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第39話 破壊の炎命士

 ーー紅蓮階本拠地。炎神《ほむらがみ)神社の一室で長門弥彦(ながとやひこ)と矢巾(やはば)、長門桜(ながとさくら)の三人は正座で向かい合い、待機していた。


「長門よ、大地からの連絡。すぐに向かわなくてよいのか?」

 矢巾は弥彦のスマホに映し出されている大地とのメッセージのやり取りを凝視し、口を開いた。


「大地は保険で俺に連絡してるだけ、まだ大丈夫。大地が学園まで駆け付けてるってことは、聖火が"あの力"を使ってしまった可能性が高い。あの時を思い出すよ」

 スマホを着物の袖に直し、弥彦は湯呑みを啜った。

「お兄様、もし行かれるなら私もーー」

「ーー桜はここで待機で頼むよ。緊急時に桜の力はとても大切だからね」

 桜は浅い溜息を吐き、ぷくーっと頬を膨らませて弥彦を睨みつける。


「聖火最後の集会に参加させてくれなかったのに、お兄様のケチ!」

「それはすまなかった。……大丈夫、心配しなくても暫くすれば会えるよ」

 弥彦の深みのある言い方に疑問符を浮かべながら、桜は納得しきっていない表情で湯呑みを手に取った。




 聖火の周囲から黒い靄(もや)のような炎が漂い、赤い瞳孔が大地を捉える。

「……ッ!?」

 何の前触れもなく、大地の右耳に空気を焦がす何かが破裂した音が響きーー真っ白い閃光に視界が覆われた。直後、腹部に強い打撃が加わり、地面を足の形に陥没させながら耐え切る。


