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第20話 解決、そして再会

拙作を読みにきてくださり、誠にありがとうございます!

 事件後の早朝、炎道火山と大地は孔雀家を訪れていた。鳥類である孔雀が羽を広げ、威嚇している姿を模った壁絵が印象的な古風なお屋敷は、白秋と比べて少し小さく見える。


「今回のことは白秋家が全て吐いた。お前達も当然ながら、共犯じゃ。白秋も孔雀も火牢院(かろういん)送りは免れんじゃろうな」

 火山は出されたお茶をずずずと飲み干し、孔雀家の現当主を強く睨みつける。

「あのっ……いえ、私共は白秋に脅されて仕方なく!!」

「そうか、ならば許してやろう……」

 当主は嬉しそうに曇っていた表情が明るくなった。

「……ならば、貴様の愚息の件はどうする? 学園が開園し、数々の問題行動。それに暴走と、どう落とし前つけるつもりじゃ?」

「いえ、それはその……私達も何も知らなくて……」

 当主の言葉を聞いた瞬間、大地は頭を掻き、その場を後にする。


「アレに巻き込まれるのだけは勘弁だ……」

 屋敷の外に出て、禁煙パイポを咥える。

 ーー直後、凄まじい爆発音と、屋敷の中心から炎柱が天に向かって突き抜けた。

「親父に対しての無責任な発言はタブーだからな……」


 大地はポケットからスマホを取り出して、指先で操作し、耳に当てる。

「もしもし、今、孔雀家に炎柱が立った所だ。明日、朔って子とお前で時間作れないか?」

「だい兄、何から何までありがとう。大丈夫だと思うよ、学園の事だからやま爺から話通して貰うのが一番だけど……」

 大地の"わかった"という声と共に電話が切られた。



 ーー次の日。

 朔と聖火は火山の理事長室に、事情聴取という名目で呼び出された。

「……事情聴取って、前の話だよね? 大丈夫かな……」

 朔は明らかに緊張し、不安を隠しきれない様子だった。

「大丈夫だよ、少し話があるって言われてるだけだし、本当のことを話せば良いだけだよ」

 聖火の言葉に安堵したのか、コクリと頷く。


「それじゃ、行こうか」

「うん!」

 分厚い木製の扉を手の甲で軽く叩く、中から火山の野太い声で"入ってきて良いぞ"と聞こえ、二人は理事長室へと歩みを進めた。



「よく来たな、大和聖火と、白秋朔よ。一人ずつ話が聞きたい、朔君は奥の部屋で待っていてくれるかな」

 朔はコクリと頷き、火山が指を刺した方へ向かう。

 火山と聖火は顔を見合わせ、嬉しそうな表情で笑った。




「失礼しまーー……ッ!?」

 扉を開けた瞬間、朔の動きが止まった。

 握り締めた拳を軸に、小刻みに肩が揺れ、瞳に涙が浮かぶ。


「……朔、元気だった?」

 部屋の中には居たのは、小夜だった。

 彼女もまた朔と同じように瞳に涙を浮かべ、必死に堪えている。

「……ッ……!! お、お姉様ッ……!!」

 朔は小夜へ駆け寄り、勢いよく抱きついた。

 涙腺が決壊し、二人の頬に涙が伝う。


「……ごめんなさい、私!! お姉様が殺されてしまうと思って……連絡も!!」

「いいの、私も朔が殺されるって脅されて、私一人じゃ何も出来なかった。助けるのが遅くなって、ごめんね」

 お互いが必死に首を振り合う。

「そんな……! お姉様が謝ることじゃ……! でもまだ、あいつらは私を……」

 小夜は俯き、弱々しい声音で呟く。


「ううん、もう大丈夫よ。私達を縛りつけるしがらみは、もう何もない!! 」

「……え? ど、どういうこと?」

 あまりに突然のことに驚嘆が飛び出た。

「……私達は、もう自由なんだよ。黒とか白とか、そんなくだらないことで縛られるような生活は終わり!」

「えっ……」

 朔の口から消え入りそうな拍子抜けした声が届く。

「やっと……私、自由に……?」

 ーー光が色濃くなっていく。


「そうよ! 私も、もう離さない!」

「……あぁ、嘘。こんな日が来るなんて……!」

