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追放先は辺境の廃塔でした   作者: 星海凡夫


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# 第141章 〜夏の終わりに〜

夏が来て、過ぎていった。交易館の建設は順調に進み、学校の屋根には新しい鐘が取り付けられた。ヴェラスが設計し、ゴルンが鍛え、自由都市の鋳物師が仕上げたその鐘は、授業の始まりと終わりを村中に告げた。朝一番に響く鐘の音は、村の誰もが聞き慣れた新しい日常の音になっていた。


子供たちは夏のあいだにまた少し成長した。ヒカリは八つになり、木剣の稽古に一層熱心になった。彼女はリサンドラの指導を受けながら、妹や弟たちにも剣の握り方を教え始めていた。カイは七つで、水の精の血を受け継ぐ者らしく、泉のほとりで過ごす時間がさらに長くなった。彼は水面に映る雲の形を読み、水の古い言葉を妹のリラに教え、時にはマリスと共に水の精の子守歌を口ずさんだ。テオは六つになり、治癒師の母のあとを追って薬草の名前をほぼ全て覚え、診療所で簡単な手伝いもできるようになっていた。彼は算数も得意で、ミリが「この子は将来、帳簿の天才になる」と太鼓判を押すほどだった。


ルミナは四つになるが、相変わらずその成長は人間の尺度では測れなかった。彼女は浮遊しながら庭園を移動し、銀葉樹と会話を交わし、時には弟妹たちを青い光で包み込んで眠らせた。アリアは三つで、小さな翼をばたつかせて数歩浮き上がり、まだ長くは飛べなかったが、シルフィーの指導で少しずつ空中に留まる時間を延ばしていた。ソルとフェリルは二つになり、よちよちと歩きながら互いに言葉を交わすようになった。二人は同い年ということもあってか、いつも一緒に行動していた。ソルはエルフの血を引くせいか成長がやや遅かったが、その分、観察力が鋭く、フェリルは母親譲りの知的好奇心で、周囲のすべてに「なぜ?」と尋ねた。リラは一歳半で、泉のそばを歩き回り、水の精の血を受け継ぐ者らしく、水に触れるとその質を感じ取るような仕草を見せた。リオンは一歳になり、つかまり立ちから数歩、よちよちと歩き始めたばかりだったが、その目は母親譲りの計算高さで周囲を観察していた。


「みんな、それぞれの道を歩き始めてるな」と、ある午後、俺は中庭のリンゴの木の下でレナと並んで座りながら言った。


「そうだな。ヒカリは剣士、カイは水の語り部、テオは治癒師、ルミナは光の導き手、アリアは風の歌い手、ソルは観察者、フェリルは探究者、リラは水の子、リオンは未来の帳簿係」


「ずいぶん細かく分類するんだな」


「母親だからな。それぞれの子供のことを、誰よりも知ってるつもりだ」


彼女の声には、誇りと、少しの寂しさが混ざっていた。子供たちは成長し、それぞれの世界を広げ始めていた。かつては母親の腕の中にいた子たちが、今では自分の足で歩き、自分の言葉で話し、自分の意志で何かを選ぼうとしていた。


「でも、まだまだ子供だ」と俺は言った。


「ああ。まだ夜は一緒に寝たがるし、転べば泣く。でも、いつかはこの塔を出ていく日が来るのかもしれない」


「そのときは、そのときだ。俺たちはここにいる。いつでも帰ってこられる」


彼女は何も言わず、ただ俺の手を握った。その手は、最初にこの塔のドアを叩いた夜よりも、ずっと柔らかく、ずっと温かかった。


学校の夏休みが終わる頃、自由都市の交易館が完成した。広場から少し離れた、学校の隣接地に建てられたその建物は、石造りの二階建てで、一階には交易所と倉庫、二階には商人たちの宿泊施設が備えられていた。開館の日には、自由都市連合から公式の祝いの使者が訪れ、村の広場で小さな式典が開かれた。


「これで名実ともに、この村は交易の拠点となったわけだ」とバルドが言った。彼は式典のあと、俺とミリを交易所の新しい執務室に案内した。窓からは村の全景と、遠くに聳える再生の塔が見渡せた。


「自由都市連合としても、この村との関係は非常に重視している。フェリクスが先鞭をつけ、あなたがたが育てたものを、私は引き継いだに過ぎないが」


「猫の次は犬か。随分と多様な種族が集まるものだな」と俺は言った。


「この村は、種族の坩堝だ。獣人、エルフ、人間、水の精、翼人、精霊、ドワーフ、半巨人。これほど多様な種族が一つの場所で共存している例は、他にない」


「それが強みでもあり、面倒でもある」


「面倒を引き受けるのが、我々のような者の仕事です」バルドは穏やかに微笑んだ。


午後、広場では新しい市場の店が一軒、また一軒と開店準備を進めていた。自由都市からの商人だけでなく、ヴァルゲルドや山岳氏族からの出店も増え、始まりの村はもはや村というより小さな町の様相を呈していた。


その夜、居間で夕食を囲みながら、ミリが帳簿を開いて言った。


「交易館ができて、市場の取引量は倍増する見込みです。今はまだ小規模だけど、数年以内に、この村は独立した交易都市として機能するようになる」


「都市か」とゴルンが金槌を肩に担ぎながら言った。「村で十分だと思ってたが」


「村は成長するものです。子供たちが増えるように、村も増える」


「なら、俺の鍛冶場も拡張しないとな」


「ええ、お願いします。星鉄の需要はますます増えるから」


夜が更けて、子供たちが寝静まったあと、俺は久しぶりに一人で屋上に立った。村の灯りが数え切れないほど増え、その一つひとつに誰かの生活があり、誰かの家族があり、誰かの未来があった。交易館の窓からはまだ灯りが漏れ、学校の鐘が静かに月明かりを反射していた。


「またここにいた」と声がした。シルフィーだった。


「お前もか」


「うん。アリアがやっと寝た。最近、なかなか寝つかなくて。空を飛びたいって、毎晩のように翼をばたつかせるの」


「母親に似たんだな」


「そうかも。でも、嬉しい。あの子が空を好きでよかった」


彼女は翼をそっと俺の肩に掛け、村の灯りを見下ろした。


「この村、ずいぶん大きくなったね」


「ああ。十年前は何もなかった」


「でも今は、こんなに。全部、あなたが始めたことだ」


「俺だけじゃない。皆がいたからだ」


「うん。でも、その皆を集めたのはあなた」彼女は翼でそっと俺を包み込み、それから微笑んだ。「私もその一人。集められて、ここに留まった。それが今では、私の人生そのものになった」


月が高く昇り、村の灯りが一つ、また一つと消えていった。明日はまた新しい日。新しい成長、新しい発見、新しい約束。でも今夜は、この静かな夜のなかで、ただ隣に立っているだけで十分だった。

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