第10章 ~居住者の登録~
その日残りの時間、レナはあまり口をきかなかった。
敵意のある沈黙じゃない。何かを内側で噛みしめている人間の沈黙だ。ミリがリンゴと新しい契約を抱えて去ったあと、雌狼は中庭に引きこもり、リンゴの樹のそばに座っていた。短剣を膝に置き、黄色い目は赤い果実のたわわな枝のあたりを彷徨っている。尾は動かない——彼女にしては珍しい。耳まで疲れているように見えた。
そっとしておいた。ここ数日で学んだのは、レナは物事を自分の時間で処理するということだった。急かしても、耳が余計に下がるだけだ。
俺は温室の作業に没頭した。
ミリが持ってきたガラスが登録され、記録は修復進捗50%を示していた。まだガラスが足りない——彼女が来週約束してくれたもの——そして本物の肥沃な土も。でも、前日に俺が用意した混ぜ合わせた土は苗床にあり、種は植えられていた。泉の水で一滴ずつ水をやる。濡らしすぎないように。火打ち金は個人的なトロフィーとしてポケットにあった:ついに正しい角度を習得したのだ。
カブの苗床の上に記録が現れた。
**『塔の記録』**
**カブの種子:発芽まで6〜9日(推定)**
**状態:安定**
「カブは安定してるってさ」と、誰も聞いていないと知りつつ声に出した。
**『塔の記録』**
**補足:現在の灌水頻度は適切です**
「そして俺の水やりを承認した」
**『塔の記録』**
**過剰灌水の傾向あり。注意を推奨。**
「そして同じ分でダメ出しもした」
塔の表示板は、同じ段落で俺を褒めて修正できる世界唯一の存在だった。効率は尊敬するが、その経験は嫌いだった。
夜になると、またスープを作った。今度はミリの香草入り——マジョラム、タイム、セージの葉っぱ。沸騰すると、思わず目を閉じてしまう香りが立ち上った。石豆は石らしさが減って豆らしさが増し、玉葱は汁に溶けた。
レナは黙って食べた。二杯。それから三杯目の底を、黒ずんだ汁に答えを探すみたいに見つめていた。
「昨日よりうまい」と俺。
「うん」
「香草が効いた」
「ええ」
「大丈夫か?」
「いいえ」
沈黙。
「話したい?」
「いいえ」
「黙ってろ?」
「そう」
黙った。
彼女が再び何か言うまで、丸一分、火がパチパチと鳴っていた。
「奴らは止まらない」
「わかってる」
「本物の追跡者なの、シン。あてずっぽうの冒険者じゃない。訓練されてる。調教師がいる。たぶん、雇われてる」
「お前の氏族にか?」
彼女は躊躇った。
「わからない。たぶん」
「奴らは何を望んでるんだ?」
「それが最悪」彼女は黄色い目を上げた。「私にもわからない。ただ、戻れないことだけはわかる」
黙った。そこには俺の知らない層があった。灰色狼の氏族。彼女に何が起きたのか。なぜ逃げたのか。なぜあの夜、傷つき一人で俺の扉を叩いたのか。
「話さなくていい」と俺。「でも、決めなきゃいけないことがある」
「何を?」
「ここに残るかどうか」
彼女は俺を見た。
「私はここにいる」
「一時的にな。訪問者として。あの晩に出した許可は翌朝までだった。もうとっくに切れてる」
レナはまばたきした。
「それでもまだここにいる」
「塔は追い出してない。でも登録もしてない。お前は行政上の狭間にいる」微かな笑みを浮かべる。「俺は行政上の狭間の専門家なんだ。何年もそこで働いてた」
「それ、慰めのつもり?」
「冗談だ」
「面白くなかった」
「俺のは全部そうだ」
彼女は椀を床に置き、腕を組んだ。
「『登録する』って、どういうこと?」
「正確にはわからない。でも塔はもう何度か言及してる。『居住者の登録』。居住区。第二階層を開ける条件を探ったとき、その一つが居住設備の稼働だった」
「第二階層を開けるのに私が必要なの?」
「居住者が必要だ。お前じゃなくてもいい。でも今のところ唯一の候補だ」
「それって雇用のお願い?」
「それは……」立ち止まり、言葉を探す。「……公式な共存の」
レナは鼻を鳴らした。笑いじゃない。軽蔑でもない。
「あなた、言葉が下手すぎる」
「『行政上の狭間』を使った。あれには重みがある」
「あった。そして下手だった」
記録が俺たちのあいだに灯った。塔が苛立っているかのように。
**『塔の記録』**
**訪問者レナの一時許可:期限切れ**
**現在の状態:未登録/許可失効中**
**推奨:滞在許可の更新、または住民登録への移行**
「塔が提案してる」と訳した。「訪問者許可を更新するか、本物の居住者になれって」
レナは表示板を読んだ。漢字がわからなくても、その形式は認識できた。
「何が変わるの?」
「さあ。訊いてみる」
表示板に触れる。
「塔。違いを説明しろ」
