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2043 ーリテラ・ノヴァの予言ー  作者: 砂東 塩
Chapter8 Deeeeep解散予言
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#31 Deeeeep解散予言

『今年の夏至(6月21日sun)に我らがアイドルHが不祥事を起こしてグループは解散の危機を迎える?

 #AI翻案抜粋  #AI翻案 #ハヤト文体

 2043年6月16日・2:48』


 Sheeeeep★Oracleのリンクをたどると、この予言文を投稿したのは翻案予言botではなく、『aiの予言』という、6月にできたばかりのアカウント。この予言文以前に投稿されたポストはふたつだけだ。


『aiの予言始めました。2043年6月14日・2:06』

『タロットカードを使ってAI翻案抜粋の予言解釈をしていきます。2043年6月14日・2:08』


 そして、初めて投稿した予言文がバズった。内容と、付記されたタグを考えるとそれは当然の結果だった。


『aiの予言』が引用リポストした投稿は『LINion』というアカウントのもので、他のAI翻案抜粋の投稿とは少し様子が違っている。

 

『某コミュで予言だって話題になってるけど、これってやっぱりあの人気アイドルに関する予言?

 みんなどう思う? #AI翻案抜粋

>ここ数年で最も暑かったその夏のはじまりに、深く沈んだ疾風は散り散りになって消滅したのだった。かつて空を覆った五色の虹は姿をくらまし、人々は地を掘り返し探したが、見つかる欠片はどれも虹とは言い難い、手垢のついたガラクタばかり。2043年6月15日・0:54』


 この投稿を読む限り、投稿者と翻案生成者は別。〝某コミュ〟に書き込まれたAI翻案抜粋文を、『LINion』が勝手に、もしくは翻案生成者の許諾を得てPitterに投稿したということだ。


 Sheeeeep★Oracleに、いつ予言投稿と予言元のAI翻案抜粋が掲載されたのかは不明。16日の朝に目覚めて、ベッドの中で習慣的にDチャットを開いたら、蒼君から『確認してください』とSheeeeep★Oracleのリンクが届いていた。その時にはサイト掲示板だけでなく、Pitterでもすっかり大騒ぎになっていたのだった。


 Pitterトレンドには『Deeeeep解散』『ハヤト』『夏至の予言』と、関連ワードがずらりと並び、それらと一緒に『スカイアリーナ』という言葉もある。予言にある夏至――2043年6月21日の日曜日に、Deeeeepのスカイアリーナライブ『Deeeeep サマー・エクスプロージョン!』が控えているからだ。


 関連ワードで検索してざっと眺めただけでも、あちこちでDeeeeepファンが不安の声をあげ、野次馬とAIアンチが予言に翻弄されるファンを冷やかし、口汚い言葉の応酬が繰り広げられていた。

 

『Deeeeep解散? ハヤトは何やらかすんかな?』

『一世を風靡した5人組アイドルは雲隠れするらしい』

『これはスキャンダルの匂い』

『ハヤトの不祥事ならAI翻案絡みだろw』

『人々は地を掘り返し→メディアは過去を暴くのに躍起になる

 見つかるのは手垢のついたガラクタ→ハヤトがパクリでもしたか?』

『ハヤトの本は全部AIが書いてたとか?

 執筆にAI使うって公言してたはず』

『ハヤトは自分で書いてる!

 デマ拡散やめて(ハヤト密着動画添付)』

『動画もAIで作れるの知らないくらい情弱ですか?』 


 ほんの1分ほど眺めるだけでもうんざりし、翻案予言botの様子を確認することにした。


 最新投稿は『七月、大都市に大停電が起きる』という例の『漆黒の夜』の予言。数日前の予言投稿のインプレッション数が見ている間にも増えていくのは、私のようにDeeeeep解散予言を見て元祖翻案予言アカウントを確認しにきたユーザーが他にもいるということだ。翻案予言botのフォロワーは5万を超えている。


 通勤電車の中でもずっと動向を見守っていたけれど、Sheeeeep★Oracleはアクセス集中によるものか、ずいぶん動作が遅くなっていた。


 そして、出勤してすぐ小会議室に集まるように合田部長から連絡があった。


 通常の会議室の半分以下の大きさの小会議室。そこに集まったのは、キュレ部から私と糸井部長、9階から合田部長と蒼君、カンサポ部からは小山内さんの計5人。前回の臨時会議以来、予言対応にあたっている主要メンバーだ。


