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追放先は辺境の廃塔でした   作者: 星海凡夫


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第127章 〜記録者の選択〜


春の終わりが近づく頃、ライラが俺を図書館に呼んだ。彼女は机の上に何冊ものノートと羊皮紙を広げ、几帳面に分類し、付箋をつけ、ルーン文字で注釈を書き込んでいた。その姿はいつもと変わらないように見えたが、彼女が顔を上げたとき、その青い目には普段とは違う光が宿っているのに気づいた。


「シン、話したいことがあるの」と彼女は言った。ペンを置き、几帳面にノートを閉じ、深く息を吸った。学者が長い研究の末に結論を口にするときのような仕草だった。


「聞いてる」


「私は長い間、自分が何者かを考えてきた。記録者として、ルーンキャリアとして、そしてこの塔の一員として。自分の役割は記録することだと思ってきた。他の皆のように戦えず、飛べず、癒せず、水を操れない私は、せめてこの塔の歴史を残すことで貢献しようと」


「お前は十分貢献している。誰もお前にそれ以上を求めてはいない」


「知ってる。でも、私自身がもっと何かをしたいと思い始めてる」彼女は自分の手を見つめ、その指先で机の上の羊皮紙をそっとなぞった。「私は他の皆よりずっと長く生きてきた。それなのに、自分の人生を生きてこなかった。ずっと観察者だった。でも今は――自分も誰かの母親になりたい。あなたの子を育てたい」


彼女の青い目はまっすぐで、迷いはなかった。百五十年近く生きてきた女性が、今、初めて自分の人生のために選択をしようとしていた。


「でも、一つだけ問題がある」と彼女は続けた。


「何だ」


「ルーンキャリアは、妊娠の周期がとても長い。次の周期がいつ来るか、正確にはわからない。だから、もし私が子を望むなら、機会を逃したくない」


「つまり、お前は今、その時期なのか」


「はい。正確には、次の季節が、私にとって最も可能性が高い時期です。だから今夜、お願いがあるの」彼女は立ち上がり、俺の手を取った。「私と共にいてほしい。未来のために」


俺は彼女の手を握り返した。その手は冷たくなく、熱くもなく、長い年月をかけて文字を綴り、知識を積み重ねてきた手だった。


「もちろんだ。今夜だけじゃない。お前が望む限り、いつでも」


彼女は少しだけ微笑み、それから背伸びをして俺の頬にキスをした。学者らしい控えめな仕草だったが、その唇には確かな意志が込められていた。


「ありがとう。それじゃあ、今夜、私の部屋で」


彼女はそう言って、ノートの山の向こうに戻っていった。背中がいつもより少しだけ、華やいで見えた。


夏が来た。リサンドラの腹は大きく膨らみ、アルテアの計算では数週間以内には生まれるだろうとのことだった。塔の中は生命の気配に満ち、中庭のリンゴの木は青々と茂り、光り草の防護帯は夏の陽射しを受けて輝いていた。そんなある夜、俺は約束通りライラの部屋を訪ねた。


彼女の部屋は図書館の隣にあり、壁には所狭しと本棚が並び、机の上にはいつものノートと羽根ペンが置かれていた。しかし今夜は、いつもと違って部屋の隅に小さな花が飾られ、窓辺には新しい風鈴が吊るされていた。


「これはセラがくれたの。『記録者の部屋にも花を』って」


「いい香りだ」


「ええ。少しだけ、緊張が和らぐ」


彼女は寝台の縁に座り、手を膝の上に置いていた。学者として何千時間も研究を重ねてきた彼女が、初めて経験することに臨もうとしている静かな緊張感が、そこにはあった。


「シン、私は百五十年近く生きてきて、ずっと知識を蓄えてきた。なのに、今夜は教科書が何もない」


「教科書なんていらない。俺たちはいつも、手探りでやってきた」


「そうね。この塔は、そういう場所だった」彼女は微笑み、俺の手を取った。「私は今夜、あなたと共に未来を始めたい。記録者としてではなく、一人の女性として」


俺は彼女の隣に座り、その肩に手を回した。窓の外では夏の月が明るく輝き、夜風が風鈴をそっと揺らしていた。彼女は俺の胸に頭を凭せかけ、しばらくそのまま動かなかった。やがて彼女は顔を上げ、唇を重ねた。それは控えめで、少しだけ震えていたが、確かな意志のこもった口づけだった。


「これが、私の選択。観察者ではなく、参加者として」


「ああ。お前はもう、ずっと前から参加者だ」


彼女は微笑み、それからゆっくりと眼鏡を外して卓上に置いた。


夜が更けていった。夏の風が塔の周りを吹き抜け、子供たちはすでに深い眠りについていた。明日はまた新しい日。リサンドラの出産が近づき、ライラの未来への一歩が始まった。すべてが動き続けている。でも今夜は、この静かな部屋の中で、二人の時間が流れていた。それで十分だった。

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