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追放先は辺境の廃塔でした   作者: 星海凡夫


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第86章 ― 触れる光


雨の匂いで目を覚ました。空から降る雨ではない――空は晴れ、陽は窓から差し込んでいた――塔の内部から立ちのぼる雨の匂いだった。四階の庭で何かが変わったのだ。


服を着て階段を上った。花咲く低木の前に立ち尽くすヴァエリスを見つけた。青い目は見開かれ、両手は宙に浮かせたままで、目の前の何であれ、それに触れるのを怖がっているかのようだった。


「どうした?」と私は訊いた。


「咲いたの」と彼女は簡素に言った。


「前に咲いてたじゃないか。収束のときに」


「こんなふうじゃない」彼女は低木の中心を指さした。そこには、他から際立った一輪の花があった。もっと大きく、もっと輝き、花びらは青ではなく――金色だった。銀の樹の光とまったく同じ。第一の守護者の目とまったく同じ。「この花は……違う。ここから何かを感じる」


「何を?」


「誰かが呼んでいるみたい」彼女は指先で花びらに触れ、花は応えるように脈打った。「声じゃないの。もっと……招待状に近い」


「何への招待状だ?」


「理解への」彼女は私に向き直った。その目はかつてなく深かった。「シン、私は一晩中考えてた。私たちがした口づけについて。アルテアやリサンドラやレナがあなたとしたことについて。私が望むことについて」


「で、君は何を望む?」


「もう一度試したい。素早い口づけじゃなくて。もっと何か」彼女は自分の核に触れた。「でも、あなたを傷つけるのが怖い」


「どんなふうに傷つける?」


「私の体はマナでできてる。強い感情を感じると、マナは強まる。もし制御を失ったら……」


「君は制御を失わない」


「どうしてわかる?」


「何世紀も封じ込めの部屋でほどけずにいたから。ヴォラスに立ち向かって無事だったから。もう私に口づけして、私はまだここにいるから」私は彼女の両手を握った。「君を信じてる」


彼女は目を伏せ、一瞬息、彼女は数週間前に封じ込めの部屋から出てきたあの脆い存在に見えた。だが再び目を上げたとき、そこには決意があった。


「なら今夜」それは質問ではなかった。


「今夜」と私は確認した。


「夕食のあと。ここ、庭で」彼女は周りを見渡した。銀の樹、輝く花々、新しい金色の花。「この場所は安全。樹が私のマナの制御を助けてくれる」


「わかった」


彼女は微笑んだ。脆さと決意を同時に帯びた微笑みだった。それから浮かんで去っていった。おそらく準備のためだろう。逢瀬の準備をするヴァエリス。世界は本当に変わってしまった。


午前を市場で過ごした。ミリは輝いていた――文字通り。自由都市との取引をまとめたとき以来見ていなかった輝きが、栗色の目にあった。


「何かあったのか?」と私は彼女の机に座りながら訊いた。


「あったの」彼女は羊皮紙を一枚、私のほうへ押しやった。「ヴァルゲルの商人ギルドが常設支部を承認した。街に正式な代表部を持つことになる」


「そりゃすごい」


「すごいだけじゃない。歴史的よ」彼女は机越しに身を乗り出し、目を輝かせた。「初めて、ダンジョン=塔が合法的な商業主体として認められた。脅威でも、略奪される廃墟でもなく。パートナーとして」


「それは君のアイデアか?」


「私のアイデアだけど、実行は皆の力よ。ゴーンが星合金の見本を提供した。アルテアが温室のハーブを一山譲ってくれた。ライラは契約書を三つの方言に翻訳した。マリスだって手伝った――海辺の商人が、『水の淑女』がいなければ契約しないって言ったときに交渉してくれたの」


「マリスが今、交渉を?」


「彼女は才能があるわ。水は常に裂け目を見つけるって言うの」ミリは微笑んだ。「契約書もそうだと思う」


私は羊皮紙を見た。封蝋、署名、私にはほとんど理解できない条項があった。だが塔の紋章がそこにあった。右上の隅に。私たちの紋章。私たちの塔。


「君は幸せか?」と私は訊いた。


「達成感がある」彼女は私の目を見た。「違いがあるの。幸せは過ぎ去るもの。達成感は……永遠」


「で、俺は? そのどこに入る?」


「あなたは理由」彼女は机を回り込んで私の両手を握った。「私はどこでだって成功する商人になれた。でもあなたと何かを築くのは……違う。個人的なの」


「どんなふうに個人的?」


「執務室での口づけみたいに個人的」彼女は身を乗り出して私に口づけた。最初より長く、二度目より強く。身を離したとき、目は輝いていた。


「それは乾杯か?」と私は訊いた。


「投資よ」彼女は微笑んだ。「長期の」


書庫で、いつものようにライラを見つけた。しかし今日は一人ではなかった。マリスが一緒だった。二人は古いルーン文字で輝く羊皮紙の上に覆い被さるように身をかがめていた。


「これは予想外の同盟だな」と私は近づきながら言った。


「マリスが水没した文書館で何かを見つけたの」ライラは羊皮紙から目を離さずに説明した。「八つ目の塔への言及」


「八つ目?」背筋に冷たいものが走った。「七つじゃなかったのか?」


「私たちが知っていたのは七つ。でもこの羊皮紙は、古の神々が建てたのではない塔に言及している。あとで建てられたもの。人によって」


「人が塔を建てたのか?」


「建てようとした」マリスが目を上げた。白い虹彩は計り知れなかった。「悲しい物語だ。彼らは神々がしたことを再現しようとした。しかし完全な知識を持っていなかった。塔は未完に終わった。無人。失われた」


