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追放先は辺境の廃塔でした   作者: 星海凡夫


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第105章 〜旅立つ前に〜


夜が明けると、塔は静かな活気に包まれていた。遠征の準備はもう何度も繰り返されてきたことで、今では皆が自分の役割を心得ていた。ゴルンは星鉄の保存食と護符を人数分用意し、アルテアは救急袋を新しく詰め直し、セラは外套のほつれを繕い、ヴェラスは人数分の杖を削り、双子たちは「また行くの?」と不満げな顔をしながらも「お土産は?」と付け加えるのを忘れなかった。


しかし今回は、違うこともあった。カエレンがいた。


彼は中庭のリンゴの木の下に座り、あの結晶を手のひらに乗せてじっと見つめていた。父親が何十年も前に隠し、息子である彼がつい昨日取り戻したばかりの欠片だった。黄昏の塔で俺たちが出会った、意識を持ちかけた未完の守護者を目覚めさせるための、最後の欠片。


「休めたか」と俺は隣に腰を下ろしながら尋ねた。


「少しだけ。あまり眠れなかった」


「興奮しているのか、それとも不安か」


「その両方だ」彼は結晶をそっと布袋に戻した。「七十年近く待ってきた。あと数日でそれが終わる。父の過ちが正される。そのことが、私の想像を超えている」


「いいことなんだろう」


「そうだ。しかし、いいことというのは、時に恐ろしくもある」


隣で黙ってリンゴの木を見上げていると、朝日が黒ずんだ幹に当たり、銀色の葉脈が輝き始めた。


「カエレン、俺はお前の父親を知らない。日記と、お前の話でしか知らない。でも、一つだけわかることがある」



「彼はお前を愛していた。そうでなければ、息子だけが欠片を取り戻せるなんて仕掛けは作らなかった。それは呪いじゃない。信頼だ。お前にだけは正せるという、信頼」


彼は長い沈黙のあと、目を閉じてうなずいた。瞼の裏で何かが揺れているようだった。


その日の午後、俺は居間に皆を集めた。旅立つ者も残る者も、全員が長いテーブルを囲んだ。議題は単純だった。いつ出発するか、誰が行くか、どうやって未完の者を目覚めさせるか、そしてそのあいだ塔をどう守るか。


「八人で行く」と俺は指を折りながら言った。「カエレン、ヴァエリス、リサンドラ、シルフィー、ライラ、ミリ、ゴルン、そして俺。前回の遠征から戻ったばかりの者もいる。無理をさせるつもりはない。行きたい者だけが行けばいい」


「無理じゃない」とリサンドラが即座に言った。「むしろ、最後まで見届けたい」


「私も同じだ」とライラが続いた。「これは歴史的な瞬間になる。記録しないわけにはいかない」


「物資は前回の教訓を生かして、より軽く、より効率的にした」とミリが帳簿を開いて言った。「保存食は七日分。護符は人数分。包帯と消毒薬も追加してある」


「俺の金槌は岩も封印も砕ける」とゴルンが低く唸るように言った。「もし何かが邪魔をするなら、俺がやる」


「私は空から偵察する」とシルフィーが翼を広げた。「カエレンと欠片を安全に運ぶのが最優先だ」


「私は彼と話す」とヴァエリスが静かに言った。彼女の青い核は穏やかに脈打っていた。「未完の者は誰とも話したことがない。孤独のなかで目覚めようとしている。私にはその感覚がわかる」


「なら決まりだ。出発は明後日。明日は準備と休息に充てる。今日は、ここで一緒に過ごそう」


反対する者はいなかった。


その夜、夕食のあと、俺はレナの部屋を訪ねた。扉は少し開いていて、彼女は寝台に座り、ヒカリに授乳していた。琥珀色の目が俺を見上げ、尻尾がゆっくりと揺れた。


「また行くんだな」


「ああ」


「今度は危険はないのか」


「わからない。でも、戦闘にはならないと思う。今回は修復だ。過ちを正しに行く」


「ならいい」彼女はヒカリをそっと肩に凭れさせ、小さな背中を優しく叩いた。「私はここにいる。この子と一緒に」


「寂しいか」


「少し。でも、前よりはマシだ。お前はいつも戻ってくる。それが分かっているから」


「もちろんだ」


「約束しろ」


「約束する」


彼女はうなずき、しばらく黙ってから口を開いた。


「シン、行く前に、この子に何か言ってやってくれ」


「何を?」


「何でもいい。父親としての言葉を」


俺は彼女の隣に座り、ヒカリの小さな頭にそっと手を置いた。まだ目は開かず、銀色の産毛が柔らかく揺れていた。


「ヒカリ」と呼びかけた。「父さんは明日、旅に出る。すぐに戻る。戻ったら、また抱っこする。約束だ」


ヒカリは何も言わなかった。でも、小さな指が俺の人差し指をぎゅっと握りしめた。それが返事だった。


その後、泉のそばでマリスを訪ねると、彼女はカイを膝に乗せ、水に映る星を見つめていた。


「シン」と呼ばれた。「あなたも星を見に来たの」


「ああ。それと、行く前に挨拶を」


「私は心配していない。水はいつも、あなたが戻ってくると教えてくれる」


「水は何でも知ってるんだな」


「何でもは知らない。でも、信頼は知ってる」彼女はカイの額にそっと口づけた。「この子も知ってる。父親が信頼できる人だって」


「カイ、父さんはすぐ戻る」


カイは青い目を見開き、何かを理解したかのように静かに瞬きをした。マリスは微笑んで、水の精の子守歌を口ずさんだ。


自室に戻ると、枕の上に小さな包みが置いてあった。アルテアからの乾燥ハーブの枕と、一通の手紙。


「シンへ。今度は遠くへ行かないと聞きました。それでも、これを枕の下に敷いて寝てください。旅のあいだ、少しでもよく眠れますように。戻ったら、ちゃんとしたキスを。――アルテア」


俺はその枕を頭の下に敷き、目を閉じた。ラベンダーとカモミールの香りが部屋いっぱいに広がった。外ではリンゴの木が月明かりに輝き、光り草の防護帯が森を静かに照らしていた。


明後日は旅立ち。カエレンの父親が遺した過ちを正し、百年以上孤独に眠っていた未完の守護者を目覚めさせる旅。準備は整い、仲間は揃い、目的は明確だった。


でも今夜は、ただ眠るだけ。それで十分だった。

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