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勇者マサ

「ん? 竜族か! これはまた珍しいものが来たな」


 豪快な声と共に現れたのは、思ったよりも細身の男性だった。


 年齢は20後半くらいに見える。溶岩にも負けない位、真っ赤な短髪。優し気な夕日色の瞳。綺麗な小麦肌。所々服の下から見える引き締まった体。さっきまで煮えたぎる火山弾を砕いていたはずなのに、まったく傷ついていない拳。


 きっとこの人がマサさんなんだろう。


 勇者と言われる人を初めて見たけど、なんか見た目は人間離れしてないんだね。クレスの話と実際見た光景で近寄りがたいのかなと思ってたけどちょっとほっとした。


「どれ、朝の筋トレも終わったし、久々に竜族の肉でも食べるか!」


 言ってることはかなりの勢いで物騒だけどね!


「たく、相変わらずの食い意地だな。マサ」


「その声はクレスか! 久々だな!」


 クレスがマサさんに近付くと、よっぽど嬉しいのか。ばっしんばっしんクレスの背中を叩いてた。叩かれるたびにつんのめってるところを見ると、それなりの力ではたかれてるんだろうな。私だったら、きっと吹っ飛ぶ。絶対に吹っ飛ぶ。

 

 女のか弱さなめんなよ。


「もしかしてお前、竜族を手懐けたのか! いやー一緒に旅してた時は、行く先々の村で女の子引っ掛けてたが、まさか竜族までおとすとはな。さっすがチーム一の美男子ってことはあるな」


「う、うるさい! それにあの竜族は僕のじゃない」


「じゃあ誰のだよ」


「私の家族です」


 オパールから降りて私はマサさんに近付いて……頭を下げた。


「はじめましてマサさん。私は、狭山華夜と言います」


「狭山華夜……転移者か」


「はい」


「そっか……なら俺も自己紹介しないとな。俺の名前は豊島政則。こっちではマサと呼ばれてる。しがない会社員だったんだが、事故にあってこちらに転移した。本来は50のじいさんなんだけど、能力のお陰でこの通りってわけだ。おかげで大好きな筋トレがいつまでも出来る」


「お前のは筋トレじゃなくて、陛下よりも酷い。言うならサバイバルだ」


「そうか?」


「お前の筋トレと言う名の地獄の被害にあった奴の名前を今ここで上げてやろうか?」


 まぁ、火山弾を平気で素手で砕く人の筋トレだからな。一般人にとっては地獄と同義になってもおかしくないよね……。


「そういえば、マサさんの従族は?」


「オレのは娘と一緒に留守番させてる」


「留守番!?」


 つまりマサさんは、単身でこの山に登って赤の洞窟に籠ってたってことだよね。


 改めてマサさんの凄さを痛感したわ。チート過ぎる。


「娘はカヤと同じくらいの年齢だから、もし良かったら友達になってやってくれ」


「おお! それは嬉しいご相談!」


 村には私よりも一回り年上か年下しかいなかったから、同年代の友達はとてもうれしい。その時にマサさんと娘さんのもふもふ従族を触らせてもらおう。


 楽しみがまた増えたぜ。


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