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辺境の廃塔で水とリンゴだけの生活→気づけば獣人美女が集まり、小さな町に!? 〜異世界スローライフ&街づくり〜  作者: 星海凡夫


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第11章 ~生きている土の匂い~

第11章 ~生きている土の匂い~


鼻がむず痒くて目が覚めた。


埃じゃない。煙でもない。湿った土の匂いだ——鼻から入って記憶にこびりつく、あの匂い。ゆっくりと目を開ける。黒ずんだ木の天井は相変わらずそこにあり、青い光の筋が隙間のあいだを静かに脈打っている。でも、空気に何か違うものがあった。何か新しいものが。


寝返りを打って狭い窓から覗く。中庭はまだ暗く、朝の最初の光がかろうじてリンゴの樹の一番高い枝に触れているところだった。すべて静か。すべて平和。


すべて、静かすぎる。


起き上がる。管理ツールは昨夜置いたまま、寝台のそばに立てかけてあった。手に取り、廊下へ出る。レナの部屋の扉は閉まっていた。いびきは聞こえない——彼女はいびきをかかない、もう知っている——でも物音もしない。


階下の厨房へ。誰もいない。それから温室へ。


足を踏み入れるとすぐに記録が灯った。


『塔の記録』

温室:状態更新

カブの種子:発芽を確認(予定より3日早い)

タマネギの種子:発芽を確認(予定より5日早い)

未知の種子:発芽の兆候なし

土壌品質:低〜中(発芽には十分、成長には不足)


立ち尽くし、苗床を見つめた。


小さな緑の点が、土の暗い表面を突き破っていた。微かで、脆く、注意して見なければほとんど見えない。でも、確かにそこにあった。最初の苗床にはカブの芽が二列に伸び、二つ目には緑の針のようなタマネギの細い先端。


「お前ら、芽が出たな」と声に出して言った。


緑の先端の一つがかすかに揺れた。たぶん、割れたガラスから入ったただの風だ。でも、返事だと信じたかった。


記録が瞬いた。


『塔の記録』

発芽促進の要因を分析中:泉の水に含まれる微量マナが発芽を加速した可能性があります


「泉の水か」と俺は呟いた。「そうだよな。あのクソ泉の水だ」


苗床のそばにひざまずき、指先で土に触れる。湿っているが、ぐしょぐしょじゃない。昨日の水やりで十分だった——塔が「過剰灌水の傾向」を警告してきたにもかかわらず。どうやら、俺は学んでいるらしい。


「独り言を言ってる」


レナの声が入口からした。敷居にもたれ、腕を組み、銀がかった髪はまだ寝癖で乱れている。でも耳は立っていた。


「芽が出た」と俺。

「何が?」

「全部。カブ。タマネギ。見ろ」


彼女はゆっくりと近づき——昨日より跛が少ない——苗床のそばで止まった。黄色い目が芽へと下りる。長いあいだ見つめていた。


「とても小さい」と彼女。

「赤ちゃんだ」

「カブの赤ちゃん?」

「今日からそう呼ぶ」


レナはあのほぼ笑いを漏らした。ここ数日、それが増えてきている。


「あなた、すぐ興奮する」

「当然だ。最後に何か植えたのは七歳の時で、綿の上に豆を置いたやつだった。三日で死んだ」

「これも死ぬわよ、土を良くしなければ」


彼女はまだ浮かんでいる記録を指さした。


土壌品質:低〜中(発芽には十分、成長には不足)


「塔は、育つには土が十分じゃないって言ってる」と訳した。「芽は出たが、もっといい土壌がないと、この先は長くないかもしれない」

「なら肥沃な土が必要ね」

「森の土」

「そう。取りに行こう」


彼女の脚を見る。


「歩けるのか?」

「そばにいる分には。あなたが掘る。私が見てる」

「もし何か現れたら?」

「叫ぶ」

「優秀な戦略だ」

「あるものを使うの」


貯蔵庫で空の袋——ヴァルゲルでの買い物で残ったやつ——と管理ツールを手に取る。出る前に、泉に寄って水筒を二つ満たした。常に水。初日に学んだ教訓だ。


塔の門が開くときに軋む。森はいつもの匂いで俺たちを迎えた。湿った土、樹脂、強すぎる花。でも何かが他にもあった。敷居で立ち止まらせる何か。


「感じる?」とレナ。

「わからない」


目を閉じて深く息を吸う。遠吠えはなし。足音もなし。でも感覚があった——首筋のむず痒さ。遠くから誰かに見られているような。


「たぶんただの妄想だ」と俺。

「妄想は生存を保つ」

「お前は俺が知る中で最も安心させる人間だ」

「ありがとう」


森へ入った。


塔の周りは、石とまばらな草の小さな空き地だった。その先に木々が来る。高く、太く、苔むした幹と、日光を緑の断片に濾す梢。地面は落ち葉の絨毯で、いくつかはすでに腐りかけ、他はまだパリパリと音を立てる。


