表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/44

聖女の後光は竹製(ザル)でした ~不吉な花を添えて~

「わいらの出番、一ミリもなかったやんけ……」

「ほんま。どないしてくれんねん」

 ヤスキヨが肩を落として愚辞をこぼす。俺も同感だ。

「まあ、俺も棒立ちだったしな」

「アホか! 巻き込まれ召喚の自分と一緒にすな。なろう系の『実は最強』設定、自分には適用されてへんわい!」

 罵倒が心地いいレベルの完敗だ。俺、もう陰から支えるとか無理じゃないか? スローライフに方針転換したほうがいい気がしてきた。

「タクミくん、この弓と矢、最高に使いやすいわ。これからもよろしくね」

「この竹光も、私の手に馴染みすぎる。最速の剣を振るうには、この軽さと強靭さが必要だったのね」

 リナとシオンが、俺の造った竹細工を絶賛してくれる。それが唯一の救いだ。 すると、カレンが不満げに頬を膨らませて近づいてきた。

「ちょっと、あたしにはないの? その『バンブーナノファイバー』の一品」

 聖女様におねだりされては断れない。俺はリュックから、昨日編み上げた円形の竹細工を取り出した。 菊底編み(きくぞこあみ)――放射状に組んだ竹を緻密に編み込んだ、しかも、その模様はこちらの魔法陣とそっくりで、一尺ほどの美しい円盤状の工芸品ざるだ。ついでに、先ほど摘んだ「竹の花」をあしらったかんざしも手渡す。

「これ、あげる。カレンにはこれかなと思って」

「簪はいいけど……このザルみたいな盆は何よ?」

「いや、ほら。聖女の絵って、後ろにこういう丸いのあるじゃん」

「あれは後光オーラであって、お盆じゃないわよ!」

  カレンの鋭いツッコミが入る。だが、すかさずキヨシがフォロー(?)を入れてくれた。

「まあ待て。その緻密な編み目、魔法陣が描かれた女神アテナが持つ盾『アイギス』にも見えるやん。西洋美人のカレンにはぴったりや」

「そうそう、装備として加工したらええんちゃう?」

「……西洋美人ね。……まあ、タクミがそこまで言うなら、もらってあげてもいいわよ」

 意外とチョロい。ヤスシたちの口車に乗ったカレンは、さっそく竹の花の簪を銀髪に挿した。

「それで、この簪にはどういう意味があるの?」

「……それは、伏線ってことで」

 不吉の象徴である「竹の花」。それを彼女に持たせたことに、俺自身少しの不安があった。だが、ハーフアップにした銀髪から透き通るような首筋が見えた瞬間、その色気に言葉を失った。

「銀髪に竹の簪。ワビサビが効いてて、エキゾチックで、キュートで、……ファミールだな」

「なによその意味不明な褒め言葉。……でも、悪くないわね」

 自分でも何を言っているのか分からなかったが、カレンは満足げに微笑んだ。 斜め上の美的センスを持つ勇者たちを連れ、俺たちは再び、淀んだ空気の漂う「瘴気の森の外苑」へと足を踏み入れた。

 道中の雑魚モンスターを戦乙女ヴァルキリー三人組が瞬殺していく様子を眺めながら、俺たちは竹林から二時間ほど進んでいた。

 狭まっていた谷底が不意に開け、目の前に現れたのは、もはや「異様」の一言に尽きる光景だった。崩れた城壁を巨大な樹木が食い破るように飲み込み、空を覆い隠すほどの鬱蒼とした森林地帯――そこが「瘴気の森」の入り口だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