第131章 〜風の子〜
シルフィーの陣痛が始まったのは、秋の終わりを告げる冷たい風が吹き始めた夜だった。
あの朝、彼女はいつも通り空を飛んでいた。妊娠八ヶ月を過ぎても、彼女は飛ぶことをやめなかった。高度を落とし、速度を抑え、無理のない範囲で、しかし確かに、彼女は毎日翼を広げて空へ上がった。
「飛ばないと、私じゃなくなる」と彼女は言った。「この子が生まれても、私は風の子であり続けたい。母親になっても、私自身を失いたくない」
その言葉には、長年自分の居場所を探し続けてきた者の静かな決意が込められていた。
夕方、彼女は中庭に降り立ち、翼をたたんだ。その瞬間、彼女は一瞬息を呑み、それから腹に手を当てて微笑んだ。
「来たみたい」
俺は彼女の手を取って、そのままアルテアの診療所へ向かった。塔全体が動き始めるまで、ほとんど時間はかからなかった。セラが湯を沸かし、ヴェラスが清潔な布を運び、レナが子供たちを居間に集め、マリスが水の精の古い鎮静の歌を口ずさみ、ヴァエリスが青い光で部屋を満たし、リサンドラが廊下で無言の見張りに立った。ライラは記録のための羊皮紙を広げ、ミリは帳簿を閉じて静かに見守り、アルテアは診断杖を手にすべての準備を整えた。
そしてシルフィーは、寝台に横たわりながらも、翼を半分開いたままだった。
「翼、邪魔じゃないか」と俺は尋ねた。
「邪魔じゃない。翼があるほうが落ち着くの。空の民は、翼を閉じると呼吸が浅くなる。開いていたほうが、楽に産める気がする」
「空の民の出産なんて、誰も知らないことだらけだな」
「うん。だからこそ、私が最初の一人になる。この塔で、翼を持ったまま子供を産む最初の母親に」
彼女の菫色の目には、いつもの柔らかな光があったが、その奥には確かな決意が宿っていた。
数時間後、真夜中を過ぎた頃、産声が上がった。それは風が塔の周りを吹き抜けるような、軽やかで、しかし確かな声だった。アルテアが取り上げたのは、小さな女の子だった。背中には産毛のような羽毛が生え、それは濡れたように輝いていたが、すぐに乾いて柔らかな羽根になった。翼はまだ小さく、折りたたまれて背中に寄り添っていたが、それは確かに翼だった。
「女の子よ」とアルテアは声を詰まらせながら言った。「翼がある。小さくても、本物の翼」
シルフィーは震える手でその子を受け取り、自分の翼でそっと包み込んだ。
「私の子。翼がある。空を飛べる子だ」
彼女は泣きながら笑い、その涙が赤ん坊の羽根の上に落ちて、かすかに輝いた。
「名前は決めてあるのか」と俺は尋ねた。
「ある。アリア。古い風の言葉で『歌』を意味するの。この子が生まれたとき、風が塔の周りで歌ってた。まるで歓迎するみたいに。だからアリア。風の歌」
朝が来ると、塔の全員がアリアを一目見ようと集まった。ヒカリは「羽がある!」と歓声を上げ、カイは静かにその小さな翼を観察し、テオは「どうやって飛ぶの?」と矢継ぎ早に質問した。ルミナはふわりと浮遊しながら、青い光でそっとアリアを包み込んだ。ソルはまだ揺りかごの中だったが、アリアの泣き声に反応して、自分も小さく声を上げた。
「六人目だ」とレナが言った。
「六人目だな」
「いや、七人目だ。ヴァエリスのルミナも数えろ」
「そうだった」
「最初は私一人だったのに、今では七人の子供たちがいる」
「そうだな」
「悪くない」彼女は微かに笑った。「むしろ、誇らしい」
午後、シルフィーの部屋を訪ねると、彼女は窓辺に座り、アリアを胸に抱いて空を見上げていた。秋の空は高く、澄み切り、渡り鳥が南へ向かって飛んでいた。
「この子はいつか、私よりも高く飛ぶのかな」と彼女は言った。
「そうかもしれない。母親を超えるのは、子供の特権だ」
「そうね。私は私の母親を超えられなかった。母は私を置いて雲の上に帰った。私は地上に残された。でも、この子は違う。この子には帰る場所がある。ここが、この塔が、家族が」
彼女は翼でそっとアリアを包み込み、その小さな羽根に口づけた。
「シン、ありがとう。私をここに留めてくれて」
「礼はいい。お前が自分で選んだことだ」
「うん。でも、選ばせてくれたのはあなた。それだけは忘れない」
夕方、居間で皆が集まった。長いテーブルは子供たちでいっぱいになり、セラが特別に焼いた蜂蜜パンが並べられた。ヒカリはアリアの翼をそっと撫で、カイはその小さな手に自分の指を触れさせ、テオは「僕も飛びたい」と言ってシルフィーに翼の構造を質問していた。ルミナはふわりと浮遊しながら、青い光でアリアの周りをくるくると回り、ソルはリサンドラの腕の中で静かに眠っていた。
「にぎやかになったな」とゴルンが金槌を肩に担ぎながら言った。
「まだまだこれからだ」とヴェラスが新しい揺りかごの設計図を広げながら答えた。
「何人まで増えるんだ」
「さあな。でも、この塔はまだ部屋がある」
夜、俺はリサンドラと共に中庭のリンゴの木の下に立っていた。秋の月が明るく輝き、光り草の防護帯が静かに瞬いていた。ソルは彼女の腕の中で眠り、彼女はその小さな頭にそっと手を添えていた。
「次は誰だ」とリサンドラが言った。
「次?」
「子供だ。シルフィーが産んだ。次は誰が産む」
「ライラが予定している。それから、まだ決めていない者もいる」
「ミリか。マリスも、もう一人欲しがっている」
「ああ」
「私は、もう一人産んでもいいと思っている」
「ソルがまだ生まれたばかりだぞ」
「知っている。でも、私は長命だ。十年後でも、二十年後でも構わない。ただ、お前に伝えておきたかった」
彼女は俺の手を取って、そっと握った。その手は冷たく、しかし確かな温もりを帯びていた。
秋の風が塔の周りを吹き抜け、リンゴの木の葉がかすかに揺れた。新しい命がまた一つ、この場所に根を下ろし、翼を持つ子が空を見上げていた。明日はまた新しい日。新しい発見、新しい笑顔、新しい未来。でも今夜は、この静かな秋の夜に、皆と共にいる。それで十分だった。