 両掌に視界を落とし、止まらない涙を拭うことを諦める。ポロポロと大きい粒で落ちる雫の性質に身を任せ、朔は咽び泣き、制服のスカートを濡らした。


「うぅ……ぁぁぁぁっ……ほんっ……ほんっとに、よかった……! やっと……」

 ーー朔の視界は完全に晴れ切った。

 光を遮る闇も、影も、もう存在していない。

 ひとしきり涙を流し終えると、目を真っ赤にした朔が口を開いた。



「お姉様……今回の件はどうお納めになられたのですか?」

「それについては、長くなるからまた話すよ。私の頼れる仲間達が助けてくれたわ、感謝しないとね」

 朔はコクリと頷き、晴れ切った表情で満面の笑みを溢した。




 朔が部屋を出た後、小夜は聖火へ深々と頭を下げた。

「本当にありがとう、まさかここまで早く対応してくれるとは思わなかったわ」

「小夜さん、頭上げてください! 今回の件は小夜さんと朔さんが自らの手で掴み取った幸せだと思っています。俺はその背中を少しだけ支えただけ」

 聖火は謙遜し、首を振って続ける。

「それに……こちらとしても少し気になることが出来ました。学園護衛任務の重要課題になりそうです」


 ーー例の良人の件、仮面の男の件、今回の白秋と孔雀の件といい、裏で誰かが糸を引いているのは間違いない。

「ここから白秋家の建て直しで少し忙しくなりそうだけど、私も探れそうな時に調べてみるね」

「ありがとうございます! 助かります!」

 聖火は頭を下げる。

「いいのいいの、私達姉妹は間違いなく聖火、貴方に助けられたの。貴方が謙遜しても、私達はこの恩を忘れない。任務上、朔にこのことは言えないけどね」

 小夜はもう一度向き直って、改まった口調で続けた。


「改めて、本当にありがとう。ここから前を向けるよう、2人で手を取り合って生きていこうと思うわ」

「はい! 俺もなにか手伝えることがあれば、なんでもします!!」

 小夜は微笑みを残し、理事長室を後にした。扉が閉まる音を聞きながら、聖火は深くため息を吐いた。

 ようやく二人が救われた安堵感と、どこか心に引っかかる違和感が混ざり合い、スッキリしない。


 部屋を出ると、既に火山は居なかった。

「離席中」と書かれた札がその場に残り、窓から眩しい陽光がさしている。暖かいはずなのに、何故か指先が冷たく震えていた。


 ーーまるで、これから何かが始まることを予感するかのように。

 聖火は強く拳を握って、その冷たさを振り払い、歩き出した。



 学園の屋上で赤い狐面の男は、仮面の奥で黒い笑みを浮かべた。

「時は満ちた……」

 誰にも聞こえないような声音を吐き、男はその場から空気と同化するかの如く、消えた。






◾️火牢院(かろういん)

犯罪を犯した炎命士の監獄。

地中深くに埋まっており、炎命術が使用出来ない特殊な環境下。

犯罪のレベルや強さ、階級等で分けられている。


もし、少しでも良いと思って頂けましたら、 画面下部の《☆☆☆☆☆》で評価、感想、レビュー等、お待ちしております。 お忙しい中、読みに来てくださってありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
聖火が朔を助けようとしながらも、力ずくで連れ出すんじゃなくて、本人が自分で立ち上がるまで向き合っていたのが印象に残りました。 ずっと「自分が我慢すればいい」と思っていた朔が、最後には自分の意思で良人に…
第20話まで拝読しました。 「命を燃やして戦う」という炎命士の設定が、単なる格好いい能力ではなく、常に命の重さや覚悟を伴っているところが印象的でした。炎命術や血盟術、名家ごとの能力、武器の性質なども…
これにて一件落着。とまでは言い切れなさそうですが、ひとまず目の前の事件は解決したといったところですね。 朔ちゃんが覚醒して新たな道を歩けるようになって良かったです!仲良し姉妹尊い……!
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