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第4話 緊急招集②

拙作を読みに来てくださり、誠にありがとうございます。今回も後書きにて設定資料を記載しております。

 「聖火君、ちょっといい?」

 会がお開きになった直後、小夜は真剣な表情で聖火を呼び止めた。

「はい、小夜さん。どうしたんです?」

 深く頷いて、小夜は続ける。

「学園に入るなら、少し私の我儘……お願いを聞いて欲しくてね」

「小夜さんから珍しいですね。俺に出来ることなら何でも手伝いますよ!」

「そう言ってくれると安心するわ。ありがとう!それでね……」

 小夜は自分の家の不条理な話をし始めた。



「私の家、白秋(はくしゅう)家は代々白炎眼(はくえんがん)という妖の弱点を見抜く力を授かる家なのは聖火君も知っているよね」

 聖火はコクリと頷いた。

「私の妹は黒炎眼(こくえんがん)という私とは正反対の炎命士や陰陽師(おんみょうし)と言った人間の弱点を見抜く力を授かった」

 小夜の表情が怒りに満ちていくのがひしひしと感じられるくらい、彼女の肩は震え始める。


「白秋家の人間は炎命士の手伝いをする観察眼役として戦地に出向くのが殆ど。妹はそれが出来ないってだけで小さい頃から奴隷同然の生活を送らされる羽目になったの」

「たったそれだけでそんな酷いことを……」

「妹が本家に居る間は、私が必死に守り抜いてきた。でも……白秋家は妹を分家送りにして、私から引き剥がしたの!私は絶望したわ!どうしたら、妹とそばに居られるかって必死で考えた!私が守らなきゃって……!でも……」

 小夜の頬に一筋の涙が伝った。紅蓮(ろく)、【白夜叉】と謳われた妖討伐の鬼、基本単体で動き、どんな戦場でも妖を神速で屠る彼女が、人前で涙を見せるなど今まで一度もあり得なかった。



「私には何も出来なかった……!」

 絶望する小夜、彼女は聖火の心配した表情を見て白い着物の袖で涙を拭う。

「ごめんね、聖火君!少し取り乱してしまったよ。続けるね……」

「大丈夫です、妹さんが酷い目に合っているのに何も出来ないんじゃ、悔しくて当然です。 」

 聖火は怒りに満ちていた。生まれた時に少し才が違っただけで奴隷扱い?人間には平等に人権が存在している。それは何が違くとも本人以外が勝手に消失させていいものじゃない。


「本家に取り合ってどこの分家に行ったか、足取りを掴もうとしたんだけど、これ以上の詮索をするなら妹を殺すと脅されてしまってね……」

「酷すぎる……何がそんなに……」

「本家は変わることを恐れていてね。代々受け継がれた白秋家の血に黒が混じることが許せないの。自己中心的な奴等……いずれどうにかしてみせる!」

 小夜は怒りで声を荒げた。


「本当は独断で動いて解決したいけど、私は今じゃ護衛付き。面倒だけど、今日もこの建物の敷地外で白秋家の人間が私を監視している。この中の様子は結界で見えないから、今は問題ないけど私が直々に手を下して妹は救えない」

 小夜は溜息を吐きながら、退屈そうに窓の外を見つめた。


「つい先日、有力な伝手からの情報を得てね。妹は孔雀(くじゃ)家という分家に居て、孔雀良人(よしひと)という男の表向きでは秘書、本当は奴隷として過ごしているらしいの」

「孔雀家ですか、少し聞いたことがあります。何でも妖討伐の為なら手段を選ばず、味方さえも贄に差し出す冷酷無比な家とか……」

「そう。それでも討伐の腕は本物だから、上も評価せざるを得ない。やってることはクズなのに上手く立場を利用してやりたい放題」

 小夜は地面を貫くような鋭い眼光で見つめる。


「建前は秘書なのに、本当は奴隷って……」

「本当に酷い扱いを受けているみたい。それにこの良人ってのが最悪でね。強さは一丁前、人望は無いけど手下を金で買うのよ。だから、学園が開校したら色んな人が彼の元に降る。妹救出は一筋縄では行かないの」


 小夜は瞳を大きく見開き、聖火に見せるように近づいた。光沢のある真っ白い瞳孔の中に陰陽の紋章がそれぞれ違う白色で区切られて刻まれている。瞳の中だというのに紋章はゆっくりとしたペースで回転し続けていた。

