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追放先は辺境の廃塔でした   作者: 星海凡夫


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第124章 〜冬の静けさ、命の足音〜


雪が降り積もった中庭で、子供たちの歓声が響いていた。ヒカリがカイに雪玉を投げ、カイが静かに避け、テオが「ぼくも!」と小さな手で雪を丸め、ルミナがふわりと浮遊しながら、雪のひとひらを光で包んで遊んでいた。


俺は居間の窓からその光景を眺めながら、温かい茶を啜っていた。アルテアが隣で診断杖を手入れしながら、ときおり顔を上げて子供たちを見守っている。


「リサンドラは元気か」と俺は尋ねた。


「ええ。今朝も訓練をしていた。ただ、いつもより少しだけ休憩が多かった」


「彼女が休憩を?」


「驚きでしょう?本人は『集中力を持続させるため』と言っていたけど」アルテアは微かに笑った。「ここ数年で一番、柔らかくなった」


「雪のせいかもしれない」


「雪のせいにしてはいけません。彼女自身が変わったの。あなたと、子供たちと、この塔が彼女を変えた。誰にでも、変わるときが来るのよ」


中庭では、リサンドラが子供たちに混じって立っていた。手には木剣ではなく、雪玉を持っていた。テオが彼女に向かって投げ、彼女はそれを難なくかわし、それからゆっくりと投げ返した。その動きは、かつての戦士のものではなく、ただの遊びだった。


「見たか」とレナが背後から声をかけてきた。


「見た。雪玉を投げてる」


「あのリサンドラがだ。何年か前なら、雪玉を剣で斬っていた」


「進歩だ」


「そうだな」


その午後、リサンドラが俺を温室に呼んだ。彼女は窓辺に立ち、外の雪景色を眺めていた。手には何も持っておらず、剣は壁に立てかけられていた。


「話がある」といつもの言葉で始まった。


「聞いてる」


「昨夜のことは、私にとって意味のあることだった。忘れない」


「俺もだ」


「それで――」彼女は一瞬息を整え、それから俺のほうを向いた。「今朝、アルテアに診てもらった。まだ確定ではない。だが、兆候がある。体温の上昇、マナの変動、それから――自分でも感じる。ここに」彼女はそっと腹に手を当てた。「何かが動き始めている」


俺は彼女の手の上に自分の手を重ねた。


「怖いか」


「怖くない。ただ、不思議だ。私はずっと、誰かを守るために戦ってきた。でも今は、まだ見ぬ誰かを、自分の中で育てている。それは戦いとは違う。もっと静かで、もっと深い」


「それが母親になるということか」


「わからない。だが、悪くない」彼女は小さく口元を緩めた。リサンドラにとって、それは最大の笑顔だった。


冬の日は短く、すぐに夕暮れが訪れた。子供たちは雪遊びに疲れて居間の暖炉の前で眠り、セラが毛布をかけていった。ゴルンは鍛冶場で新しい道具を作り、ヴェラスは揺りかごの部品を丁寧に削っていた。その揺りかごは、すでに四人の子供たちが使ったものだったが、もう一人増えることを見越して、彼は補強を施していた。


「また増えるんだろう」とゴルンが金槌を振るいながら言った。


「たぶんな」


「何人になるんだ」


「わからん。でも、この塔は広い。まだ部屋はある」


「部屋の問題じゃない。俺の玩具作りの問題だ」彼は小さな金属の欠片を手に取り、光にかざした。「まあ、いい。子供は多いほうがいい。鍛冶場もにぎやかになる」


夜、俺はリサンドラの部屋を訪ねた。彼女は窓辺に座り、雪明かりの中で剣を研いでいた。その手つきはいつもと変わらず正確で、無駄がなかった。


「まだ確定じゃないが」と彼女は顔を上げずに言った。


「ああ」


「それでも、アルテアはほぼ間違いないと言った。エルフの妊娠は人間より長い。まだ何ヶ月もかかる。だが、確かにここにいる」


彼女は剣を置き、俺のほうを向いた。銀色の瞳が雪明かりを受けて輝いていた。


「シン。私は誓った。お前の子を宿し、育て、守ると。今夜、改めてその誓いを繰り返す。この子が生まれるまで、そして生まれたあとも、私は守り続ける。お前を、子供たちを、この塔を」


「お前はもう十分守ってきた」


「まだ足りない」彼女は静かに首を振った。「私の戦いはまだ終わっていない。でも、戦い方は変わった。剣だけじゃない。この手で、この胸で、守ることもある」


彼女は俺の手を取って、そっと自分の腹に当てた。まだ何も感じられなかったが、そこには確かに未来があった。


「暖かい」と俺は言った。


「ああ。お前の手は、いつも暖かい」


彼女は少しだけ微笑み、それから窓の外の雪を見つめた。光り草の防護帯が青く輝き、守護者たちが静かに巡回していた。塔のマナの流れは規則正しく、冬の夜を温かく包み込んでいた。


「春が来たら、また変わる」とリサンドラは言った。


「どう変わる」


「子供が増える。シルフィーも、いずれはまた望むだろう。ライラも、ミリも、まだこれからだ。この塔はどんどんにぎやかになる」


「それはいいことだ」


「ああ。そう思えるようになった。前の私なら、にぎやかさは警戒の対象だった。今は違う」


彼女は剣を鞘に収め、立ち上がった。


「今夜はここにいろ」


「わかった」


窓の外では雪が静かに降り続け、塔の呼吸が壁の中を脈打っていた。戦士の誓いは、静かな冬の夜に、確かな足音を刻み始めていた。

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