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追放先は辺境の廃塔でした   作者: 星海凡夫


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第129章 〜太陽の子、夜明けの子〜


ソルが生まれてから最初の一週間、塔の中は不思議な静けさに包まれていた。新生児の泣き声は確かにあった。夜中の授乳も、おむつ替えも、眠れない夜もあった。しかしそれらすべてが、どこか穏やかな祝福のように感じられた。戦士の子は、戦場ではなく平和な塔で生まれ、剣ではなく温かな毛布に包まれていた。


リサンドラは産後三日で起き上がり、五日目には中庭を歩き、七日目にはソルを抱っこ紐で胸に抱えて軽い素振りを始めていた。


「無理はするなと言ったはずだ」と俺は呆れて言った。


「無理ではない。エルフの回復力は人間より早い」

「それでも、産後だ」


「知っている。だから素振りだけだ」彼女は木剣を置き、ソルの頭をそっと撫でた。「この子も、いずれ剣を握る。そのとき、私が教えられるように、今から準備をしておく」


「気が早いな。まだ一週間だぞ」


「教育は早いに越したことはない。ライラが言っていた」


「ライラは読み書きの話をしていたんだ」


「同じことだ」


彼女の口元がほんの少し緩んだ。リサンドラにとっては、それが大笑いだった。


夏が深まるにつれて、ソルはゆっくりと成長していった。エルフの血を引く子供は人間より成長が遅いとアルテアが言っていたが、それでも日々少しずつ重くなり、泣き声は力強くなり、銀色の産毛は徐々に濃くなっていった。


ヒカリとカイとテオは、毎日のようにソルの揺りかごを覗きに来た。ルミナは特に興味を示し、浮遊しながら青い光でそっとソルを包み込んでは、母親のヴァエリスに「かわいい?」と何度も尋ねていた。


そんなある午後、俺はリサンドラと共に庭園にいた。銀葉樹の下でソルが眠り、光る花々が静かに瞬いていた。


「名前の意味を聞いたとき、お前は『太陽』だと言った」と俺は話しかけた。


「ああ」


「でも、お前自身もまた、太陽のような存在だ。この塔にとって、俺にとって」


「私は長い夜を生きてきた。八十年前、竜と戦い、仲間を失い、それ以来ずっと闇の中にいた。でも、お前に会って、この塔に来て、少しずつ光を取り戻した」

「だからソルなのか」


「ああ。この子は、私の光だ。お前も、この塔も、皆も、私にとっての太陽だ。この子の名は、そのすべてを表している」


彼女はソルを抱き上げ、その額にそっと口づけた。戦士の唇が、これほど優しくなる瞬間を、俺は他に知らなかった。


秋が近づく頃、塔の日常はまた新しいリズムを見つけていた。ソルの世話を中心に回りながらも、ヒカリは木剣の稽古を続け、カイはますます水と親しみ、テオは治癒師の見習いとしてアルテアの手伝いを始めていた。ルミナは相変わらず庭園で過ごすことが多かったが、時折、村に下りては子供たちと遊び、その光の姿で皆を驚かせたりもした。


「そろそろ秋の収穫祭の準備をしなければ」とミリが帳簿を開きながら言った。「今年は村の人口も増えたし、交易所も拡張した。自由都市からも商人が来る。盛大にやるべきだ」


「収穫祭か。去年は小規模だったな」


「今年は違う。始まりの村が正式に地図に載ってから初めての祭りです。ここがただの塔の麓の集落じゃないと、皆に示すいい機会よ」


「何か手伝えることはあるか」


「あなたは来賓として出席してくれればいいの。あなたが塔の主として顔を見せることが、何よりの宣伝になる」


「俺はただの暫定管理者だ」


「まだそれ言うの?」彼女は呆れたように帳簿を閉じた。「いい加減、認めたらどう?あなたはこの塔の主であり、村の中心なの。皆、あなたを見てる」


「お前もか」


「私は最初から見てた。忘れたの?」彼女は微笑み、帳簿を小脇に抱えた。「だからこそ、今ここにいる」


収穫祭の前日、俺はリサンドラと二人で村の外れの丘に立っていた。秋の陽が低く傾き、始まりの村の屋根が黄金に染まっていた。ソルはリサンドラの胸の中で眠り、彼女はその小さな頭にそっと手を添えていた。


「お前の人生は変わったな」と俺は言った。


「ああ。八十年間、私は一人だった。それが今では、夫がいて、子供がいて、仲間がいて、村がある」

「夫か」


「違うか」


「違わない。ただ、お前がそう言うのを初めて聞いた」


「言葉にしなかっただけだ。私はこれからも、あまり言葉にしない。でも、お前は私の伴侶だ。それは変わらない」彼女は俺の手を取って、そっと握った。「これからも、共に戦い、共に育て、共に生きる。それが私の誓いだ」


俺は彼女の手を握り返し、秋の空を見上げた。雁が南へ渡っていく。明日は収穫祭。村は賑わい、新しい出会いがあるかもしれない。ソルは少しずつ成長し、また新しい命の約束も果たされるだろう。でも今は、この丘の上で、戦士とその子と共に、穏やかな午後を過ごしている。それで十分だった。

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