政治の壁 ―― 覚醒の桜雪一閃
王都への旅路は、もはや「遠足」と呼べるほどの無双状態と化していた。
バジルの斥候とウィステリアの索敵網は完璧に機能し、獲物を見つけては勇者たちが規格外の魔力で蹂躙する。異世界補正を得た彼女たちの成長は、ベテランのヴァウロニアですら「呆れるしかない」と匙を投げるレベルに達していした。
シオンの炎は、ただの「火属性」を超越していた。
愛用の竹光に纏わせた熱量は、高さ三十メートルを超える火柱となり、巨大ワームを一刀両断にする『ボルテックス・インフェルノ』、それに『アビスフレアー』といった範囲魔法を習得した彼女は、瞬時に周囲五十メートルを文字通りの「地獄」に変えた。
一方のカレンも、聖女としての才覚を爆発させていた。
死の淵からすら引き戻す広域回復魔法『エリアハイヒール』。
そして、タクミが遺した竹ザルに魔力を通し、賢龍の攻撃をも防ぎきる七重の防壁『イージス・セブンズ・ホーリーフィールド』を展開する。さらに究極魔法『フロスト・バースト』は、巨大なメガスライムを一瞬で氷の彫像へと変えてしまった。
おまけにヤスキヨの二人も、土魔法を独自にアレンジ。『グランド・メルトダウン』で地表を液状化させ、そこから彼らの美学が詰まったゴーレム(某ガ○ダム風)が飛び出して魔獣を蹂躙する。
「……あいつらさえいれば、龍魔王だろうが四天龍魔だろうが敵じゃないっすよ」
タクミの底知れなさを知るヴァウロニアですら、そう断言せざるを得ない「至高不滅」のパーティが完成しつつあった。
王都まであと一日という町に到着した際、不穏な空気が漂い始めた。
先行してワープでセラム辺境地に戻り、王からの返答を確認したカレンだったが、結果は「音沙汰なし」。セラム辺境伯が何度具申しても、謁見の許可が下りないのだという。
「何よそれ。王城に直接押し掛けちゃえばいいじゃない」
鼻息を荒くするカレンに、セラムは苦い顔で首を振った。
「カレン殿、それは悪手だ。かつて勇者召喚がされた際、大量の『偽勇者』による詐欺事件が多発してな。王都の人間は勇者を英雄ではなく、怪しげな詐欺師として見ているのだよ」
今の王都に入るには、領主の推薦状と、それに基づき発行される『公式謁見証』が必須。写真もネットもないこの世界では、実力よりも「紙切れ一枚」の証明が優先されるという皮肉な状況だった。
これを聞いたシオンは「強行突破」を宣言する。 だが、辺境伯から監視を命じられていたアッシュ(アロン)が、毅然と立ちはだかった。
「自分を倒してから行け!」
「……望むところ」
シオンは喜悦に瞳を細めた。
互いの合意により、魔法抜きの純粋な剣技のみの真剣勝負。シオンは砕けやすい竹光に魔力を通し、鈍色に輝く銀の刃へと変質させる。
審判を務めるヤスキヨの合図とともに、試合の火蓋が切られた。
アッシュの大剣が、空気を引き裂くような剛腕で振り下ろされる。シオンはそれを正面から受けず、柳のように受け流し、紙一重の回避から鋭い刺突を鎧の隙間に滑り込ませる。
力のアッシュ、技のシオン。数十合の打ち合いを経て、二人は距離を置いた。
「……これが、対人戦の醍醐味」
「これが、武士か……」
シオンは竹光を肩に背負い、低く構える。 魔力と予備動作なしの超加速――古武術の奥義『縮地』。 アッシュが反応するよりも早く、シオンの意識が剣と溶け合った。
「――『桜雪一閃』!!」
舞い散る桜の花びらのような無数の斬撃。アッシュは大剣を盾として使い、火花を散らしながらそれを防ぐ。 だがその刹那、シオンの竹光が限界を超えた。魔力が途切れ、光沢を失ったのだ。
しかし、それが「奇跡」を生んだ。
光を失い影となった切っ先は、斬撃に紛れた影刃となり、最短距離でその胸を突いた。衝撃で竹光は粉々に砕け散ったが、シオンは瞬時に袖口から伸縮警棒を抜き放ち、アッシュの首筋を制していた。
「……完敗でござる。最後の一撃、見えなんだ」
アッシュは清々しく負けを認めた。ソードマスター、あるいは「剣豪」の域に達したシオンへの、心からの敬意だった。
「人剣合一、我が呼吸は刃なり……」
呟くシオンに、ヤスキヨが興奮気味に声をかける。
「ゾーンに入ったんや! 最高のパフォーマンスやで!」
「まさに次元が違うってやつやな!」
その賞賛を聞きながら、シオンは自分の内側に起きた「変化」を感じていた。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
『続きが気になる!』『竹無双もっと見たい!』と思っていただけましたら、下にある【☆☆☆☆☆】をポチッとしていただけると、作者の執筆速度が竹の成長スピード並みに上がります!
ぜひ応援よろしくお願いいたします!」




