第23話 狐雨
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「本日、昼休憩終了後、午後14:00より闘技場にて、緊急特別集会を実施致します。生徒と教員は時間になりましたら、移動をお願いします。繰り返しますーー」
学園内に爆音で流れるアナウンスが耳を劈く。
今日は闘技場近くの噴水前で昼休憩をしていた聖火のスマホが振動し始めた。周囲に誰もいないことを確認し、視線を落とす。
スマホの液晶には"長門さん"と表示されていた。聖火は迷わず操作して、スマホを耳に当て、口を開く。
「もしもし、どうされました?」
「やあ、聖火。急な電話をすまないね」
電話越しの長門は申し訳なさそうに言った。
「いえ、大丈夫です!」
「それで本題だけど、最近不可解なことが多発していて、情報共有をと思ってね」
「不可解なことですか?」
驚く聖火の反応の間を見て、長門は続ける。
「ああ、任務に出動した炎命士が複数名……目を真っ赤に充血させて、自我や理性を失った状態で暴走するって事案が増えてるんだ」
「……目が真っ赤に充血?」
聖火の脳裏に良人の突然変異が過ぎる。
「そう、聖火が前に送ってくれた報告書にあった内容に酷似している。紅蓮階はまだ大丈夫だが、業火や焔では何人かが被害に遭っている。学園でも気をつけて欲しい」
「はい、分かりました!それと、前回報告書に記載した赤い狐面の男について……ヤツも関わっている気がします。これは僕のカンですが……」
長門は深く考え込んで、口を開いた。
「その件の懸念として、学園に水戸を送り込む。教員側にも紅蓮階が必要だと思ってね。水戸には、眼を光らせるよう、お願いしてある。協力して頑張って欲しいんだ」
「つぐ兄を……!? 分かりました、助かります! ありがとうございます!」
聖火は嬉々とした。聖火にとって、水戸貞継は身内の大地以外の義兄にあたるくらい仲の良い人物であった。
「そろそろ、特別講師の紹介を行う集会だと思って、連絡したんだ。よろしく頼むよ」
「はい、ありがとうございます。失礼します」
電話を切り、聖火は嬉しそうに空を見上げた。
午後の陽射しで闘技場に熱気が立ち込める。まだ春だというのに、今日の気温は32度を超えていた。
ジリジリと焼き尽くす太陽が観客席に集まっている生徒達を苦しめる。
「暑すぎやろ……!」
「確かに暑いね、ここ日陰もないし……」
制服の袖を捲っても尚、暑さは凌げない。
そんな中、闘技場のステージに銀色の長い髪をゆらゆらと揺らし、生徒と同様の制服の上から青海波の着物を羽織った男が現れた。
「え、あの人って……!」
「紅蓮階の《水鏡》!?」
周囲が騒めき始める。銀髪の男は渡されたマイクを握り、笑顔で口を開いた。
「自己紹介の前に、少し暑いから涼しくするよ」
水戸は指先を突き立て、晴天を仰ぐ。
「炎命術……狐雨」
水戸の指先から青白い一筋の光が晴天の空を貫く。
次の瞬間、どういうわけか晴れているのに冷たい雨が降り注ぎ、灼熱の気温が急激に下がった。
「えええっ……!?」
「天気まで変えちゃった!!」
「紅蓮階ってここまで化け物なのかよ!!」
突然降り注いだ雨によって、濡れはしたが、灼熱で汗だくだった生徒達には癒しのために等しい。既に拍手と声援が降り始めている。
「こんにちは。本日付で学園の特別講師を務めさせて頂きます、水戸貞継です。どうぞ、よろしくお願い致します」
頭を下げ、爽やかな笑顔に黄色い声援と、男性陣の興奮した声が闘技場中を包む。
水戸は観客席の中に聖火を見つけると、アイコンタクトをして軽く頷いた。
「やっぱ、紅蓮階ってオーラちゃうな!」
「ははは、そうだね」
興奮している煉夜に乾いた笑いで誤魔化す。
聖火は心底身バレしないようにしてきて良かったと心の中で思った。
「火山理事長から、皆に炎命術の応用を叩き込んで欲しいと言われてね。知っての通り、俺の炎命術は少し特殊なんだ」
指先で空中をなぞるようにして、水戸は続ける。
「命の炎を常に体内で急激に冷やし、炎の寿命を0にし、熱による力を水に変換。簡単に言えば、熱を極限まで圧縮、冷却すると物質の相を強引に変換出来るという仕組みなんだ。言葉で言ってもイマイチだよね……」
水戸は首を振りながら続ける。
「そこで分かりやすくする為に、今日は私と焔階の2人とで戦闘演習を行う。しっかり見ておくんだよ」
水戸の紹介で現れたのは、制服姿に身を包んだ朋絵と美澄だった。
「……よろしくお願いします」
「水戸さんが相手だからって、手は抜きませんわ!! 私達2人の連携なら、業火階をも凌ぐってことを分かってのご指名ですの!?」
美澄が水戸へ詰め寄る。
「分かってるよ。それでも俺は紅蓮階。大丈夫、手加減なんかしてる暇は与えないよ!!」
「言ってくれますわね!!」
美澄の負けず嫌いの闘志に火がついた。
「炎命術……淡雪」
綺麗な一線から紡がれる一筆、真っ白な雪が吹き荒れ、一丁の拳銃が顕現。朋絵は銃口を水戸へ向けた。
「炎命術……胡蝶蘭」
白暁で描かれた一筆は膨大な光を帯びる。美澄の腰へ鞘にしまわれた三刀を顕現、その内の一刀を抜き去り、構える。
朋絵が美澄の背後を護る形で陣形を取った。
◾️胡蝶蘭
三刀で一刀の武器と成す美澄の炎命術で顕現する武器。
詳細な能力等は次回分かるかも!?
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