第22話 水鏡檻
この度は物語を読みに来てくださり、誠にありがとうございます。今回は設定を後書きに記載しておりますので、楽しんで頂けると幸いです。
「《水鏡》水戸貞継、現場に到着しました」
炎命士協会の黒スーツの男達が、《水鏡》と名乗った男に駆け寄った。男は銀色の綺麗な長い髪を一つに束ね、青色の着物を羽織っている。
「水戸さんお疲れ様です。先日まで関西だったというのに緊急招集すみません!!」
「いいよ、別に。仕事だからね、当然だよ。それで状況は?」
水戸は微笑み、歩きながら話を続ける。
「それが……通信でも報告させて頂いた通り、妖討伐任務に出ていた炎命士3名が自我を失って暴走しております。業火階1名、焔階が2名……応援要請なしでは対処不能な規模です!」
「了解。原因はどうであれ、抑え込んでみよう。協会所属の炎命士なら、捕縛が必須だろうからね」
水戸は険しい表情で黒スーツの男達が維持している結界内へ足を踏み込んだ。
「……あああぁぁぁぁ!!」
「なんで昇格出来ないんだぁぁぁ!!」
水戸の気配を察知したのか、のらりくらりと歩く2人の炎命士。目が真っ赤に充血しており、理性や自我が垂れ流しになっている。
「妖ぃぃいい! みっけ!!」
焔階級の1人が地面を蹴って加速、水戸へ間合いを詰めて、一気に斬りかかってくる。背後のもう1人も、水戸へ銃口を向けている。
「手荒な真似はしたくないんだけどね」
素早い身のこなしで剣を避け、腹部に鋭い蹴りを放つ。すかさず、銃撃も厭わず回避。銃使いが焦ってリロードしようとした瞬間、顔面を蹴り飛ばした。
「炎命術……水鏡檻」
水戸が指先を軽く立てると、空間に澱んだ水面が浮かび上がる。盾のような見た目だが、攻撃を弾くような盾ではない。
「ごぶっ……!」
「ぐふぉっ……!」
蹴り飛ばされた2人が向かう先に展開された水面へ着水。水に飛び込んだような音がして、2人は意識を失うと同時に捕縛された。
「さてと……後は?」
視線の先には瓦礫に腰を掛け、巨大な槍を持つ男が1人。報告にあった業火階級の人物と相違ない。
「紅蓮階級の水戸貞継か……。すまない、面倒をかける。どうも、身体が言うことを聞かない」
水戸は瞳を大きく開き、驚愕した。
「大丈夫、すぐに楽にしてあげるよ。心配しなくても良い」
「……すまな――うおおおおおおおおッッ!」
男は言いかけたと同時に意識を失い、水戸へ槍の矛先を向けた。
「水戸さん、お疲れ様です」
水鏡檻で静止した3人が、黒スーツの男達に回収されていく。水戸はその様子を横目に、ふうと息を吐いた。
「お疲れ様。今日の任務の詳細が聞きたい。この後、少し話を聞いても良いかい?」
「はい、大丈夫です」
「ありがとう。暫くは俺も前線に出られそうにないからね。助かるよ」
水戸は安堵したように少し笑って、真剣な表情と眼差しで青い空を睨みつけた。
ーー翌朝、学園の聖火の教室ではHRが速やかに終わり、次の授業の間の時間が訪れる。
聖火は、授業の支度を行なっていると、後ろの席から煉夜が声を掛けてきた。
昨日はあの後、軽い授業があるくらいで特に何もなかったので寮に帰宅し、早急に就寝した。
「おはよう、昨日はよく眠れたん?」
「おはよ、眠れたよ。煉夜は?」
「俺は同部屋の奴が煩くて……寝られへん!」
"とほほ"と溜息を吐く、煉夜の言葉に聖火が首を傾げる。
「同部屋? 煉夜、同じ部屋の人がいるの?」
聖火の部屋には二段ベッドさえあるが、誰も居ない。
荷物も置かれていないので、実質個室も同然だ。
「え? 聖火の部屋には同居人居らんの? ええなぁ……」
「あぁ、うん! でもまだ数日だし……後から来る可能性もあるなぁ」
会話の途中で同部屋の生徒が居ない理由に気がつく。
火山に"潜入護衛任務"であることを改めて叱られる未来が頭を過り、首を振って消した。
「あ、そうや。聖火に聞きたいことがあったんやった!」
煉夜は畏まった様子で、周囲の視線を気にしながら、聖火へ問いかける。
「なぁ、聖火。妖ってどう思う?」
突拍子もない質問に首を傾げながら、答える。
「妖は人間に害を為す……淘汰すべき対象だよ」
「質問が悪かったわ。共存出来ると思わへん?」
聖火は質問の意味が分からなかったが、煉夜の真剣な表情に圧倒され、口を開く。
「共存? それは妖が人に害をなさない場合ってこと?」
「せや! もし、おったら共存出来るか?」
煉夜は食い気味で問い詰める。
「もし、そんなことが出来るなら、共存したいよ」
「そうか……変な質問してすまんな。ありがとう! 改めて、聖火、ほんまにええ奴やな!」
聖火の言葉にまるで救われたかのように、煉夜の表情が見るからに明るくなった。
「なんでこんな質問を?」
「話せば長くなるからな。また今度、まとめて話するわ」
ーー直後、授業が始まる鐘の音が響き、担当教員が分厚い冊子を持って教室へ入ってくる。
授業が始まり、聖火達は教員へ視線を向けた。
◾️水鏡檻
水戸貞継の炎命術。
熱を極限まで圧縮・冷却して、物質の相を強引に変換させることで、炎から水へと具現化させる。
盾型の設置式。捕縛、反射、攻撃の三系統に使用できる優れもの。