「ここよ」とレナは門から五十メートルほど離れた空き地を指さした。「葉っぱの下。暗い層」


ひざまずき、手で掘り始める。管理ツールが震え、シャベルの形を取った——最初の夜の、あの屈辱的なシャベル。でも今は旧友として迎えた。表層の葉っぱはすぐに剥がれた。その下の土は暗く、ほぼ黒で、朽ちた木と生命の匂いがする。


「これ、いいのか?」と一掴み見せながら訊く。


レナはしゃがみ込み、匂いを嗅いだ。


「いい。温室の土と保管室の土に混ぜて。良くなる」


暗い土を袋に詰めた。重くはないが、かさがきいた。作業しながら、また感じた。首筋のむず痒さ。


手を止めた。


「またか?」とレナ。

「ああ」


彼女は問い詰めなかった。耳がゆっくり回り、空気の匂いを嗅ぐ。尾は動かない。


「何かいる」と彼女は呟いた。「近くじゃない。でも東の方角に」

「追跡者か?」

「たぶん。あるいは動物。わからない」

「塔はここから東か?」

「違う。塔は西。東はヴァルゲル」


それは良くなかった。俺たちとヴァルゲルのあいだに何かがあるなら、それが誰であれ、通り道にいるか、徘徊しているかだ。


「戻ろう」と俺。

「急いで」


走らなかった——走ると注目を引く——でも早足で歩いた。俺は肩に土の袋、レナは短剣に手をかけ。塔の門が木々のあいだから石の口のように現れた。あの古い廃墟を見てあんなに安堵したことはなかった。


門を閉める。石が収まる音は、どんな音楽よりも心強かった。


「塔は何か見たか?」とレナ。

「誰が?」

「塔が」


門に触れる。記録が灯った。


『塔の記録』

外部監視:異常なし

検出範囲内に脅威はありません


「何もない」と訳した。「でも塔はごく近くしか検出できない」

「なら範囲外に何かいる」

「そのようだ」


中庭で黙り込む。リンゴの樹が風にそよいでいた。警報は鳴っていない。門を引っ掻く音もない。でも感覚は消えなかった。何かが見ている。塔が検出できるほど近づいていない何か。

まだ。


「土を準備しよう」と、思考を追い払おうとしながら言った。「芽は妄想じゃ育たない」

「妄想には栄養がない」とレナは同意した。「私も試した」


午後を温室で過ごした。


森の土を、土壌保管室——第8章で開けたあの部屋——の古い土と混ぜた。その場で考えた割合で。古い土二掴みに新しい土一掴み。それから泉の水を、湿っているがぐしょぐしょでないペースト状になるまで加えた。


