第100章 〜新しい日々〜
ヒカリとカイが生まれてから、三ヶ月が過ぎた。
塔は新しいリズムを見つけていた。以前とは違うリズムだった。以前は遠征のリズム、準備のリズム、発見と帰還のリズム。今はもっと小さく、もっと親密なリズム。授乳、おむつ、子守歌、まどろみ。そして夜中の泣き声で飛び起きること。
「これが幸せか」と、ある夜中、俺は半分寝ぼけながらつぶやいた。ヒカリが隣の部屋で泣き、カイが泉のそばでマリスに抱かれてぐずっていた。
「幸せの一つだ」と隣で寝返りを打ったアルテアが答えた。「睡眠不足も込みで」
「睡眠不足は幸せの一部か」
「母親に言わせれば、そうらしい」
俺は立ち上がり、レナの部屋を覗いた。彼女はもう起きていて、ヒカリを抱き上げ、低くハミングしていた。それは彼女のクランの古い子守歌で、俺には理解できない言葉だったが、旋律は穏やかで、ヒカリはすぐに泣き止んだ。
「寝てていい」とレナは視線を上げずに言った。
「寝てた。でも起きた」
「なら、茶でも入れてくれ」
「了解」
台所に向かう廊下で、マリスとすれ違った。彼女はカイを肩に凭れさせ、小さな背中を優しく叩いていた。水の髪は今では完全に銀色に戻り、ほんのわずかに金色が混じるだけだった。
「ゲップが出ない」と彼女は困ったように言った。
「縦に抱いて、少し歩くといい。アルテアが言ってた」
「もう三十分も歩いてる」
「なら、歌を歌うんだ。お前の声は水みたいだから、たぶん効く」
彼女は微かに笑い、水の精の古い子守歌を口ずさみながら廊下を歩き続けた。その歌は波のように響き、塔全体を包み込んだ。
台所では、セラがすでに起きていて、朝のパンを仕込んでいた。双子のセリとリーラはテーブルの下で眠っていて、どうやら夜中に起き出して、また寝てしまったらしい。
「おはよう」とセラは粉まみれの手で挨拶した。「また夜泣き?」
「今度は二人同時じゃなかった。進歩だ」
「進歩は小さくても進歩よ。私も双子のときは、毎晩が戦争だった」
「どうやって乗り切った」
「乗り切らなかった。ただ、嵐が過ぎるのを待った。子育ても同じ。待って、耐えて、ときどき泣く」
「泣くのは誰だ」
「親も、子も」彼女は笑った。「でも、そのうちに笑顔が出てくる。最初の笑顔を見たら、全部忘れる」
俺は茶を淹れ、レナの部屋に戻った。彼女はヒカリを胸に抱いたまま窓辺に座り、中庭のリンゴの木を見つめていた。夜明け前の空に、木は黄金と銀の光を放ち、小さな光り草たちが防護帯の周りで瞬いていた。
「茶だ」
「ありがとう」
俺は彼女の隣に座った。ヒカリは目を閉じ、小さなしっぽが毛布の下でぴくぴく動いていた。耳は母親より少し大きく、髪は銀色で、指は驚くほど長く繊細だった。将来、剣を握るのにちょうどいい、とレナは言った。俺はペンを握る手でもいいと思ったが、まだどちらでも構わなかった。
「なあ、レナ」
「なんだ」
「お前は幸せか」
彼女は答えず、しばらく窓の外を見つめていた。それから、ゆっくりと俺のほうを向いた。
「幸せって、こういうものか」
「多分な」
「なら、幸せだ」彼女はまた窓の外に視線を戻した。「でも、それを大声で言うのは、まだ慣れない」
「言わなくていい。分かってる」
「分かってるのか」
「ああ。尻尾が動くから」
彼女は自分の尻尾を見下ろし、それが確かに左に揺れているのを確認して、小さく鼻を鳴らした。
「ばか」
「知ってる」
朝が来て、塔はいつものように動き始めた。ゴルンは鍛冶場で何かを叩き、ヴェラスは新しい椅子を削り、セラは機を織り、双子たちは中庭を走り回っていた。リサンドラとシルフィーは空中訓練に出かけ、ライラは図書館で何やら書き続け、ミリは帳簿を開き、ヴァエリスは光り草の世話をしていた。マリスは泉のそばでカイを抱き、エリオンは守護者たちと共に巡回を続けていた。
そして俺は、茶を飲みながら、この塔がどう変わったかを考えていた。
一年前、ここには俺とレナしかいなかった。リンゴと水しかなかった。今は八人の女性、二人の子ども、半巨人、大工、機織り、双子、精霊、守護者、古代の衛士。市場があり、村があり、同盟があり、未来があった。
午後、ライラが俺を図書館に呼び出した。彼女の机の上には、見慣れない羊皮紙が広げられ、古代のルーン文字が浮かび上がっていた。
「何か見つけたのか」
