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辺境の廃塔で水とリンゴだけの生活→気づけば獣人美女が集まり、小さな町に!? 〜異世界スローライフ&街づくり〜  作者: 星海凡夫


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第3章 ~死の塔~

『訪問者レナに一時的な滞在許可を与えますか?』


その文字が、俺たちのあいだの宙で輝いていた。


外では、何かが塔の門を引っ掻いている。


ゆっくりと。

重く。

まるで石を試しているみたいに。


レナは短剣を胸に押しつけていた。手は震えているのに、目は青いメッセージから離さない。


「受けちゃダメ」


「お前、さっき奴らは立ち去らないって言ったぞ」

「受けちゃダメって言ったの」

「素晴らしいな。問題が二つと、俺の広間の床で命令してくる負傷少女が一人か」


彼女は歯を剥いた。

微笑みじゃない。


「あなた、生きた塔が何か知らない」

「訂正。俺はこの世界のことはだいたい全部知らない。だが、お前が俺の広間で血を流してることと、外に三匹いることと、塔がお前を侵入者じゃなく訪問者扱いしていいか聞いてることはわかってる」


レナは黙った。

その沈黙は同意じゃない。恐怖だ。

塔への恐怖。

それは、俺への恐怖よりずっと厄介だった。


記録を見る。


「その許可は恒久的な契約になるのか?」


青い光が瞬く。


いいえ

一時許可は居住者登録と同等ではありません


「期間は?」


次の夜明けまで


「彼女はいつでも出ていけるのか?」


退出は、管理者による門の開放、または安全な外部通路を経由して許可されます


「隠れた請求とか?」


表示板が、止まった。

長すぎる。


「おい」


即時の物質的請求はありません


「『即時の物質的』って最悪の文言だな」


レナが短く乾いた笑いを漏らした。


「あなたでも気づいた」

「魔法の書類を嫌うコツを学びつつある」


深く息を吸う。

もし拒否すれば、塔はレナを脅威として扱いつづけるかもしれない。受け入れれば、この少女を妙な縛りに巻き込むかもしれない。どちらもクリーンな選択肢じゃない。


でも、現実がクリーンな選択肢をくれることなどめったにない。

それは、あの前世が最もバカみたいなやり方で俺に教えたことだ。


「夜明けまでの一時許可」俺は言った。「居住者登録なし。恒久契約なし。隠れた請求なし」


記録が輝いた。


条件を認識しました

訪問者レナに一時許可を付与

許可区域:広間/泉/監督下の簡易寝室

最小限の保護を適用


細い光が床を走り、レナに届く。

彼女は硬直した。

一瞬、逃げようとするかと思ったが、身体がもう限界だった。光は彼女の脚の下を通り、冷たい蒸気のように立ち昇り、消えた。


レナは深く息を吸い込んだ。

肩の力が抜ける。

顔の熱が少し引いたように見えた。


「……私に何をしたの?」

「こっちが聞きたいくらいだ」


記録は無感情に答えた。


一時訪問者を安定化

負傷は依然治療が必要です

推奨:水/安静/傷の圧迫/現在の在庫に存在しない薬草


「俺が貧乏だって念押ししてくれてどうも」


外で、また音がした。

今度は引っ掻く音じゃない。

衝撃だった。

門全体が振動した。


レナが目を見開いた。


「防壁を試してる……」


「奴らは何なんだ?」

「追跡者」

「それは職業名か魔物の名前か」

「両方。誰が差し向けたかによる」


その答えは気に入らなかった。


記録がまた現れた。


三体の外部存在を検出

リスク:中程度

正門:無傷

西側の隙間:脆弱

推奨:応急補修


