第3章 幕間 清水朋絵
ーーあの日から、身体の中に知らない熱を感じることがある。
その正体に気がついていても、目を背けたくなる。
「ーー絵っ、朋絵!! 聞いてる? 大丈夫?」
朔が心配そうに朋絵の顔を覗き込む。
「……ごめん、少しぼーっとしてて……」
「最近多いわね。まあ無理もないわ」
美澄と朔の二人は心配そうな表情を浮かべていた。
「朋絵、無理に授業受けなくてもいいのよ? 先生方も言ってたでしょ、水戸先生の一件で私達三人には休む権利があるって!」
「……怪我も大したことないし、大丈夫だよ。それを言うなら、美澄と朔もでしょ」
ーー長い昼休みが終わり、午後の授業の鐘が鳴る。
「まあ、無理はしないのよ」
「そうそう、朋絵はすぐに無理するから」
二人はそれぞれの席に戻っていった。
ーー正直、無理はしているつもりはない。
けれど、時折、聞こえてくる"あの声"。
なぜか無視が出来ない。
午後の授業の担当教員の顔が霞む。
朋絵は机へ突っ伏すように意識を手放した。
「……また、勝手に呼んだの?」
真っ暗な場所、あの日から夢の中で何度も出てくる同じ場所。そこに鎮座するのは、赤い炎の牢に包まれた二本のツノを生やした赤黒い髪の男ーー酒呑童子。
「ふっ、お前が俺様の言葉を聞き入れないからだろう?」
「……何度言われても、その牢を開ける気はないよ」
酒呑童子は鋭い眼光で睨みつけ、牢を内側から叩く。
「小賢しい小娘めッ! 貴様など、こんなものが無ければ……ッ!」
「残念だね。仮にその牢が無くても、私は負けない。もう二度と……」
「はっ、戯言を!! 俺様に堂々と喧嘩を売る姿勢、流石は清水の娘か……」
朋絵は酒呑童子の言葉に驚嘆をこぼす。
「……っ!? な、なんのこと?」
「くっ、はははははは! 知らんのか? お前の両親の話をーー今日もここまでか、まあいい。また呼ぶ」
牢の炎が次第に強くなり、朋絵の視界が真っ暗になったーー。
「ーー絵っ!……朋絵!」
目を覚ますと、白い天井が目に映る。
美澄と朔が必死に名前を呼びかけていた。
どうやらここは保健室、教員も心配そうな表情を浮かべている。
「……あれ、なんで……」
「朋絵、馬鹿! 無理しないでって言ったのに!」
「暫く休みなさい! 無理は禁物よ!」
朋絵の手を握り、声を荒げる二人。
「……ごめん」
ーーさっきの酒呑童子の言葉が脳裏から離れない。
「……ッ! 朋絵、なんで……アンターー」
「……?」
「ーーそんなに、泣いてるの?」
朋絵は自分でも気が付かないほど、涙を流していた。
それが何故なのか自分にも分からない。
封じられていた"記憶"の扉が少しずつ開かれる音がした気がした。
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