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辺境の廃塔管理人、気づけば住人が増えて小さな町になっていた 〜水とりんごだけの生活から始める異世界スローライフ〜  作者: 星海凡夫


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第2章 ~最初の訪問者~

最初に思ったのは、リンゴは武器にならないということだった。

二番目は、剣を頼んでおくべきだったかもしれない。

三番目は──これはかなり正直な感想だが──同じ日に二度死ぬのは、俺ですらあまりに間抜けすぎる。


俺は寝室で立ち尽くし、両手でメンテナンス用の杖を握りしめていた。塔の記録の青い光が石壁を照らしている。メッセージはまだそこに浮かんでいて、俺の好みからするとあまりに落ち着き払っていた。


『塔の警報』

中庭外部で動きを検出

発生源:不明

記録:非人間

意図:未確認


扉の向こうで、何かが木を引っ掻いた。


一度。

二度。


それから声がした。


「……誰か、いるのか?」


弱々しい声だった。

かすれて。

たぶん、女。

しかし、魔法の塔がリンゴを生産し、俺の魂を青い表示板に登録するような世界で、扉の向こうの女の声は、負傷者、罠、知性ある怪物、あるいは俺より語彙の豊富な狼の可能性もあった。


手の中の杖が震えた。


「防御形態」と俺は囁いた。


先端が変わる。

一瞬、槍になるかと思った。しかし現れたのは、長い棒と細いシャベルのあいだのような何かだった。


シャベルだ。

未知との戦いに臨む俺の武器は、シャベル。


「最高だな」


記録が点滅する。


上級戦闘機能はロックされています

利用可能機能:簡易的な撃退


「つまるところ、敵をつつける、と?」


表示板は答えない。

もちろんだ。

塔は俺に水とリンゴと薪と技術的屈辱を与えてくれたが、まともな返事はくれない。


深く息を吸う。


外の音が重くなった。もう引っ掻く音じゃない。誰かが扉に寄りかかって、立っていようとして失敗し、ずるずると滑り落ちているような音だ。


「……お願い……」


言葉は低く絞り出されていた。

ほとんど力がない。


俺は杖を握りしめた。


俺は英雄じゃない。

それは最初にはっきりさせておくべきだった。

前世で俺は、誰かを助けるために走り出すタイプの人間じゃなかった。どちらかといえば、躊躇って、最悪のシナリオを計算して、逃げることを考えて、そのあと自分を憎むタイプだった。あの二度目の人生をあんなに簡単に受け入れたのも、だからかもしれない。勇気からじゃない。疲れからだ。


しかし、英雄じゃないことと、ベッドから三メートルの距離で助けを求める声を無視することのあいだには、差がある。


その差は微妙だった。

厄介で。

面倒で。

そして、今この瞬間、俺の扉を引っ掻いていた。


「くそ」


ゆっくりと寝室を出る。

暗闇のなかで廊下はより長く感じられた。どこか遠くで泉が滴っていて、一滴ごとに塔の静けさが大きく感じられる。広間に置きっぱなしにしていたリンゴが、赤すぎ、丸すぎ、この状況には穏やかすぎた。


玄関扉に近づく。

記録がまた現れた。


外部存在が近接しています

推定状態:負傷/疲弊/空腹

推定リスク:低~中程度

推奨:慎重な接触


「今度は推奨してくれるのか? ご親切に」


俺は掛け金に手をかけた。

心臓が首まで響くほど強く打っていた。


ほんの少しだけ扉を開く。

最初に入ってきたのは冷たい風。

次に、泥と、潰れた葉っぱと、血の匂い。


外に、塔の内側の小さな建物の壁に倒れ込むようにして、少女がいた。


いや。

耳のある少女だ。


銀色がかった髪──土に汚れている──のあいだから、薄灰色の毛に覆われた三角形の耳が生えている。太い尾が背後に力なく落ちていて、泥で汚れていた。着ているのは簡素な革と厚布の服で、肩と腰のあたりが裂けている。片手で右脚を押さえていた。そこにはひどい裂傷があった。