「もちろんだ。新しい生の初日だってのに、もう緊急管理人が俺か」


メンテナンス用の杖を手に取る。

レナが立ち上がろうとした。


「私が行く」

「短剣もろくに持てないだろ」

「あいつらは私を追ってる」

「だからって脚の血が止まるわけじゃない」


彼女は歯軋りした。俺が正しいことに苛立って。


「もし入ってきたら、あなた死ぬ」

「だとしたら、その前に隙間を直したほうがいい」

「戦えるの?」


杖を持ち上げた。

先端はまだ細いシャベルみたいだ。


「つつける道具ならある」

「それってノーってこと?」

「尊厳つきのノーだ」


レナは、呪われた塔がこれまで雇った最低の管理者だと言わんばかりの顔で俺を見た。

たぶん妥当だ。


記録が宙に投影した青い地図をたどる。それには第一階層が簡素な図で示されていた。広間、泉、貯蔵庫、中庭、門、内壁。西側の一部が点滅している。

地図ではそこまでの道は短く見えた。

現実では、とてつもなく長く感じた。


中庭は暗く、塔の高いところで開けた空の弱い光だけが差していた。リンゴの樹が中央で揺れている。この状況にはあまりに平然とした赤い実をたわわに着けて。周囲の壁は、空に向かう巨大な井戸のようにそびえている。


門の向こうから、息づかいが聞こえた。

重く。

湿って。

それから低い唸り声。


身体が引き返したがった。

詩的な意味じゃなく。

本当に引き返したがった。

首筋が冷え、杖を握る手に汗が滲み、両脚は俺の意見を聞かずに裏切る準備を整えた。


前世では、俺は自分の臆病さを憎んでいた。

ここでは、少なくとも役に立つ。まだ生きていると警告してくれる。


西の隙間に着いた。

古い石のあいだの低い開口部。小さい。大きな犬なら通れる。もっと厄介なものも、十分しつこければ。


向こう側に、黄色い目が現れた。


俺は止まった。

目が俺を見つめる。

俺も見つめ返した。

どちらも感心した様子はなかった。


それから鉤爪が一本、隙間から入り、石を引っ掻いた。


「ああ、クソ」


クリーチャーが力を込める。

石が軋んだ。


記録が現れた。


西側の隙間に圧力

応急補修可能

近くの材料:遊離した石/乾燥薪/湿った土

管理用ツールが必要


「短い指示をくれ」


充填。固定。承認。


「指示じゃなくて、爺さんの合言葉だな」


文句を言いながらも、始めた。

急いで石を集める。杖が形を変え、木と金属の短いハンマーになった。美しくない。伝説の武器みたいに輝かない。工事現場の道具だ。

初めて、心からこいつを気に入った。


石を石に押しつける。薪を支えに使う。外の鉤爪が俺の手を捕えようと伸び、あやうく届きかけた。間一髪で指を引っ込める。


「三話目まではボディタッチ禁止で頼む」


クリーチャーが唸った。

俺はハンマーを打ちつけた。

木は歪んで嵌まった。


嵌合品質:低


「お前も嫌いだ」


もう一度打つ。

隙間が狭まる。

黄色い目が消えた。

一瞬、うまくいったと思った。


それから、何かが壁を打った。

強く。


衝撃が石を貫き、腕を伝ってきた。杖を握ったまま、尻餅をつく。開口部が軋む。壁から埃が落ちた。


外で、三匹が一斉に唸りはじめた。


レナが広間から叫んだ。

「シン!」


その声で名を呼ばれて、引き戻された。

俺は勇敢じゃない。

まったく。

でも広間に負傷した少女がいて、道具を握った使えるバカは俺だけだった。


杖を石に押しつける。


「ふさがってる」


何も起きない。


「この塔はふさがってる」


杖の刻印が輝いた。

床が応えた。

青い線が石を走り、木材を抜けて、血管が点るように壁を駆け上がった。歪んだ部材同士が互いに引っ張り合う。薪が軋み、撓み、固定される。湿った土が隙間のあいだで固まる。