「はい。例の『黄昏の塔』の記録をさらに詳しく調べました。すると興味深いことが」
「どんな」
「あの塔の未完の守護者は、人間が創ろうとした最初の試みでした。しかし、彼らが使った素材の中に、『神の欠片』に似たものが含まれていた形跡があります」
「欠片を?」
「ええ。ただし歪んではいません。未完成のまま、眠っているのです。そして、あなたが塔の中で『あなたは存在する、それで十分だ』と声をかけたことで、何かが動き始めました。微弱ですが、マナの流れが変わりました。まるで応答しようとしているかのように」
「応答?」
「まだ言葉にはなりません。でも、これは……最初の一歩かもしれません。人間が創った守護者が、今、目覚めの兆しを見せている。そのためには、もっと多くの接触と、もっと多くの時間が必要でしょう」
「つまり、もう一度あの塔に行く必要があるのか」
「かもしれない。でも急ぎではありません。今はまだ赤ん坊たちが小さい。ただ、いつか」
「いつか」と俺は繰り返した。
夕方、俺は市場の屋根に上がった。三ヶ月ぶりの屋根だった。以前は毎晩のようにここで考え事をしていたが、子育てが始まってからは、なかなか時間が取れなかった。
空は茜色に染まり、最初の星が見え始めていた。光り草の防護帯が輝き、守護者たちが巡回していた。遠くで、鍛冶場の金槌がまだ響いていた。
「久しぶりにここに来たな」
声の主はレナだった。彼女はヒカリを抱っこ紐で胸に抱え、ゆっくりと屋根に上がってきた。
「お前こそ、赤ん坊を連れて大丈夫か」
「大丈夫だ。風は冷たくない。それに、この子も空気に当てたほうがいい」
「訓練の一環か」
「当然だ」彼女は俺の隣に腰を下ろした。ヒカリは目を開け、まだ焦点の合わない琥珀色の瞳で空を見つめていた。
しばらく沈黙が続いた。
「なあ、シン」
「なんだ」
「これから、どうする」
「どうするとは」
「ライラから聞いた。黄昏の塔の守護者が応答し始めたって。それに、他の塔の記録もまだ全部は調べ終わっていない。やることは山積みだ」
「そうだな」
「でも、私はしばらく遠征には行けない。この子がもう少し大きくなるまでは」
「誰もお前に行けとは言わない」
「分かってる。でも、置いていかれるのは嫌だ」
「置いていかない。遠征は当分ない。今は、塔を大きくすること。この子たちを育てること。それで十分だ」
「十分か」
「十分だ」俺は彼女の手を握った。「世界を救うのは、少し休憩だ」
彼女の尻尾が左に揺れ、口元がかすかに動いた。
その夜、台所の大きなテーブルは、いつも以上に賑やかだった。ヒカリとカイは、代わる代わる皆の腕の中を渡り歩き、双子たちは「私が抱っこする!」と競い合い、ゴルンは自分が鍛えた金属のガラガラを手渡し、ヴェラスは木彫りの人形をプレゼントした。
「まるで小さな市場だな」と俺は言った。
「市場ではなく、家族です」とミリが帳簿を閉じながら答えた。
「それは帳簿に書けるか」
「いいえ。でも、ここに」彼女は自分の胸を指さした。「これが一番正確な帳簿です」
ヴァエリスが宙に浮かび、青い光を子どもたちの上に降り注がせた。マリスが静かに子守歌を口ずさみ、シルフィーが翼で優しく風を送り、ライラがすべてを観察し、リサンドラが見守り、アルテアが全員にお茶を注いで回った。
俺はテーブルの端に座り、この光景を見つめていた。
一年前には想像もできなかった光景だった。過労死したサラリーマンが、異世界で八人の女性と二人の子どもと、塔と、市場と、同盟と、未来を持っている。時々、これはまだ夢の中なんじゃないかと思う。だが、夢にしては細部が多すぎる。おむつの匂いも、夜泣きの疲れも、全部が本物だ。
「何を考えてるの」とアルテアが隣に座りながら尋ねた。
「夢じゃないんだな、と思って」
「夢じゃないわ。現実よ。おむつも込みで」
「それは現実の一番リアルな部分だ」
彼女は微笑み、そっと俺の手に触れた。
「これからも、もっとリアルになる。私は、その準備をしてる」
「何の準備だ」
「私もいつか、ああなりたい」彼女は子どもたちを見つめた。「母親に」
「いつか」
「いつか。約束よ」
「約束だ」
彼女は俺の肩に頭を凭せかけ、しばらくそのままだった。リンゴの木が星の下で輝き、光り草が脈打ち、塔が呼吸していた。明日は新しい日。新しい発見、新しい挑戦、新しい喜び。でも今夜は、ただここにいる。それで十分だった。




