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(完了) 追放先は辺境の廃塔でした   作者: 星海凡夫


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第107章 〜光の名前〜

帰路は不思議なほど穏やかだった。来るときと同じ道、同じ川、同じ山道。しかし空気は違っていた。達成感でも昂揚でもなく、静かな充足感が一行を包んでいた。


カエレンはほとんど口を開かなかったが、その沈黙は悲しみのそれではなかった。むしろ、長いあいだ抱えていた荷物をようやく下ろした人の静けさだった。ゴルンは普段より軽い足取りで金槌を担ぎ、リサンドラはいつもより柔らかな目つきで周囲を見回し、ヴァエリスは青い核を穏やかに脈打たせながら、ときおり空を振り返っては微笑んでいた。


「何を見てるんだ」と俺は尋ねた。


「未完の者を。まだ遠くからだけど、感じるの。彼が『ありがとう』を繰り返してる。何度も、何度も」


「言葉を覚えたての子どもみたいだな」


「そう。まさに子ども。生まれたばかりの言葉で、世界に挨拶してる」


夕方、再生の塔の門が見えてきた。リンゴの木が夕日に照らされて黄金と銀に輝き、光り草の防護帯がいつも通り瞬いていた。そして門の前には、レナがヒカリを抱っこ紐で胸に抱えて立っていた。後ろにはアルテア、マリスがカイを抱き、双子、セラ、ヴェラス、エリオン、そして守護者たち。


「戻ったな」とレナは俺の顔を見るなり言った。


「戻った」


「怪我はないか」


「かすり傷さえない」


「ならいい」彼女はヒカリをそっと俺の腕に渡した。「この子がずっと、お前の声を待ってた」


ヒカリは琥珀色の目を開け、まだ焦点の合わない視線を俺に向けた。小さなしっぽがぴくりと動いた。それだけで十分だった。


夕食の席で、俺は皆の前で今回の遠征の報告を簡単に済ませた。未完の者が完全に目覚めたこと、彼が言葉を取り戻し始めていること、そしていずれこの塔を訪れたいと望んでいること。そして何より、カエレンが父親の過ちを正したこと。


「やったのか」とゴルンが低く唸るように言った。「本当にやったのか」


「やった」とカエレンが静かに答えた。「七十年かかったが、ようやく」


「お前の父も、どこかで安堵しているだろう」とヴェラスが言った。


「そうであってほしい」


セラが特別に焼いた蜂蜜パンがテーブルに並び、アルテアが祝いのハーブ茶を注いで回った。双子たちは「未完の人ってどんな声?」「光ってるの?」「触れるの?」と矢継ぎ早に質問し、カエレンはその一つひとつに丁寧に答えていた。


「彼の声は、遠くの鐘のように響く。体はまだ完全じゃないが、光でできている。そして――そう、触れられる。私が触れたとき、彼は私の手を握り返した」


「すごい!」とセリが叫んだ。


「私も会いたい!」とリーラが続いた。


「いつか、きっと会えるさ」とカエレンは優しく微笑んだ。その顔は、つい先日まで孤独に苛まれていた老人のものとは思えないほど、穏やかで満ち足りていた。


食後、俺は中庭のリンゴの木の下でレナと並んで座った。ヒカリは彼女の腕の中で眠り、尻尾がときおり小さく揺れていた。


「お前は行かなかったな」とレナが言った。「今回は」


「行かなかった」


「後悔してるか」


「していない。俺の役目はここだった。お前と、この子と、塔を守ることだ」


彼女はしばらく黙り込み、それから俺の肩に頭を凭せかけた。


「昔のお前なら、無理をしてでも行った。何でも自分でやろうとした」


「昔の俺は馬鹿だった」


「今は?」


「今は、少しマシになった」


彼女は鼻を鳴らした。


「少しだけな」


「それで十分だ」


月が高く昇る頃、カエレンは一人で泉のそばに座っていた。水面に映る星を見つめ、古い指でそっと水を撫でている。俺は隣に腰を下ろし、しばらく何も言わずにいた。


「父はこの泉を知っていた」と彼はぽつりと言った。「日記に書いてあった。『塔の水は生きている。飲む者の疲れを癒し、望む者の心を映す』と」


「それは詩的だな」


「父は詩人ではなかった。むしろ逆だ。でも最期の日々、彼は美しいものを求めるようになった。失ったものを埋めるように」


「お前は彼を許せるか」


「もう許した。今日、未完の者に欠片を返したとき、許した。怒りはどこかに消えた。残ったのは、ただの――息子としての愛だけだ」


彼は顔を上げ、星を見た。


「シン、私はここに残りたい」


「もちろんだ。最初からそのつもりだった」


「そうじゃない。正式に、住人として登録してほしい。鍵守としてではなく、ただのカエレンとして」


「明日にでも手続きをしよう」


彼は微笑み、立ち上がった。


「ありがとう。父が果たせなかったことを、私はここで果たす。守るべき塔と、育てるべき庭と、見守るべき子供たちがいる。老人には十分すぎるほどだ」


その後、自室に戻る廊下で、アルテアとすれ違った。彼女は何も言わずに俺の手を取ると、そっと唇を重ねた。


「約束のキスです。ちゃんとしたやつ」


「覚えてたのか」


「忘れるわけがない。留守のあいだ、毎日、このキスをどうしようか考えてた」


「練習か?」


「想像です」彼女は悪戯っぽく微笑んだ。「治癒師は準備が大事なの」


それから彼女は俺の手を離し、一歩下がった。


「今夜はレナのところへ行ってあげて。彼女、ずっとあなたの帰りを待ってた。口には出さないけど、耳がいつもより少しだけ垂れてた」


「耳でわかるのか」


「ええ。観察は私の仕事だから」


部屋に戻る途中、窓の外で光り草がいつもより明るく輝いているのに気づいた。まるで塔全体が、カエレンの到着と、未完の者の目覚めと、そして新しい未来を祝っているかのようだった。明日は新しい日。新しい始まり。でも今夜は、ここにいる。それで十分だった。

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