2. 復讐の進撃
数年後。 大陸の勢力図は塗り替えられていた。
まずペオニア帝国が、龍魔王と四天龍魔が率いる一万の魔獣軍によって灰燼に帰した。次に、援軍を拒んだドランゴ王国。大気には瘴気が溢れ、絶望した獣人たちは次々と魔獣化し、共食いの果てに滅亡した。
龍魔王・飛龍の魔獣軍勢は、いまや五万を超えていた。
次の標的は、裏切りの国トレミエール。
トレミエール王は形ばかりの謝罪と和平交渉を試みるが、その内容は「将軍の独断による裏切りだった」という卑劣な言い訳に終始していた。
その裏で、彼らは禁忌の「勇者召喚」を強行し、隣国アプリコット王国との同盟を画策。戦略的な時間稼ぎにより、着々と龍魔王討伐の準備を整えていた。
召喚されたのは、江戸の世から現れた五人の勇者。
彼らは魔獣討伐でレベルを上げ、アプリコット王国の王女プラムとも親交を深めていた。
竹蔵を筆頭とする五人の勇者、そしてアプリコット王国の千の弓兵隊、トレミエール・アプリコット連合の十万を超える竹槍部隊が、カグナール領へと進軍を開始する。
3. 決戦、そして虚空へ
多大な犠牲を払い、連合軍はついにカグナール領主城を包囲した。
江戸の勇者――竹蔵、松彦、梅吉、お松、お梅。
彼らは、エルフの弓隊が放つ魔法を付与された竹矢が切り開いた道を決死の覚悟で突破し、ついに最奥の間で龍魔王、そして四天龍魔と対峙した。
睨み合いは数秒。だが、それで十分だった。
「剣神」青龍には、剣豪・松彦。
「拳聖」賢龍には、拳王・梅吉。
「魔道師」昇龍には、祈祷師・お松。
「ビーストテイマー」飛龍には、式神使い・お梅。
そして、サンカの秘蔵っ子・竹蔵が、龍魔王と激突した。
竹蔵がマジックバックルから繰り出す竹槍は、龍魔王の鉤爪によってことごとく裂かれ、辺りには竹ひごが無数に散らばる。
死闘は数刻に及んだ。全員が血反吐を吐き、気力だけで立っている惨状だ。
さらに四天龍魔は、勇者たちの連携を乱すべく、彼らの容姿や魔力を模倣。乱戦の中、竹蔵は仲間が本物かどうかの判断すら危うい状況に追い込まれていた。
やがて、一人、また一人と戦士たちが倒れていく。
だが、生き残った「仲間?かどうか」たちが、あろうことか竹蔵の命を狙い始めた。
竹蔵は知らなかった。勇者たちは召喚の際、王女の手によって『絶対遵守の理(真名縛り)』を刻まれていたのだ。その呪いは、「龍魔王を倒した後、勇者同士で殺し合え」という残酷なもの。
目の前に立つのは、本物の仲間か、それとも姿を模した龍魔か。極限状態の竹蔵に、もはや判別は不可能だった。
「……やるしかねぇか」
僅かな隙を突き、竹蔵は口に含んでいた「サンカの秘薬」を、同じく口内に隠し持った吹き竹で全員の首元へと放った。
魔力も毒も持たないそれは、誰にも察知されない。
同時に、竹蔵は密かに「毒蜂」を放つ。竹槍の風切り音はハチの羽音にそっくりで、件のハチは羽音を消し、確実に標的へと接近させる。
『毒針』。
女王バチのフェロモンを抽出した薬に誘われ、蜂が毒針を突き立てる。天然素材の強力な麻痺毒が、龍魔王と偽勇者たち?の動きを止めた。
刹那、竹蔵は足元に散らばる無数の「竹ひご」に手を触れた。
「錬成――『籠獄』ッ!!」
魔力を吸収した竹ひごが光を放ち、一瞬にして巨大な籠へと編み上がる。龍魔王、そして四つの影を閉じ込めた「竹籠」は、中の魔力を吸い上げ、脱出不能の監獄と化した。
竹蔵にもまた、サンカの「シノガラの施術」により真名による呪いが刻まれていた。本来ならば、サンカの掟「ハタムラ」に従い、冷徹に全てを抹殺するはずだった。
だが、彼が選んだのは「永遠の幽閉」という名の共生だった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
帝国と王国を蹂躙し、ついに裏切りの国トレミエールへと迫る龍魔王の軍勢。
しかし、そこで対峙するのは……まさかの「江戸時代から来たサンカの勇者」たちです。
ファンタジー世界の魔法軍勢に対し、竹蔵たちが「竹」を武器にどう立ち向かうのか。
次回の最終回、すべての伏線が「あの物語」へと繋がります。