**『塔の記録』**
**一時滞在許可:**
**期間制限あり(更新必要)**
**エリア制限あり**
**保護レベル:最小**
**塔のリソース使用不可**
**住民登録:**
**期限なし**
**第一階層の居住エリアへのアクセス**
**保護レベル:標準**
**塔のリソース使用可(管理者の承認が必要)**
**居住区の解放条件の一部としてカウント**
声に出して読んだ。言葉が出るにつれて、レナの耳が動く。もうその動きを読む術は学んでいた。立ってじっとしていれば注意。下がれば不信。片方が少し横に向けば……好奇心。
「『保護レベル:標準』」と彼女は繰り返した。「それ、どういう意味?」
「書いてない。でも塔は生きた要塞だ。たぶん、防御を使えるようになるとか。脅威の警報を受け取れるとか。あるいは……」
「あるいは?」
「あるいは、塔がお前を守るってことかもしれない。ただ黙認するんじゃなくて」
レナは黙った。
火がはぜた。鍋が台の上で冷めていく。外では、中庭の空が濃い紫に染まり、最初の星が雲間からのぞいていた。
「私は氏族から逃げた」と彼女が突然言った。声は低いが、しっかりしていた。「名誉ある逃げ方じゃなかった。私は……人を置き去りにした。私のせいで傷ついたかもしれない人たちを。そして今、追跡者が私を探してる」
「自分には残る資格がないと思ってる」
「ここに残ったら、問題も一緒に来る」
「問題はもう来てる。初日の夜に塔を囲んだのを覚えてるか? お前が誰かも知らないうちに」
「あれは、まだ彼らが塔が起動してるって知る前よ」
「今は?」
彼女は躊躇った。
「今は、誰かが塔を開けたって知ってる。もしそれが私だってバレて、管理者が人間だってバレたら……」
「どうなる?」
「誰が追跡者を雇ったかによる。氏族なら、私を連れ戻そうとする。もっと悪い誰かなら……」彼女は最後まで言わなかった。
「もっと悪い誰か?」
「灰色狼氏族が弱るところを見たい人間がいる。逃亡者を交換通貨や囮に使うような連中が」
唾を飲み込んだ。
「じゃあ、お前を登録するのも危険なのか」
「登録することは、私が塔にとって公式に存在すること。誰かが塔を攻略するか、何らかの方法で記録にアクセスすれば、私がここにいるのがバレる」
「登録しなければ?」
「しなければ、期限切れの訪問者のまま。塔が独断で私を追い出すかもしれない。もっと悪いことも」
青い表示板を見る。
「塔。敵が記録にアクセスしたら、居住者のリストを見れるのか?」
**『塔の記録』**
**塔の記録は管理者のみ閲覧可能**
**外部からのアクセスには物理的な接触と管理者権限の承認が必要**
「俺だけが見れるってさ」と訳した。「敵は塔に侵入して俺レベルのアクセスを得る必要がある。それに俺の承認もいる」
「なら安全ね」とレナ。
「多かれ少なかれ」一拍置く。「何がしたい?」
彼女は火を見た。鍋を。空の椀を。厨房の扉を——その向こうには、彼女がここ数日寝ていた簡易寝室がある。俺の寝室だ、実際には。俺が広間の床に移ってから。
「私には資格がない」と彼女はまた言った。
「それは俺が訊いたことじゃない」
「資格があるかは訊いてない。何がしたいか訊いたんだ」
レナは俺を見た。黄色い目が潤んでいた——涙じゃなく、近い何か。疲労か。あるいは蓄積か。
「あなた、難しい質問をする」
「難しい質問をするのは、俺の数少ない特技の一つだ。湯を沸かすのと、自分の家に『許容範囲』って評価されるのと並んでな」
「あなたの家」
「俺たちの」と訂正した。「一時的に。潜在的に。じきに公式に——お前が質問に答えれば」
彼女はうつむいた。
そしてしばらく、そうしていた。
俺は待った。
記録は宙に浮かび、辛抱強く待っていた。塔も待っていた。
「シン」
「何」
「なんで私を入れたの? 最初の夜」
「お前が扉を叩いたから」
「答えになってない」
「怪我してた。それに、俺は扉を閉めるタイプの人間じゃない」
「怖かったはず。見てた」
「今でも怖い。でも、片方がもう片方を無効にはしない」
彼女は顔を上げた。
「あなた、本当に変」
「いつもそれ繰り返すな」
「ずっと本当だから」
立ち上がり、表示板へ歩み寄った。
「受けるか?」
レナは深く息を吸った。
「うん」
「うん、何だ? お前の口で聞く必要がある」
「うん、登録する」
「居住者として」
「居住者として」
「死の塔の」
「それ、もっとマシな名前にできたでしょ」
「取り組んでる」
表示板に触れた。
**『塔の記録』**
**住民登録申請:レナ**
**種族:獣人(灰色狼系統)**
**状態:申請中**
**確認:暫定管理者の承認が必要です**
「最終承認がいるって」