穴は閉じた。

醜く。

歪に。

だが、閉じた。


応急補修が完了しました

品質:低

効率:十分

寸評:初心者の管理者としては許容範囲


燃えるオフィスの中をマラソンしたみたいな息で、床に座っていた。


「お前から『許容範囲』って、賛辞か?」


記録は消えた。

臆病者め。

塔ですら、頃合いを見て会話から抜ける術を知っている。


外で、クリーチャーがもう一度打った。

それからもう一度。

壁は持ちこたえた。


唸り声はしばらくつづいた。塔を回り、石を引っ掻き、門を試し、隙間を嗅いだ。

だが入ってこなかった。

少しずつ、音は遠ざかっていった。


俺が広間に戻ると、レナは短剣を手に座り、顎を硬く結んでいた。今にも立ち上がると同時に気絶しそうな顔だ。


「戻った」と彼女。

「俺も驚いてる」

「隙間は?」

「閉じた。下手だけど閉じた。塔は俺の仕事を許容範囲と呼んだ」


レナはまばたきした。


「塔があなたの補修を評価したの?」

「ああ。俺の二周目の人生にはパフォーマンス管理がある」


彼女は数秒、俺を見た。

それから鼻から息を抜いた。

笑いに近かった。

近かった。


俺は彼女のそばにしゃがみ、脚の傷を見た。綺麗じゃなかったが、致命傷にも見えなかった。少なくとも、そう信じたかった。寝室で清潔な布を取り、泉の水で濡らし、洗おうとした。


レナは俺が触れる前に手首を掴んだ。


「傷の手当て、できるの?」

「できない」

「じゃあなんでやろうとしてるの?」

「汚れたままにして、脚が落ちるのを待つよりはマシだから」


彼女は少し間を置いた。

それから手首を離した。


「端から外側に向かって拭いて。汚れを傷に押し込まないで」

「ほら、チームワークだ」

「下手くそ」

「せいぜい二日目だ。厳密にはまだ初日」


彼女の言うとおりに拭いた。レナは歯を食いしばったが叫ばなかった。それから脚に布を巻き、血が止まる程度には押さえ、潰さないようにした。


記録が現れた。


初歩的な処置が完了しました

品質:低

効率:一時的


「お前に屈辱なしの設定はないのか?」


いいえ


俺は止まった。

レナも。


表示板は答えたのだ。

わざと。


俺は彼女を見た。

彼女は俺を見た。


「塔が今、冗談を?」

レナはまた青ざめた。

「生きた塔は冗談を言わない」

「こいつはパッシブ・アグレッシブな評価をしてくる。進化してるのかも」

「それ、良いことみたいに言わないで」


沈黙がより重く戻ってきた。


向かいの壁にもたれて座り、杖を近くに置く。レナはもう一つリンゴを取ったが食べなかった。果物を犯罪の証拠物みたいにじっと見ている。


「死の塔って言ったな」と俺。「それと神の塔。正しい名前はどっちだ?」


レナはリンゴの赤い皮の上で親指を滑らせた。


「古い人たちは神の塔と呼んだ。閉じてから、死の塔になった」

「閉じたのはいつだ?」

「私が生まれる前」

「なんでみんな怖がってるんだ?」


彼女は、火が燃える理由を訊かれたみたいに俺を見た。


「ダンジョンは人を食うから」

「ここは俺にリンゴをくれた」

「前菜から始めてるのかも」


彼女の手の中のリンゴを見る。


「最悪の言葉選びだ」


彼女は果物を下ろした。


「普通のダンジョンは地下に生まれる。廃墟とか、マナが腐った場所に。魔物を引き寄せ、部屋を作り、道を変え、人を欺く。冒険者は素材と財宝とコアを求めに入る。出られる者もいる。多くはダメ」

「この塔は?」

「普通じゃない」


もちろんだ。

なぜ普通なわけがある?