 佐伯部長は昨日から東都に出張中だった。Pitterを見て合田部長に指示を送ってきたということだが、その内容はふたつ。


 ひとつは、リテラ・ノヴァ公式Pitterで改めて予言への注意喚起をすること。もうひとつは、予言元の翻案抜粋文がDRIデータにあるかどうか調べ、必要ならスターライト・ネクストを直接訪問して状況を説明するように――ということ。


 集まったメンバーはテーブルを囲んで座っていた。佐伯部長がいないからか普段の会議より寛いだ雰囲気で、合田部長は足を組み、蒼君のノートPCをのぞき込んでいる。ふたりが見ている画面は、壁掛けモニターに同じものが映し出されていた。今回の予言元となったAI翻案抜粋のPitter投稿だ。


 糸井部長は椅子を斜めに引いてモニターをながめ、そしてAIチームのふたりを振り返る。


「それで、この文章はコモンズ・ギャラリーに該当するものがあったんですか?」


 蒼君はPitterを開いたのとは別のウィンドウで翻案抜粋文の解析を行っており、糸井部長の質問には合田部長が答える。


「ありませんでした。つまり、うちで生成したか確認しようがないってことです。

 予言文に『#AI翻案』と 『#ハヤト文体』というタグがついていることもあり、Pitter上ではリテラ・ノヴァに言及する投稿もあるようですが、ごく少数です。ほとんどがショッキングな予言内容を冷やかしたり、悲しんだりするものですね。

 佐伯部長からは再度の注意喚起を指示されていますが、Deeeeep解散予言に直接言及しての注意喚起はしないほうがいいと思います。火に油を注ぎかねませんから。なので、リテラ・ノヴァサイト上の注意喚起専用ページに誘導する形で公式Pitterに定型文を投稿するのが無難でしょう。それ以上深く踏み込んだ注意喚起をするとなると、SLNスターライト・ネクストとの摺合せがまず先だが――。

 本宮さん、SLNとは連絡をとったのかな?」


「いえ。連絡するにしてもある程度の状況を把握して、DRIの立場を明確にしてからの方がいいと思って」


 私の返答に、合田部長は「だな」とうなずいて蒼君のPC画面に目をやる。


「うちだから提供できる情報もある。コモンズ・データにはありませんでした――だけじゃ、何の役にも立たないからな。

 このAI翻案抜粋だけでなく、うちで調べられることは調べて情報提供し、当面の対応はSLNに任せておくのがいいんじゃないかって、惣領とは話してたんですが、糸井部長はどう思います?」


 そうですね、と糸井部長は壁掛けモニターに表示されたままの予言文を見つめる。


「Deeeeepのライブは次の日曜ですよね。慌ただしく対応されてる真っ最中でしょうし、私も合田部長の意見に賛成です」


「じゃあ、まあ、惣領が分析終えたらその結果をSLNとも共有して、協力できることがあったらするということにしましょうか」


 全員がそれに賛同したが、結局それは、今回の騒ぎにDRIがさほど役に立てることがないという意味でもあった。


 心配なのはハヤト君のことだ。彼のことだからまた自分を責めているに違いない。そして、自分が非難されることより、Deeeeepメンバーやリテラ・ノヴァに迷惑をかけるのではないかと気に病んでいることだろう。


 考えていたことが顔に出たのか、隣の小山内さんが「やりきれないですよね」と、私の心のうちを代弁した。さらにもう一度、「やりきれません」と自分の感情を乗せて怒りを露わにする。


「通勤中、電車の中でもヒソヒソ話してる人がいたんです。面白半分で、冷やかすみたいに。Deeeeepのファンでもなさそうだったし、予言を信じてるわけでもないみたいだったのに、簡単にぽんぽんリポストするんですよ!」


 最近、小山内さんが発言を躊躇うことはほとんどなくなってきている。合田部長はその変化を好ましく見守っているようだった。


「小山内さん、他人のスマホの覗き見は感心しないなあ」と、からかうように口にする。


「違います。たまたま見えたんです。話し声は勝手に聞こえてくるし、ハヤトって聞こえたらつい目がいっちゃうじゃないですか。PitterではDeeeeepファンが予言に踊らされてるし、こんな状態のままライブの日が来たらどんな騒ぎになるのか心配です」


「たしかに心配だね。スターライト・ネクストでも対応策は考えてるだろうけど」


 糸井部長が憂うように眉間をぐっと寄せた。


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