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香りに誘われて

 そんなこんなで、夜越えて朝。


 朝食を食べた私はダリアと一緒に屋台商店街に出た。


「う~ん。思った以上にいいのがない……」


 屋台商店街にある良さそうな雑貨屋に片っ端から入っているんだけど、これだ! っていうのに出会えない。やっぱりプレゼント探しは大変だわ。


 昼までには見つかると思ったんだけどね。


『カヤ! 腹空いたぞ!』


「お昼にしよっか」


 歩き回ったせいか、私もお腹が空いてきた。丁度昼時って言うのもあって、色んな所から良い匂いがするのも原因だろうな。


 腹が減っては戦は出来ぬっていうしね! 


 美味しそうなところないかなと辺りを見回していると、目に入った店があった。


 白い木の扉が目立つけど、それ以外はぱっとしない、こじんまりとした店。扉の横に窓があるけど、レースがひかれているせいで店の中は見れないようになっていた。


 看板もないし、扉になにも立て札もない。本当にお店なのだろうか? と首を傾げそうな外装だ。


 けど私は何故かここがお店、しかも飲食の店だという事を知っていた。観光の数日で入ったことはもちろんない。なのに何故、私はこんなにも断言してここが飲食店だと思っているのだろう?


 わかない。分からないけど、とりあえず……。


「この漂ってくる匂いはたまらん!」


 扉の前で深呼吸。直後、鼻孔をくすぐる芳醇な匂いは私を誘惑するのには充分過ぎた。いや、この匂いを嗅いで導かれないのは余程お腹いっぱいな人だけだね。断言できる!


「もうはいっちゃえ!」


 これで違ったら、ごめんなさ~い。とてもいい匂いがしてつい! って言えば大丈夫だろう。あわよくば料理をししょ……げふんげふん。


「ごめんくださ~い」


 ゆっくりと扉を開けた私は、店内をきょろきょろと見回す。

 

 四人掛けの机が三つに窓側に二人掛けが2つ。あとカウンターに一人掛けの席が5つ。


 そこまで広くない。だけど、所々に可愛い小物や良い香りのするハーブなどが飾ってあって、とても雰囲気の良いお店だった。


 きっと、経営者かこの店内をデザインしたのは女性なんだろうな。なんか、上流貴族の人とかお忍びで来たりしそう。


どうやら人はいないみたい。もしかして、夕方から始まるお店だったのかも……それなら早とちりしてしまったな~。やっちまったぜ。


「ここの開店は夕方からですか~!」


 さっきよりも大きめの声を上げながら店の中へ踏み込むと、奥の方から音がした。ガシャっとかそんな可愛い音じゃない。


――ドッカンガシャーーン‼


『な、なんだ⁉』


「あだ!」


 ダリアが飛び上がった瞬間、爪を立てたのか、肩に針が刺さったような感覚がした。

 痛いけど、ダリアが付けた傷なら大歓迎だぜ!


「あああああああ、えっとあああああの!」


「え?」


「えっと、あの、その!」


 出て来たのは、お玉を武器のように構えてた可愛い少女だった。


 年齢は、十代後半くらいかな。桜色の髪は三つ編みに縛られ、腰くらいまでの長さがある。視線を忙しくさまよわせている夕日色の瞳。可愛い顔立ちに、すっと通った鼻筋。ぷっくりとした桃色の唇。


 なんとまぁ、これは。


「うん、抱きしめてよしよししたい」


『声に出てるぞ』


「ありま」


 心で呟いたつもりだったんだけどな……これは失敬失敬。


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