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サンカの影 秘密結社『シノガラ』と血の掟(ハタムラ)

――教師・秋山 side――

 表の顔は、千葉県立華嶺高校の「美人教師」

 だがその正体は、サンカの秘密結社『シノガラ』に所属するエージェントだ。私は任務のため、ある一人の生徒――竹内巧を監視すべく、この高校に潜り込んでいる。

 竹内巧。

 一見、何の取り柄もない無害な少年に見えるが、かつてサンカの育成機関で見せた彼の成績は「伝説級」だった。

 三百年前、サンカの天才と謳われた『竹蔵たけぞう』。その再来とまで称される身体能力に加え、隠密術、忍具の知識、戦場での駆け引き――そのどれもが、当時の教官たちの理解を超えていたのだ。

 だが、我らサンカには『ハタムラ(掟)』という絶対の法が存在する。

 日常社会に紛れる際、その強すぎる知識と能力は特殊な薬品で封印され、身体能力さえも弱体化させられる。

 サンカに一生の忠誠を誓い、その存在を外界に漏らしてはならない。私利私欲のために技を使うことも許されない。

 もし『ハタムラ』を破れば、待っているのは等しく「死」のみ。

 私の使命は、彼が記憶を取り戻さないよう監視し、万が一彼が「牙」を剥くようなことがあれば、この手で処分することにある。

 今回の修学旅行の班編成も、私が裏で糸を引いた。

 巧をリーダーという目立つ立場に置かず、あくまで『モブ』として埋没させる。そうすれば、彼が力を使う機会など訪れないはずだった。

 ……だが、計算が狂った。

 嵐山の『竹林の小径』。『隠密』を使って班の後方を追っていた私は、信じがたい光景を目にしたのだ。

 巧たちの足元に浮かび上がる、禍々しい幾何学模様。光に包まれると彼ら六人の姿はかき消えるように消失していた。

「……逃がさないわよ、竹内巧」

 何が起こって、何者かの仕業だとしても関係ない。

 任務は継続だ。私は迷うことなく、消えゆく残光の渦へと身を投じた。

◇ ◇ ◇

 俺の正体。それは、戸籍を持たない幻の山の民「サンカ」の末裔であり、秘密結社「隠密族シノガラ」が育て上げた――生ける凶器だ。

「サンカ」という言葉を知る者は少ない。

 その起源は神話の時代まで遡る。出雲の国譲りにおいて大和族(天津神)に敗れ、山へと逃れた古代出雲王国の生き残り。大和との混血を拒み、先住民族の純血を守り続けた孤高の民。それがサンカの先祖だ。

 彼らは「トヨクニ文字」という独自の神代文字を操り、「ハタムラ」という血の掟を尊守した。部外者への口外は死を意味する。またその存在を知った者が待っているのは死。そんな閉鎖環境で、彼らは自然を味方につける独自の技術を磨き、超人的な肉体へと進化を遂げていった。

 歴史の影には、常にサンカの姿があった。

 大和民族に仇なす「土蜘蛛」や「鬼」。源義経に兵法を授けた鞍馬の天狗。

 あるいは、農民とは思えぬ戦術で天下を盗った豊臣秀吉、戦国最強の術師・果心居士、伊賀の首領・服部半蔵。さらには諜報のために全国を渡り歩いた芸能の始祖、出雲のお国まで。

 彼らは強大な情報を扱い、数兆円にのぼる莫大な富を蓄えていったという。

 明治の「サンカ狩り」を経て、第二次大戦後。

 サンカの幹部たちは「シノガラ」を組織し、地下へと潜った。敗戦という汚辱を舐めた大和族に取って代わるため、彼らは潤沢な資金を使い、政財界、学術界、さらには芸能界にまで優秀な「子女」を送り込んだ。

 だが、その組織が最も重視しているのは、非合法を扱う「裏の仕事」だ。

 その教育は苛烈を極める。

 サンカの子は十二歳になると、六甲山にある訓練施設へと叩き込まれる。薬物と催眠術で適性を見極められ、地獄のスパルタ教育が始まるのだ。

 運悪く、俺の適性は「しのび」――すなわち諜報・暗殺員だった。

 一年間、虎の穴も真っ青な死の訓練を受け、俺は「作品」として完成した。

 しかし、卒業と同時にその記憶は薬物で封印される。

 驚異的な身体能力も制限され、目立たぬ「モブ」として社会に放り出されるのだ。任務の時のみ、記憶と能力を呼び覚ますという念の入れよう。俺が「忍」であることは、俺自身忘れているし、両親さえも知らない。

 ……そのはずだった。

 だが、次元を飛び越えるという規格外の衝撃が、俺の中の強固な封印を粉々に砕いた。

◆ ◆ ◆

ここまで読んで頂きありがとうございました。

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