表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/45

三〇〇年周期の真実――枯れゆく竹と龍魔王の封印

 酒の肴には焼き鳥、そして締めは――まさかの「うな重」?

 トレミエール王国の料理とは違い、妙に和風なラインナップに親近感が湧く。

 聞けば、もともとエルフ文化は和風寄りだったらしいが、三〇〇年前に竹蔵、松彦、梅吉、お松、お梅の五人が「松竹梅」の縁起を担いで決戦前夜にうな重を食べたことがきっかけで、爆発的なブームになったのだという。今やエルフの国民食とまで言われているらしい。

 ……エルフって菜食主義じゃなかったっけ?

 しかし、ゆっくりもしていられない。俺たちはあくまで経験値稼ぎに瘴気の森へ来ていた身だ。帰りが遅くなれば、セラム辺境伯が捜索隊を出し兼ねない。

 おまけに、プラムの語る勇者たちの戦記は「ドカン!」「ギューン!」「バシィ!」と擬音ばかりで、全く参考にならなかった。彼女、指導者どころか解説者にも向かないタイプだ。

 結局、彼女の話から判明したのは以下の事実だ。

 竹蔵が使った竹は、今もアプリコット王国で「竹林の道」として厳重に管理されている。だが、最近になってその竹が一斉に花を咲かせ、次々と枯れ始めたのだという。

 そして同時期、この最終防衛ラインである砦の竹林も枯れ始めた。竹が一斉に枯れるのは不吉な前兆だと、国民は不安に陥っているらしい。

 この魔力を纏う竹がなくなれば、上級魔獣に対抗する手段を失うことになる。

 そういえば、プラムたちエルフも、さらには魔獣たちまでもが竹の武器を使っていた。転移の際に生えた竹は、俺の両刃鉈クナイでないと斬ることができなかったはず。三〇〇年前に竹蔵が創ったというそれは、一体……。

「ちょっと待って。この世界には、その竹を加工する技術があるのか?」

「そりゃあ、匠と呼ばれるドワーフの鍛冶師とかがおるんやろ?」

 キヨシが茶々を入れるが、事実は小説より奇なりだ。

「確かにドワーフに巨匠はおる。じゃが、竹細工どころか、生えている竹を伐り出すことさえ無理じゃった。……だが、竹蔵がついのクナイの内、一つを置いていってくれたおかげで、ようやく竹を削り、竹槍や和弓を創ることができたのじゃ」

 プラムが語るドワーフの言葉によれば、竹は汚染されたマナを吸収・浄化する性質を持つ。加工された竹は、吸収したマナを魔力へと変えて真価を発揮するが、伐採してしまえばマナの補給が断たれるため、その魔力は有限なのだという。

「だからこそ、竹は魔を討つ破邪の槍になった。各国に輸出してお金にもなっていたんじゃが、肝心の竹が枯れてしまっては、どうすればええんじゃ!」

 プラムの言葉に、俺は一つの結論に達した。

 生きた竹は「マナ浄化装置」。加工された竹は「魔力の塊」。

 俺の世界でも、竹は数十年、あるいは百数十年周期で一斉に花を咲かせ、枯死する。それは不吉な迷信とされていたが、この世界では「真実」なのだ。

(竹槍を魔獣が持っていたのは、この輸出中に襲われて奪われたもので、俺の竹槍がミノタウロスを貫けなかったのは、伐採後、魔力の供給がなかったからか。勇者たちが魔力を纏わせていたのは、無意識にマナを補充して劣化を防いでいたんだ)

 俺は思考を巡らせ、確信を口にした。

「……恐らく、竹蔵は竹を使って龍魔王を封印したんだ。竹を籠のように編んで閉じ込める『籠獄』。竹が封印した龍魔王の魔力を吸収し続ける限り、封印は解けない。……でも、その竹が寿命で枯れ、吸収機能が失われれば、封印は内側から破壊される」

「やっぱ不吉じゃん!」 「ヤバいね、それ……!」

 結論として、三〇〇年周期の「竹の枯死」により、龍魔王の復活は目前に迫っている。

「じゃが、龍魔王を追い詰めたのは竹蔵の力だけではないぞ。あらゆる魔を絶つ聖剣『ゴッド・ファング』。そして瀕死者さえ蘇らせ魔を浄化する聖杖『ゴッデス・スタック』。四天龍魔に対抗するには、それら勇者の専用武具が不可欠じゃ」

「セラム領主も言ってた。それらは王都の宝物殿、禁足庫に保管されているって。……賢龍を見て決めたわ。私は絶対に、聖杖を手に入れる」

「シオンも、聖剣を望む」

 勇者たちの目的が定まる中、俺もまた別の目的を見出していた。

「みんなはそうすればいい。……でも、俺はアプリコットの王都に行って、竹蔵が残したという『クナイ』を見たいんだ」

 クナイは投擲武器だ。竹蔵が忍者として召喚されたのなら、何本も所持していたはず。俺の持つ鉈と、彼が残した遺物。そこに何らかの繋がりがある気がしてならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