「それはどこにある?」


「わからない。羊皮紙は傷んでいる」ライラはため息をついた。「でも名前がある。『黄昏の塔』。それと手がかりが一つ。『陽が二度沈む場所』」


「それは謎かけか?」


「苛立つ謎かけだわ」ライラは床を足でトンと打った。彼女には見たことのない苛立ちの仕草だった。「陽が二度沈む? それはどういう意味?」


「多分、陽が何かに反射して、もう一度沈むように見える場所」マリスが提案した。「湖。鏡。氷の山」


「調べるのか?」


「調べるわ」ライラは私を見た。青い目は決然としていた。「でも今日じゃない。今日は鍵の目録を仕上げているの。一つひとつに物語があるのよ、シン。保存に値する物語が」


「君は本を書いているのか?」


「塔の歴史を書いているの」彼女はほんのり赤くなった。「私たちの歴史」


「読むのが待ちきれない」


「あなたには最初の一冊をあげる」彼女は微笑んだ。「サイン入りで」


その夜、夕食のあと、四階の庭へ上った。ヴァエリスはもうそこにいて、銀の樹の下に座っていた。周りの花々は彼女の核と同調して輝き、新しい金色の花は小さな心臓のように脈打っていた。


「来たのね」と彼女は言った。


「来ると言った」


「知ってる」彼女は立ち上がり、私のところへ来た。足はほとんど床に触れず、全身が淡い青い光で輝いていた。「まだ怖い」


「私を傷つけること?」


「十分じゃないこと」彼女は私の顔に触れた。指は冷たかったが、震えなかった。「あなたにはもうたくさんいる。レナ、アルテア、リサンドラ、ミリ。皆、私にはあげられないものをあなたにあげられる」


「君があげられないと思うものは何だ?」


「体。温もり」彼女はためらった。「人のやり方での愛」


「ヴァエリス」私は彼女の両手を握った。「君は私に、他の誰もあげられないものをくれた。障壁に何が起きているか理解する鍵をくれた。私の隣でヴォラスに立ち向かった。孤独な守護者を解放した。君は私の知るなかで一番勇敢な人だ」


「それは愛じゃない。敬意だわ」


「両方だ」私は彼女の額に口づけた。「愛は触れることだけじゃない。選択だ。そして私は君を選ぶ」


彼女は目を閉じた。光の涙が顔を伝った――水ではなく、流れ星のように空気にほどけるマナの小さな球だった。


「試していい?」と彼女は訊いた。


「何を?」


「あなたに触れるの。本当に。手でじゃなく。核で」


「それは安全か?」


「わからない」彼女は目を開けた。「でも樹が、いいと」


「樹が君に話したのか?」


「樹はいつも話してる。ただ、皆が聞こえるわけじゃないだけ」


彼女は手を上げ、それを心臓が打つ私の胸の上に置いた。鎖骨のすぐ下にある彼女の核が、より速く脈打ち始めた。青い光が強まり、一瞬息、奇妙な熱を感じた――人の体の熱ではなく、もっと深い何か。まるで私自身のマナが彼女のマナに応えているかのようだった。


「痛む?」と彼女は訊いた。


「いいや」本当だった。「……違う感じだ。まるで誰かが内側で歌っているみたいだ」


「私の核よ。あなたのマナと交信しようとしてる」彼女は微笑んだ。震える微笑みだった。「うまくいってる」


「それは何を言ってるんだ?」


「私を欲しいと。私を受け入れると。傷つけないと」さらに光の涙。「あなたとまったく同じ」


私たちはそこにいた。彼女の手が私の胸の上にあり、核の光が私の心臓と同調して脈打っていた。口づけではなかった。抱擁ではなかった。それは名付けようのない何か――物質を超越した親密さだった。


「これで十分?」と彼女はしばらくしてから訊いた。


「十分すぎる」


「でも、私まだもっと欲しい」彼女は顔を上げた。「他の子たちみたいに口づけるのを学びたい。他の子たちみたいに抱きしめるのを学びたい。私は……」


「時間はある」私は彼女の唇に口づけた。やさしい触れ方で。「世界中のすべての時間」


彼女は目を閉じて、口づけを受け入れた。唇はまだ冷たかったが、今はそこに別の何かがあった――内側から、核から、私のマナに応えて脈打つマナから来る熱。


「今のは口づけ?」と私たちが離れたとき、彼女は訊いた。


「ヴァエリスの口づけだ。今までで一番いい」


「レナのより?」


「違う。比べない」


「よかった」彼女は微笑みかけた。「上達するつもりだから」


「疑わない」


彼女は頭を私の肩に預け、私たちはそこにいた。銀の樹の下で。花々が脈打ち、塔が息をするあいだ。いつしか、新しい金色の花がさらに強く輝き、ヴァエリスはつぶやいた。


「彼女は幸せ」


「花がか?」


「塔が。神が。皆が」彼女は目を閉じた。「そして私も」


その夜、私は庭で眠った。腕の中にヴァエリスを抱いて。他の夜のようではなかった――情熱も、切迫もなかった。平和があった。何世紀も闇の中で過ごした者だけが理解できる平和。


朝が訪れたとき、金色の花はまだ輝いていた。そしてヴァエリスはまだ私の傍らにいた。

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