黄色い目が、隙間から俺をまっすぐ見た。


同時に、彼女は短剣を持ち上げようとした。

しようとした、のだ。

手が震えすぎていて、刃は落ちそうだった。


俺もシャベルを持ち上げた。

威厳のある光景じゃない。

生まれ変わったばかりの男が、気を失いかけの狼少女を相手に、中途半端な道具を構えている。

もし神様が見てるなら、せめて楽しんでいてほしい。


「近づくな」彼女は唸った。

声には脅せるだけの力はあったが、脅しを実行できるだけの力はなかった。


「俺の扉を叩いたのはそっちだ」

「誰かいるなんて知らなかった」

「だからって大してマシにはならない」


彼女は俺の肩越しに、家の中を覗き込んだ。それから、視線は塔の高い壁へと上っていく。警戒は消えなかったが、一瞬だけ別の感情がよぎった。

驚嘆。


「塔が……開いてるの?」


その言葉は風よりもずっと冷たかった。


「ここを知ってるのか?」


彼女は答えようとしたが、身体が裏切った。短剣が手から滑り落ち、石に当たってくるくる回り、俺の足元で止まった。

少女は横倒しに崩れた。


俺は一秒だけ、見ていた。

ほんの一秒だけ。

それから小声で悪態をつき、扉を全開にした。


「はい、わかった。初日から負傷者の訪問。正常。とても正常」


杖を手放さずに彼女のそばにひざまずく。近くで見ると、暗闇で見たよりも幼いのがわかった。たぶん俺の肉体年齢と同じくらい。あるいはもう少し下か。顔は汚れ、唇は乾き、呼吸はあまりに浅い。


記録が現れた。


外部存在を検出

種族:獣人/狼系統

状態:重篤な疲労/軽度から中度の負傷/脱水

居住者登録:なし

アクセス許可:管理者の承認待ち


「狼系統……」


彼女の耳が動いた。

ほぼ意識を失っているのに、聞こえたらしい。


「珍しい動物みたいに呼ばないで……」

「すまん。塔が」

「塔が……あなたに話しかけるの……?」

「まあそんなところだ。黙って俺を評価してる」

少女は軽蔑の目を向けようとしたが、疲れすぎていて表情が保てなかった。

「変な人間」

「お前は夜中だか何時だか知らんが俺の塔に侵入した。お互いさまってことで手を打たないか」


彼女の短剣を指二本で摘まんで遠くに押しやる。彼女は抗議しようとしたが、全身を震えが走り抜けた。それで会話は決まった。


「水をやる。刺そうとしたら、かなりがっかりするからな」

「弱い脅し……」

「初日なんだ」


片腕を彼女の肩の下に通し、持ち上げようとした。優雅にはいかなかった。軽くはあったが、新品の身体はまだ言うことをよく聞かない。それに、まちがった傷に触れて事態を悪化させたくもなかった。結局、半ば引きずり、半ば抱えるようにして中へ運んだ。


敷居で脚が当たり、彼女は呻いた。


「すまん」

「下手くそ」

「今日死んだばかりなんだ。大目に見てくれ」

「……は?」

「なんでもない」


広間まで連れていき、壁にもたれさせた。それから泉に走り、水盤に水を満たして戻った。器を近づけると、彼女は躊躇った。


「毒は?」

「入ってたら俺が先に死んでる。バカみたいにがぶ飲みした」

彼女は俺を見た。

それから水を見た。

最後に、両手で水盤を取り、飲んだ。


効果はあまりに早かった。

肩の力が抜ける。耳が少し垂れる。さっきまで動かなかった尾が、わずかに縮こまった。彼女はもっと飲み、息をつき、水盤の底に金貨でも見つけたみたいにそれを見た。


「この水……」

「うまいだろ?」

「うまい……?」彼女は俺を見上げた。「これ、浄化された湧き水よ。それより……もっと澄んでる。安定したマナがある」

俺はまばたきした。

「水の味だけど」

彼女はこの世で最も無知なことを聞いたという顔で俺を見た。

「変な人間」

「二回目だ」


貯蔵庫に行き、リンゴをいくつか取ってきた。戻ると、彼女は怪我しているのに広間を調べようとしていた。目が壁、扉、廊下、窓と這い回る。見つけたくない何かを探しているみたいに。


