同じ境遇
「あああ、あなたたち、何者ですか! まさか、どどど泥棒ですか‼ それならこの店にはなにもないのでお引き取り下さい!」
「いや、泥棒じゃなくてね……うわ! おたま振り回さないで!」
おたまを振り上げ、飛び掛かってくる少女。なんか、第一印象は儚げな感じだなと思ってたけど、とんでもない。めちゃくちゃアクティブだったわ!
「私たち、お客として入ってきただけだから!」
「え?」
ぴたっと少女の動きが止まる。
今の私の状態。両手上げて降参ポーズ。ダリアはちゃっかり近くの窓際の椅子に移動して昼寝してた。
くそぉ。薄情者め……。
「お、客様?」
「そう! あまりにも美味しい匂いがしたからつい入っちゃった……ごめんね」
両手を合わせると、さっと少女の顔が青くなる。やっと誤解が伝わったみたい。良かった
良かっ――。
「私なんてことを! お客様に対して、武器を振り上げるなんてこれはもう、切腹してお詫びするしか――!」
「ええ!」
素っ頓狂な声が出た。ちょちょちょ! それはなんでもやりすぎ!
おたま振り回したくらいで切腹なんてなったら、昔の人も真っ青だよ。
「……ん? 切腹?」
なんでこの子は、そんな物騒な単語を知ってるんだ?
この世界の刃を使う自害方法って、切腹じゃなくて打ち首じゃなかったけ?
「もしかして……転移者? いや、転生者の方だったりする?」
「何故そうだと」
「切腹なんて言葉、日本以外じゃ使わないだろうと思って」
「あなたは……その」
「私は転移者っていうカテゴリーらしいよ」
あれ? なんか違ったかな?
今度は石像みたいになっちゃった少女を見てると、
「同じ境遇の方に会えるなんて……」
大粒の涙を流し始めてた。美少女の涙程、美しいものはないよね~。
って、今はそういう事言ってる場合じゃない。
「ほら、涙拭いて……」
「なんと心優しい。また涙が」
「あわわ」
さらに泣き出す少女に私パニック。とりあえず椅子に座らせて背中を暫く撫でてると落ち着いたのか、泣きやんでくれた。
もしかして、彼女は転移者って理由でいじめられてるのかもしれない。神様って思った以上に適当だからね。私はアルバさんの所だったけど、変な所に転移してたり、いじわるな人の元に転移してたらと思うと……ぞっとする。
もしも本当にそうだとしたら、同じ転移者同士助けてあげたい。こんな可愛い子ほっとけん。
「もしかして、なにか困ったことでもあるの? 私で良ければ相談にのるよ」
「ありがとうございます。いえ、今の生活に不満はありません。むしろ前にいた世界よりも
良い生活をさせていただいてます。先程の涙は感激の涙です」
「そうだったんだ」
ほっと体から力を抜く。なにか困った事があってとか、助けてってわけじゃなかったなら良かった良かった。
「それとすみません。お店が開くのはもう少し先でして……メニューも試作を段階なんです」
「あらま、残念」
「申し訳ございません」
「ううん。気にしないで!」
とすると、私完全に不法侵入者って事じゃん。これはもう全面的に私が悪いとしか言えない状況だね。
なら早々に退散した方がいいかと思って腰を上げた瞬間。




