双頭の竹槍と逆落としの雷と兜の下の古き騎士
俺は潰れた竹槍の穂先を両刃鉈で切り落とし、両端を鋭く尖らせた。
「再戦といこうか。こいつは『双頭竹槍』だ」
縮地で肉薄。心臓への突きを賢龍が左腕でブロックする。
俺は即座に槍を旋回させ、逆の穂先で足払いを仕掛けた。賢龍が跳躍して躱し、空中から回し蹴りを放つ。
しゃがんで躱したが、その風圧で髪の毛が数センチ切り飛ばされる。だが、俺はその低い姿勢のまま、右手のみで、地から天へと突き上げるように逆袈裟に切り上げた。
「秘奥義――『逆落としの雷』!!」
賢龍は空間を蹴り、射程外へ逃れた……はずだった。
だが、俺は左手の鉈と双頭竹槍をクロスさせるように真ん中を一閃! 切り飛ばされた方の竹槍が、弾丸となって空中の賢龍を襲う!
「なっ……!?」
予想外の飛来物。回避不能。
竹槍は賢龍の胸へと深く突き刺さり、奴の巨体は地面へと叩きつけられた。
「くそっ……油断した……。五百年鍛え上げたこの私が魔力なきヒューマンごときに……」
吐血しながら、賢龍は呪わしい目で見上げてきた。
「だが、喜ぶのは今だけだ……。あと一月もすれば、龍魔王様の封印が枯凋する。……お前、名は?」
「タクミだ」
「タクミ、か。一月後、あの世で再戦といこうぞ……」
そう言い残し、賢龍の体から穢れた魔力が抜けていく。
後に残ったのは、穏やかな「竜人」の顔をした亡骸だった。
(勝手に俺を殺すなよ。龍魔王とやり合う気なんてサラサラないんだから)
そう吐き捨てたが、心臓の鼓動はまだ激しく鳴り止まない。
五百年だろうが何だろうが、こっちは出雲の時代から磨き続けてきた「生存の技術」だ。一朝一夕で負けるつもりはない。
だが――。「残り一ヶ月」。その言葉が、重く戦場に響いていた。
「そこの回復役! 呆けておらんで、早くその死にかけの二人を助けてやらんか!」
死線を越え、放心状態だった俺たちの鼓膜を、兜を被ったエルフの鋭い声が叩いた。その一喝で、ようやく我に返る。
「は、ハイ・ヒールッ!」
カレンが慌てて血の海に沈むヤスキヨへと駆け寄り、必死に回復魔法を注ぎ込む。
見る見るうちに腹の風穴が塞がっていき、ヤスシとキヨシが劇的な蘇生を遂げた。二人はふらつきながらも起き上がろうとしたが、力が入らずその場にしゃがみ込む。
「死ぬほど血を流したんじゃ、眩暈がするのは道理よな」
兜エルフのアイスブルーの視線が、ヤスキヨから俺へと移った。
「しっかし……そこのタクミという人の子よ。まさか、賢龍を屠るほどの技量を持っておるとはな。三〇〇年前の『竹蔵』に匹敵するやもしれん」
鎧を鳴らして馬を寄せてくるエルフの女。
見た目は二十代前半の美女だが、喋り方は妙にババ臭い。ファンタジーの定番「長寿種」というやつだろうか。その口ぶりは、まるで三〇〇年前の出来事を実体験として知っているかのようだ。
竹蔵という人物が何者なのか、詳しく聞き出したいところだが……。
「すみません。あなた、何者なんですか? シオンたちの味方と考えていいんですよね?」
「人に物を尋ねる時は、まず自分から名乗れと教わらなかったか? ――サムライガール」
俺と兜エルフの間に割って入ったシオンに対し、彼女は馬上から、ゆっくりと兜を脱ぎ捨てた。
さらりと流れる髪。その仕草は、現代で例えるならヘルメットを脱いだ不○子ちゃんのような色気を纏っている。その艶やかさと、放たれる圧倒的な威圧感に思わず気圧された。
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