リンゴを一つ差し出した。

彼女は果物をじろりと疑わしげに見た。


「これ、塔の?」

「そう」

「ダンジョンの果実?」

「リンゴに見えるけど」

「『見える』は良い答えじゃない」

「俺は十一個食った」


彼女は沈黙した。


「十一?」

「腹が減ってた」

「それで生きてるの?」

「俺の尊厳にとっては不幸なことに、な」


彼女はリンゴを取った。

匂いを嗅いだ。

それから慎重にかじった。


表情が変わった。

素早く、でも見逃せなかった。

目がわずかに見開かれる。咀嚼の途中で口が止まる。垂れていた耳が、立った。


もう一口かじる。

今度はもっと大きくだ。

それから三度目。


「ゆっくりにしろ」と俺。「魔法のリンゴで魔法の腹痛になるかは知らんぞ」

彼女は無視した。

一分もかからず、果実は消えていた。


少女は俺の手を見た。


「もっとある?」

「丸々一本ある」

彼女は真顔になった。

本気の真顔だ。

「それ、冗談にしないで」

「冗談じゃない」

「塔の中に丸々一本?」

「中庭に」

「実をつけてるの?」

「たっぷりな」


彼女は目を逸らした。世界について知っているすべてを組み立て直す必要があるみたいに。


「ありえない」

「その言葉、俺の中では価値が下がりつつある」


もう一つリンゴを取り、差し出す。

彼女は受け取ったが、今度はゆっくり食べた。噛みながら、目が再び俺に向く。


「あなた、誰?」


それはもっともな質問だった。

同時に、危険な質問でもあった。正直な答えは「別の世界で死んだ」で始まり「怪しい神が俺にも理解できない理由でここに置いた」で終わるからだ。

武装し、負傷し、警戒した少女に言うたぐいのことには思えなかった。


「市川真」

彼女は眉を寄せた。

「変な名前」

「そっちの名前にも同じことを言おうと思ったが、まだ聞いてない」


彼女は躊躇った。

小さな仕草だった。

でも、はっきりと。


「レナ」

「レナだけ?」

「今のところは」

「フェアだ」


彼女は疲れて壁に頭を預けた。泉の淡い光が彼女の顔に反射する。切迫した状況が和らいだ今、よく見えた。銀がかった髪は肩のあたりで不揃いに切られている。左目の下に古い小さな傷跡。服はただの農民のものじゃないが、貴族でもない。実用的なものだ。走り、野宿し、たぶん狩りもすることに慣れた者の服。


「それで、レナ。なんで俺の中庭にいたんだ?」


彼女は短く笑った。ユーモアはなかった。


「あなたの中庭?」

「塔が俺を暫定管理者と呼んだ。文句を言う重要な誰かが出てくるまで、その肩書きを濫用するつもりだ」


彼女の目が鋭くなった。


「管理者?」

その言葉はずしりと落ちた。


記録が現れた。聞いていたかのように。


制限情報を検出

肩書き「管理者」が外部存在に認識されました

提案:注意


「ああ、素晴らしい。塔にまで怪しまれた」


レナはリンゴを膝に置いた。


「あなた、この塔が何かわかってない」

「リンゴと水と薪と不安をくれるってことはわかってる」

「冗談を言ってるんじゃない」

「俺もだ」


彼女は深く息を吸った。俺が危険なのか、バカなのか、その両方なのか決めかねているようだった。


「この塔は何年も開いてなかった。私の里ではここを『死の塔』って呼んでる。呼ぶ者もいる――『神の塔』とも」


俺は古い壁を見た。

外のリンゴの樹が、まるでまるっきり無関係だというふうに、ゆっくり揺れていた。


「神の塔?」


レナはすぐには答えなかった。


外で、遠くの何かがこだました。

低い音。

長く尾を引く。

遠吠えに似ているが、もっと重い。


レナは瞬時に硬直した。

耳が扉のほうへ向く。


記録が現れた。


保護区域外で動きを検出

数:三

発生源:未登録

リスク:中程度

第一階層の防壁:門が閉じているかぎり有効


俺は扉を見た。

それからレナを見た。


「追手か?」


彼女は答えなかった。

答える必要もなかった。

顔が真っ青になっていた。

膝からリンゴが落ちて、床を転がった。


外で、何かが石を引っ掻いた。

今度は、家の扉じゃない。

塔の門だ。


レナは短剣を胸に押しつけ、囁いた。


「あいつらに塔が目覚めたってバレたら……絶対に立ち去らない」


塔の記録が俺たちのあいだで輝いた。


訪問者レナに一時的な滞在許可を与えますか?


俺はメッセージを凝視した。

それから広間で傷ついている狼少女を凝視した。

それから外から聞こえるもう一つの引っ掻く音に耳を澄ました。


より深く。

より近く。


俺の平和な生活は、どうやら一日ももたなかったらしい。

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