レナは腰掛けに座り、短剣を膝に、耳が時折、戸口のほうへ回っていた。彼女は警戒態勢にあった。でも、ここにいた。


「前にこれをやったことあるか?」と俺。

「何を?」

「土を準備したり。植えたり」


彼女は躊躇った。


「氏族に共同の菜園があった。小さいの。各家族が一つずつ苗床を担当してた」

「何を植えてたんだ?」

「苦い薬草。お茶用」

「苦い薬草?」

「消化を助ける。それに寒さにも」

「それはとても……家庭的だな」

「氏族にも家庭生活はある。ただ壁がないだけ」


黙って、手で土をかき混ぜ続けた。


「恋しいか?」と思い切って訊いた。


レナはすぐには答えなかった。口を開いたときは、声がもっと低かった。


「何人かの人は恋しい。場所はそうじゃない」

「誰が?」

「祖母。植物の見分け方を教えてくれた」

「ヴァルゲルで言ってたのか? どれが食べられるか知ってるって?」

「そう」

「その人は……?」

「死んだ。私が逃げ出す前に」

「すまない」

「必要ない」彼女は視線を逸らした。「長生きした。ただ、悲しいまま死んだ」


理由は訊かなかった。限界があった。そして俺はそこに近づきつつあった。


代わりに、混ぜた土を一掴み取って苗床に入れ、芽の根元を新しい暗い層で覆った。記録が評価した。


『塔の記録』

土壌品質が改善されました:中

成長速度がわずかに向上する見込みです

完全な肥沃化には、さらなる有機物の追加を推奨


「塔が承認した」と俺。「土が中レベルに改善したって。完全に肥沃にするにはもっと有機物がいる」

「有機物って何?」

「植物の残り、皮、分解した葉っぱ。腐って栄養になるもの」

「森に葉っぱはある」

「あるな。でも今日は取りに行かない」


レナは耳の動きで同意した。


芽を覆い終え、最後にもう一度水をやった。小さな緑の葉が水滴に輝く。古代の種の入った鉢は隅に置かれたまま、暗く湿った土で、何の生命の兆しもない。塔は「休眠中、生命力微弱」と言っていた。たぶん、もっと時間が必要なのだろう。

あるいは死んでいるのか。でも二日目で諦めるつもりはなかった。


「よし」と、もう汚れきったズボンで手を拭きながら言った。「あとは待つだけだ」

「待つのは難しい」とレナ。

「料理も待つことだってお前言った」

「そう」

「なら料理を作る」


レナは片眉を上げた。


「作るの?」

「お前が手伝う。俺は見る」

「それって料理?」

「料理を学ぶことだ。それは前提条件だ」


彼女は鼻を鳴らした。でも立ち上がり、厨房へ向かった。


その夜のスープは違った。


最後に残ったタマネギ——ヴァルゲルの商人がおまけにくれた二つ——と、まだたっぷりある石豆を追加で一掴み使った。でも違いを生んだのは香草だった。今度はレナが、正しい瞬間に入れる方法を教えてくれた。マジョラムは最初に、汁に香りをつけるため。タイムは途中で、深みを出すため。セージは最後に、苦くならないように。


「お前、本当に料理できるんだな」と鍋をかき混ぜながら言った。

「生き延びるのはできる。料理はその一部」

「違いは何だ?」

「生き延びるのは死なない最低限をすること。料理は、ちゃんとしたものを作ること」


ぐつぐついう鍋を見る。匂いは良かった。実に良かった。


「これ、ちゃんとしてるか?」と訊いた。

レナは空気の匂いを嗅いだ。

「ちゃんとしてる」


厨房で夕食をとった。木の椀を手に、火が静かにパチパチと鳴るなか。外では夜が落ち、中庭は暗かった——ただリンゴの樹の微かな輝きを除いて。幹の銀色の葉脈が淡い光を放ち、まるで樹は決して完全には眠らないかのようだった。


「明日は受け渡しの日だ」と俺。

「ミリが来る?」

「たぶんな。ガラスの残りを持ってくるって言ってた」

「それとニュースも」

「ああ」


レナは黙った。


「心配してるな」と俺。

「心配じゃない。これは……」彼女は言葉を探した。「……臨戦態勢」

「何かまずいことになった場合に備えて」

「何かが彼女と一緒に来る場合に」


追跡者のことを考えた。森の感覚。首筋のむず痒さ。


「もし来たら、俺たちで対処する」

「あなた、それが単純なことみたいに言う」

「単純じゃない。でも塔は前より強い。厨房、温室、寝室がある。お前は登録されてる。塔の保護が今はお前もカバーしてる」

「それ、盾じゃない」

「始まりだ」


彼女は長いあいだ俺を見つめていた。火が黄色い目の中で踊っている。


「あなた、過労死した人間のくせに妙に楽観的ね」

「一度死ぬと、物事から少し重みがなくなる。あるいは増す。日による」

「今日は?」

「今日はカブが芽を出した」


彼女は答えなかった。でも尾が一度動いた。ゆっくりと。

それだけでも、何かだった。


その夜は、厨房の床では寝なかった。自分の部屋へ向かった——どんな人生でも初めての、初めての本当の自分の部屋。寝台は硬く、藁の敷布団は古臭い匂いがしたが、俺のものだった。窓からは中庭が見え、その向こうに、リンゴの樹が暗闇で輝いているのが見えた。


目を閉じた。

記録がもう一度だけ瞬いた。


『塔の記録』

本日の更新:温室土壌改善(品質:中)/発芽確認(カブ、タマネギ)

推奨事項:有機物の追加収集/警戒レベルをわずかに引き上げ


「警戒レベルを引き上げろ」と小声で読んだ。


なら、塔も何かを感じていたのだ。


外では、森が沈黙していた。沈黙しすぎていた。


でもそれは明日の問題だ。

今日、カブは芽を出した。


そしてそれは、当面のあいだ、十分だった。



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