにって感じだね」
「私は、前世では、日之輪と呼ばれていました。今はニッカと申します。神社で巫女をしていました」
「巫女さん!」
めちゃ珍しい職業キタコレ!
巫女さんってあれだよね。なんだっけ、巫女服着て初詣とかでお守り売ってる人だよね。初めて会ったけど、そう言われるとなんというかこう……オーラ? というか、神々しいものを感じるわ。
「巫女さんやってる人と初めて会った!」
「そうですね。あまり私みたいな者は少なくなってますから」
そうなのか! 確かに大晦日とか初詣以外で巫女さんってあまり見ないもんね。日本の伝統だからなくなって欲しくないんだけどな。
「巫女さんって事は……精進料理とかやってるの?」
「精進料理は寺になりますね」
「おう! 違うのか!」
「そうですね。私が作るのは、食材モンスターや自然の食べ物を中心に使った料理です。今お持ちしますね」
食材モンスター。その名の通り、モンスターの中で食用として扱われている者たちを指すらしい。チリチリ鳥とか代表的な食材モンスターだって、リラさんが言ってたな。
冒険者の中には食材モンスターだけを狩る食材専門冒険者っていうのもいるらしいから、この世界では結構ポピュラーだったするんだよね。
「お待たせしました。ページ貝の煮込み、流水の実のソース添えです」
「おお!」
出て来たのは、二枚貝みたいな食材モンスター。綺麗な銀の殻に自分の顔が映るから、巷では鏡替わりに使われてる。そこに添えられてるのは、流水の実っていう青を混ぜたような綺麗な色のソース。それが、綺麗の殻や皿を彩ってて、なんか天の川を見ているみたい。
「いただきま~す」
一口目、パクリ!
噛んだ瞬間、口に広がる潮の香り。一瞬、海に来たのかと思う位、うまみと共に広がっていく。
そして、流水の実のソースが仄かな酸味と共に、ページ貝の味を胃まで運んでくれる。そのせいか、食べ終わった後も口の中はさっぱりしてて、少し濃い味付けでもしつこさを感じない。
「おっいし~!」
「本当ですか!」
「うん。本当に美味しい! は~最高、幸せ」
「カヤお姉さまにそう言って貰えてうれしいです!」
あ~もう、ニッカちゃん良い笑顔。可愛いったらありゃしない。
なんかどこぞのおばちゃんみたいになってるけど、私は気にしないよ!
『カヤ! 俺様も食べる!』
「いいよ~。はい」
『はふはふ……美味いな!』
「でしょ! ダリアも美味しいって言ってるよ」
「嬉しい限りです。本来は自分で食材を採りに行きたいのですが、まだ成人ではない為に従族がいないのです。そのせいでダンジョンには入ってはいけないとお父さまに言われていまして」
「いや、それお父さん正解」
こんな可愛いい子がダンジョンに行ったら、モンスターにペロッと食べられちゃうよ!
「けど、私諦めてません。従族と契約したら絶対に食材モンスターを狩りにダンジョンに行くんです!」
「やっぱり女の子一人じゃいくら成人してても危ないんじゃ……」
「大丈夫です! 毎日筋トレしてますから!」
「……」
どやって顔で力コブを作るポーズをしてくれるニッカちゃん。
なんだろう。心配しかない。
「うんとね……。最初は誰でも良いから冒険者と一緒に行きなね。最初って一番危ないから」
「分かりましたカヤお姉さま!」
フラグにならないといいけど、そう思いながら私はページ貝を口に運ぶ。
やっぱりうま~。