「……相変わらずのタフか」

 聖火の声音で紡がれる別人の誰かを無視して、大地の握った拳が地面を叩き割った。

 亀裂が走り、内部からは沸々と溶岩が噴き出し、聖火へ降りかかる。

「……!?」

 息を吐く暇も与えず、溶岩を紙一重で避けた聖火へ橙の光を纏った拳が迫った。


「ぐっ……!」

 思わず身震いするほどの痛みが全身を駆け巡り、橙の炎が消滅。大地は視線を飛ばしながら距離を取る。


「……このガキの肉体ではなく、俺を直接か」

「お喋りが好きだな」

 喉を鳴らし、笑う聖火を横目に大地は懐から筆を取り出した。


「炎命術……迦具土(かぐつち)!」

 真っ赤に燃え盛る炎が筆先から発光し、一気に書き上げ、顕現。地面の小石が小刻みに震え、空気が歪む。

 大地の右手に握られたのは、漆黒の一刀。


「……聖火、説教は後だ。今は……」

 軽く虚空を薙ぐ。地面に刀傷が残り、断面から沸々と湧き上がる溶岩が輝いた。


「……俺がお前を止めてやる」

「止められるもんなら、止めてみろよ!!」

 黒い靄を纏った右腕を薙ぐーー大地の周囲数メートルが再び真っ白く輝き、連続した破裂音を帯びながら爆発し続ける。

「……ああ、任せろ」

 既に空中に飛び上がっていた大地は被弾せず、積み上がった旧校舎の瓦礫を切り裂いた。


 ーー直後、断面からどろっとした溶岩が流れ落ち、赤い光を帯びた閃光が幾つも聖火へ走る。

「チッ、厄介な……!」

 聖火は、凄まじい膂力を感じさせる跳躍と足捌きで降り注ぐ閃光を避け、すかさず右腕を振るい、空気を揺るがす爆発で牽制の動きを取った。


 連続して震える衝撃に頬が波を打つ。大地は迦具土を携えた腕に力を込め、真剣な双眸で腰を落として、構えの姿勢を取る。


「迦具土・焔断(えんだん)!」

 指先から灯る炎を迦具土が吸い込み、橙の光を纏う。

 刀身を振い、黄色に輝く十字の斬撃を放った。


「……ッ!!」

 斬撃は凄まじい速度で直撃ーーあまりに咄嗟で受け止めきれず、両腕から鮮血が流れ落ちる。血が蒸発する音と共に聖火は頬を緩め、笑った。

「この程度の傷じゃ、俺は倒せない」

 傷口から黒い炎が吹き出し、傷そのものが塞がるように消える。



「……《破壊の炎命士》ってこんなもんかよ!!」

 黒い炎が右腕を包み込み、聖火はそれを力一杯に振るうーー直後、先程とは比べ物にならないほどの速度で黒い爆撃が大地を襲った。

 爆散した校舎の瓦礫が降り注ぎ、死角から現れ、爆撃を避け続ける大地を地面に叩きつける。


「くっ……! 舐められたもんだな」

 ーー橙の一閃。

 頭上から追い討ちのように降り注ぐ巨大な瓦礫が複数の斬撃によって、粉々に砕け散った。


「……これ以上、被害を広げるわけには行かねえな。少しばかり、本気を出す!」

 右手に携えていた迦具土を両手で構え、聖火の爆撃を喰らいながらもお構いなしに目を瞑る。

 爆撃で身が吹き飛ばされそうになっても耐え続け、大きく目を見開いた。


「炎命術……迦具土・万象崩界(ばんしょうほうかい)!」

 両手で地面に突き立てた迦具土が煌々と赤く光り、地面を揺るがす。大地の全身から真っ赤な炎が滾り、周囲全ての空間にある建物、地面、木々が熱気により、亀裂が入り、音を立てて壊れ始めた。


「……な、なんだこの熱気は!?」

「聖火、お前がずっと背負ってるもんから俺が……いつか解放してやる。だから、もう少し我慢してくれ」

 ーーそれは今の聖火に向けられた言葉ではない。


 肌を、空気をも焦がす熱気が周囲を包み込み、大地の着物が燃え、はだける。

「……この力は!? お前、あの時と比べて……!」

「聖火、少し眠れ」

 熱気で破壊され尽くした瓦礫が宙を舞い、聖火へ大地の合図で一斉に放たれる。威力、範囲、それら全てがあまりに強大で逃げる術すらない。


「な、なんだこの力はぁぁぁぁッッ!!」

 断末魔に近い絶叫が周囲に響くと同時に、ほぼ隕石にも近しい瓦礫の軍勢が着弾。轟音、衝撃波で学園を包み込む結界に亀裂が入り、聖火は意識を手放した。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

 肩で息をしながら、砂埃から視界が晴れるのを待つ。迦具土を手放し、大地は周囲を見回して、呆れたように口を開いた。


「あー……こりゃ、完全にやりすぎたな」

 幸い、本校舎より離れた位置とは言え、特別授業を行うための校舎が全壊、周囲の結界に亀裂、闘技場も半壊、大地が降り立っている地面が更地と化している。


「あの時と比べたら、まだマシな方か……」

 威力に加減が出来なかったことを少し後悔しつつ、大地は右掌に橙の炎を込めた。


「炎命術……封・天岩戸《あまのいわと)」

 指先に灯った炎が「封」の文字を具現化し、聖火の身体を包み込む。

 大地が安堵し、ため息を吐いた瞬間だった。



 ーーカチャリ。

 大地の後頭部に銃口が突きつけられる。

「その妖、渡してもらうぜよ。炎道大地」

 音もなく現れ、大地に銃口を突きつけたのは聖火の友人ーー御堂龍馬だった。

◾️迦具土(かぐつち)

大地の炎命術で顕現する漆黒の一刀。

迦具土が斬ったモノは大地の支配下となり、

自由自在に操り、熱を生み出すなども可能。


◾️焔断(えんだん)

大地の命の炎が迦具土に宿り、宙を薙ぐことで生み出される黄色の十字斬撃。


◾️万象崩界(ばんしょうほうかい)

迦具土を両手で地面に突き立て、白熾の状態に近い、自身の命の炎を身体中に巡らせることで発動する力。

周囲全ての熱量、温度を上げ、空間全ての物体、気体、液体を破壊する。

破壊した物は全て、大地の支配下となる。


もし、少しでも良いと思って頂けましたら、 画面下部の《☆☆☆☆☆》で評価、感想、レビュー等、お待ちしております。 お忙しい中、読みに来てくださってありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
大地さんかっこえぇ…!! そして龍馬ここで出てくるの?! 頭が追いつかないー!!
兄貴!!流石です!! 聖火くんを止めるために、日々の研鑽を怠らなかったのでしょう!! そして龍馬ぁ!もうちょっと余韻に浸らせてくれ!!( ゜Д゜) いつも思いますが、技の名前がかっこよすぎるです(〃…
1章の時は聖火と一緒に活躍していた龍馬が、なぜ銃口を大地さんに向けているんでしょうか。 龍馬はどこの立場の人なんでしょうか。誰の仲間なんでしょうか。何を考えているんでしょうか。 わからないことばかりで…
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