「承認して」
「本当にいいのか?」
「シン」
「何」
「私が気が変わる前に承認して」
承認した。
記録が、かつてないほど強く輝いた。俺の前の表示板だけじゃない——塔の血管が灯った。厨房の壁の青い線。石の隙間。足元の床。塔全体が一度、鼓動したように感じられた。何年も止まっていた心臓が、突然、どうやって打つか思い出したみたいに。
レナは硬直した。
細い光が、最初の夜と同じように、彼女へと走った。でも今度は肩で止まらなかった。彼女を丸ごと包んだ——手首、腰、足首、尾——そして霧のように消散した。
レナは自分の両手を見た。
「今の、何?」
**『塔の記録』**
**住民登録完了**
**名前:レナ**
**種族:獣人(灰色狼系統)**
**状態:第一階層居住者として承認**
**権限:居住区へのアクセス/標準保護/塔リソース使用可(管理者承認下)**
**歓迎します、居住者レナ。**
「ようこそ、居住者レナ」と訳した。
彼女は表示板を見つめていた。
「私……何か感じる」
「何を?」
「塔を。私を……認識してる。前とは違う。前は、黙認されてるよそ者みたいだった。今は、まるで私が……属してるみたい」
「属してるんだ」
「そう言わないで」
「なんで?」
「信じてしまいそうだから」
彼女の目が輝いた。ほんの一瞬。それから顔を背け、くたびれた服の袖で何かを拭った。
何も言わなかった。冗談には限度がある。それくらいは学んでいた。
記録は続いた。
**『塔の記録』**
**居住区:ロック解除**
**第一階層「居住区」が利用可能になりました**
**場所:泉の東側通路を直進**
「居住エリアが解放された」と告げた。「泉の東の廊下だ」
「寝室?」
「たぶんな。見に行こう」
レナは立ち上がった。脚はまだ痛むが、昨日より跛行は少ない。道を照らすために管理ツールを手に取り、まだ完全には探索していない廊下を進んだ。
東の廊下は短かった。突き当たりは両開きの木の扉——それまでずっと閉ざされていた。今は青い線で輝いている。
「開けて」とレナ。
開けた。
扉の向こうは長い広間で、側面に三つの扉があった。寝室だ。簡素だった——石の寝台に藁の敷布団、小さな机、中庭に面した細い窓——でも、本物の部屋だった。広間の床じゃない。貯蔵庫じゃない。部屋だ。
レナは最初の部屋に入った。冷たいが湿ってはいない石の壁に手を走らせる。窓からはリンゴの樹が見え、中庭の暗がりのなかでそよいでいた。
「これ……」彼女は止まった。
「何だ?」
「……本物の部屋」
「ああ」
「窓つき」
「ああ」
「それに寝台」
「それに藁の敷布団。たいしたことじゃない」
彼女は振り返った。
「ここ何週間かで初めてなの。森でも瓦礫でもない屋根は」
「なら、たいしたことだ」
「そう」
レナは寝台に腰掛けた。藁が軺んだ。両手を膝に当て、窓を見つめた。
「ありがとう」
「これで二日で二度目だ。感傷的になってる」
「黙って」
「ここにお前がいてくれて良かった、レナ」
彼女は答えなかった。でも尾が一度動いた。ゆっくりと。左右に。
満足。
彼女を部屋に残し、厨房へ戻った。記録はまだ浮かんでいて、まるで俺の注意を待っているかのようだった。
**『塔の記録』**
**第一階層の施設状態を更新します**
**アクティブ:泉/簡易寝室/貯蔵庫/厨房(部分)/温室(部分)**
**居住区:利用可能(居住者1名)**
**第二階層へのアクセス:進行中(3施設中2施設が条件を満たしました)**
**残り:温室の完全な修復/厨房の完全な回復/居住区の追加登録 のいずれか**
「三施設中二つが稼働中か」と呟いた。「第二階層開くのにあと一つ足りない」
塔はコメントしなかった。
でもその瞬間、塔が満足しているのを感じた。
暖炉の火を消し、自分の部屋へ向かった——ここに来てから初めての自分の部屋。レナのと瓜二つだった。石の寝台、藁の敷布団、細い窓。でも、俺のものだった。
横になり、黒ずんだ木の天井を見つめた。青い光の細い筋が、隙間のあいだを静かに脈打っている。
塔には今、二人の居住者がいた。
部分的に動く厨房。種を植えた温室。商人との契約。そして徘徊する追跡者。
でも、初めて、死の塔は見捨てられた場所には見えなかった。
ゆっくりと思い出されつつある場所に見えた。
目を閉じた。
記録がもう一度だけ瞬いた。
**『塔の記録』**
**本日の更新:住民登録(1名)/居住区開放/温室進捗50%**
**明日の推奨:森林土壌の収集/第二階層の事前偵察**
**状態:良好**
今度は応答しなかった。
塔に独りで喋らせておいた。