「塔は伸びていく」レナはつづけた。「階層が多すぎる。同じ場所に二度開かない扉。現れる部屋。消える部屋。死んだ家族の声を聞いた者がいる。塔の中の森につづく階段。そんなのばかり」


俺は天井を見た。

上へとつづく暗い階段を。

突然、第一階層がずっと小さく感じられた。


「最高だ。俺の家、建築的トラウマ持ちか」

「あなた、怖いときほど喋るのね」

「気絶寸前のわりによく気づくな」


今度は、レナが本当に微笑んだ。

小さく。

素早く。

でも微笑んだ。


それから顔はまた真剣になった。


「あなた、ここにいるべきじゃない」

「同意する」

「人間はこの地域に住んでない」

「それは知らなかった」

「ここは野良獣人氏族の縄張りよ。許可なく入った人間は商品か、容疑者か、死体になる。三つ同時のときもある」

「心温まる歓迎だな」

「一番近い街は人間を受け入れてる。交易があるから。でもそこでも、あなたは目立つ」

「人間だからか?」

「死の塔から出てきたから」


ああ。

そっちのほうが厄介だ。


「つまり、『こんにちは、禁断の廃墟の新管理者です』は無しだと?」

「昼食前に捕まりたくなければ」


手で顔をこする。

明日の俺の計画は単純だった。街を見つけ、塩、種子、鍋、たぶんパンを買う。

今では、不審な住所を持つせいで売られず、捕まらず、殺されないことも含まれる。

まだオフィスに戻るよりはマシだ。

だが、その差は縮まりつつあった。


「それでも行く必要がある」と俺。「塔には水とリンゴと薪しかない。薬もない。まともな食いものもない。塩もない。まともな道具もない。厨房は空っぽだ。温室は死んでる」


レナは黙った。


「ここから半日、だろ? お前言ったな」

「森が許せば」

「その言い回しがまだ嫌いだ」

「森は道を変える。でも、私は抜け道を知ってる」

「よし。なら朝に説明してくれ」

「私も行く」

「お前、やっと歩けるかどうかだろ」

「だからこそよ。一人で行ったら、街道を見つける前に死ぬ」

「俺への信頼が感動的だ」


彼女は杖を指した。


「あなた、シャベルで戦おうとした」

「今のところ通用してる」

「塔が可哀想に思ったから」


返す言葉がなかった。

もっと悪いことに、たぶん彼女は正しい。


夜はゆっくりと落ち着いていった。

外の物音は消えた。泉は滴りつづけている。中庭でリンゴの樹がひとりでに揺れていた。


記録がもう一度現れた。


一時訪問者を安定化しました

外部脅威を退去

拡張条件を検出:現地との初接触が確立

一部施設が応答:厨房


俺は顔を上げた。


「厨房?」


廊下のそばの壁が震えた。

中で、何かが軋んだ。

古い扉が、どう開くか思い出そうとしているみたいに。


レナは硬直した。


「シン」

「何だ」

「厨房が訪問者に応じるはずない」


記録はさらに強く輝いた。


部分要件を認識:食事を準備できる居住者または訪問者

新たな推奨目標:塩/穀物/種子/基本的な調理器具の入手

推定目的地:ヴァルゲルの街


俺はメッセージを見つめた。

ようやく。

名前。

方角。

街。


安堵を感じるより先に、新しい行が現れた。


警告:外部領域で死の塔との繋がりを宣言しないこと


レナは目を閉じた。


「塔ですらわかってる」


俺は長いため息をついた。


「明日、この地域で最も不審な建築物に住んでないフリをして塩を買いに行く」


初めて、レナが低く笑った。

疲れて、短く、でも本物だった。


「あなた、死ぬわ」

「たぶんな。でももし死んだら、せめてリンゴの樹を継いでくれ」


彼女は壁に頭を預け、まだ微かに笑っている。

俺は青いメッセージが消えるまで見つめていた。


ヴァルゲルの街。

塩、種子、薬、調理器具。

それから一つの単純なルール。


どこから来たか、誰にも言うな。


俺の二周目の人生は、たった今、最初の目標を手に入れた。

そして、この世界のすべての目標がそうであるように、それはすでに一つの脅威を帯びていた。

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