「これが白炎眼、白秋家でも陰陽の紋章がある人間はそう多くないわ。私を入れて、3人くらいね。真っ黒い炎のような瞳、それが黒炎眼よ」

「その瞳を持つ小夜さんの妹さんを孔雀家から救い出せればいいんですよね?」

「話が早くて助かるよ。頼まれてくれる?」

 聖火は顔を真っ赤にし、拳を握る。

「当たり前です! これは《白夜叉》からの命としてではなく、小夜さんの友として! 妹さんは絶対に俺が救ってみせます!!」

「……ありがとう」

 小夜は聖火に深々と頭を下げる。

 拳を強く握り締めているせいか、肩も震えていた。


「それじゃ、私は帰るね。聖火君、元気で」

「はい、小夜さんもお元気で!」

 満足げに帰っていった小夜を見送り、聖火は大地の帰りを待った。


 暫くすると、扉を蹴り開け、納得のいっていない様子の大地と、困った表情の長門が部屋から出てきた。

 さっきの話の延長線上だろう。

 長門は帰ろうとする大地の肩をポンと叩いて、意味深に微笑む。大地は暗い表情でその場を去った。

 長門は最後に「頑張ってね」と聖火にエールを送り、部屋の奥へ消えた。




 電車は夕闇の中を走り、窓の外には街灯が流れていく。大地は座席に深くもたれかかり、薄く汚れた天井を見つめていた。


「聖火……」

 突然の大地の呼びかけに、聖火が顔を上げる。いつもなら怒りや退屈な感情に身を任せ、愚痴や冗談が飛び交うような場面だ。しかし、大地は視線を窓の外に向けたまま、静かに口を開いた。


「お前が学園に行くことに、俺は今でも納得してねぇ……まあでも、長門の言うことも分かる」

「だい兄……」

「俺は、お前の全てを知っているつもりだ。お前が背負っているものの重さも、そのせいでどれだけ泥を被ってきたかも」


 大地の視線が聖火に止まる。

 その瞳は、いつもの荒っぽさとは違う、一度も向けられたことのない初めての瞳だった。真っ直ぐで、少しだけ寂しそうな光を宿している。


「もし、学園でどうしようもない窮地に追い込まれた時。任務を完遂する為とか、世界を救う為とか、そんな綺麗事は、お前が一人で背負い込むなよ。俺を呼べ、俺が何処にでも駆けつけてやる。……何があっても、お前は俺が守る」

 聖火は呆気にとられた。こんなことを言う大地の姿は初めてだったからだ。不器用で、ぶっきらぼうで、けれど何よりも重い愛に満ちていた。

「……分かってるよ、だい兄……」

 聖火がそう答えると、大地は鼻を鳴らし、椅子にもたれ、いつも通りのだらしない姿勢に戻った。しかし、窓に映る大地の横顔は、少しだけ安堵していたように見えた。

◾️白秋(はくしゅう)

炎命士の炎道と親交のある名家。

白炎眼(はくえんがん)を駆使して、妖を屠る、基本単体での任務に当たり、分家を持たず、白秋の血が通った純血のみを尊重する圧倒的純血主義。


◾️白炎眼(はくえんがん)

白秋家の人間に宿る妖の弱点を見抜く瞳。

瞳の中で陰陽(おんみょう)の紋様が回転する上位の白炎眼も存在し、小夜や現当主などのごく僅かの人間しか持っていない。

生まれ持った才能。


◾️黒炎眼(こくえんがん)

白秋家でも過去に数人しか居なかった、陰陽師や炎命士の弱点を見抜く瞳。

白秋では忌み嫌われている。


◾️孔雀(くじゃ)

目的の為ならば手段を選ばず、自分本位で我の強い人物が多い。そのせいか、仲も悪い。

圧倒的実力主義で、白秋との繋がりが深い。

残虐非道、冷酷無比という言葉が似合う家。


◾️陰陽師(おんみょうし)

炎命士とは違い、妖を祈りの力で屠る者達。

神を崇拝し、信仰することで得られる能力を持ち、炎命士を強く忌み嫌っている。


もし、少しでも良いと思って頂けましたら、

画面下部の《☆☆☆☆☆》で評価、感想、レビュー等、お待ちしております。

お忙しい中、読みに来てくださってありがとうございました。


次回更新は6/17 17:00を予定しております。

何卒、よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
小夜の涙と黒炎眼を巡る壮絶な血筋の闇が良かった。 妖討伐の鬼、白夜叉と恐れられる小夜が、救えなかった妹のために初めて涙を流す姿が非常に切なく、読者の感情を揺さぶります。 人間の弱点を見抜く黒炎眼という…
普段の読み回りと応援に加え、執筆活動までお疲れ様です! 少しずつ明らかになっていく世界観……次回も楽しみですね。 あとがきの解説もわかりやすくて助かります。 設定増えてきた頃に別途まとめていただけると…
ezelu先生、日々の執筆とご投稿お疲れ様です。貴作は独特な世界観に精密に織り込まれた設定が活きていて、拝読していて飽きがこない構成ですね。会話のテンポも良好で、思わず微笑んでしまうようなやり取りに登…
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