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サンカの気功法と、龍魔王誕生の惨劇

 一週間後の王都出発まで、俺たちはギルドの裏手にある鍛錬場で過ごすことになった。 学校指定の体操服に着替えた俺たちの前に、属性別の魔法指導員がつく。

勇者組: ヴァウロニアたちの指導の下、マナを取り込む呼吸法を学ぶ。

タクミ(俺): 講師はなし。「竹の研究でもしていろ」と放置。

「深呼吸をして、七つのチャクラにマナを行き渡らせるイメージよ!」

  指導員の指示に従い、みんなが必死に呼吸を繰り返すが、マナを体に纏わせることすら容易ではないようだ。

 そんな中、俺は一人、六甲山での地獄を思い出していた。

「気を練り上げる」技術だ。

 自然体に立ち、深く、鋭く呼吸を制御する。全身のチャクラを強制的に活性化させると、俺の体表から純白のオーラが噴き出した。

【サンカ流・気功法】

身体強化: 人間のリミッターを解除し、身体能力を爆発的に高める。

絶対防御: オーラ自体が物理・魔法攻撃のクッションとなる。

耐性: 毒、精神攻撃、さらには状態異常さえも無効化する。

「な、なんだそれは!? 魔力値ゼロのお前が、どうやってマナを制御している!?」

 俺の様子を見ていた魔法使いが血相を変えて飛んできた。

 俺の放つ「気」は、彼らの知る「魔力」とは根本的に異質なものだと思ってたんだが……。

(……俺だけ目立つのはハッキリ言って困る。だったら勇者たちに教えるべきだろうサンカのやり方をな)

 俺は戸惑う指導員や、驚愕の表情を浮かべるクラスメートたちに向き直った。「無能の落ちこぼれ」ではなく、「勇者たちの師匠」として。

しゃーない。このまま「無能」扱いされて孤立するのも面倒だ。

 俺は「サンカの技」を異世界流にデフォルメして、クラスメートたちに叩き込むことにした。

「ちょっとタクミ、どうやったのよ! あたしにも教えなさいよ!」

「タクミ、自分だけズルいわ。実は『陰の実力者』とかちゃうんか?」

「……シオンとしては、屈辱」

 騒がしい連中を黙らせるため、俺はパンッ、と一つ手を叩いた。

 視線を手に集めた瞬間――「ゼロコンマゼロ三」秒。 俺は竹製の極細針を指先で弾き、全員の首元にある「気の流れを整えるツボ」を正確に射抜いた。

「「「「「ひゃんっ!?」」」」」」

 蚊に刺されたような声を上げる連中。だが、その瞬間には俺の催眠術とミスディレクションが完了している。

「いいか、全員。肺の空気をすべて吐き出せ。――止めて! マナと酸素を同時に吸い込み、血管を通して全身に巡らせるんだ。……はい、そこでまた止めて! そのマナを『魔力』に練り上げるイメージだ!」

 俺の「暗示」に従い、彼らの内側で眠っていた膨大なマナが暴れだす。 次の瞬間、鍛錬場に爆風が吹き荒れた。

「な、なんなんっすか、これ!?」

 ヴァウロニアが絶叫する。

 カレンやシオンの体からは「三十センチ」、ヤスキヨでさえ「十五センチ」。魔力値に比例した鮮やかなオーラが立ち昇り、指導員たちのそれを遥かに凌駕していた。

「できると信じること。それが最大のチートだよ」

 俺は涼しい顔でうそぶいたが、内心では「さすがSランク、出力がイカれてるな」と冷や汗をかいていた。

 日が暮れる頃には、俺以外の全員が初級魔法をマスターしていた。

 実戦を渇望する『勇者様』たちだったが、その前に待っていたのは、ソフィアさんによる退屈な歴史の補習授業だ。

 ギルドの会議室。俺たちは疲れ切った頭で、この世界の「闇」について学んだ。

 マナの滞り: 感情や環境によってマナの流れが止まると「マナだまり」ができる。 

 腐敗: 滞ったマナは人間の「負の感情」に反応して腐敗を始める。

 魔獣化: その腐敗したマナを取り込んだ動植物が魔獣へと変貌する。 

 瘴気の森: 魔獣の大量発生の源。この瘴気の森は、三百年前のペニオア帝国との紛争による怨念が原因だ。

 ソフィアさんの口から語られる歴史は、ラノベやゲームのプロローグにしては重すぎた。

 会議室の空気は、昼間の魔法特訓の余熱を奪うほどに凍りついている。

1. 穢れた戦場

 三百年前、瘴気の森はカグナール領地と呼ばれ単なる国境の街ではなかった。ペニオア帝国との激戦地――そこでは、人間の「悪意」が煮詰められていた。

 捕虜の惨殺、肉壁、さらには女子供をさらって魔獣化させる自爆テロがくりかえされ、極限のストレスと絶望に反応し、大地を流れるマナは黒く濁り、生きとし生けるものを異形へと変えていった。

 当時、この地を治めていたのは竜人りゅうじんの領主だった。

 彼はトレミエール王国と獣人国家ラドンゴ王国の友好の証として、ぺオニア帝国の侵略から領民を守るべく鬼神の如く奮闘していた。だが、背後から突き刺されたのは味方の剣だった。

 功名心と領地欲に駆られたトレミエール王国の指揮官が、帝国と裏取引を行い、カグナール領主の妻と娘を人質に取ったのだ。家族の命と引き換えに降伏した領主を待っていたのは、無慈悲な断頭台だった。

 しかも、約束は守られなかった。ギロチンにかけられた領主の目の前で、最愛の家族は蹂躙され殺された。その瞬間、彼の「人」としての心は壊れ、世界への憎悪が爆発した。

 カグナール領主は限界を超えて汚染されたマナを取り込み、天を突く「どす黒い魔力のハリケーン」へと変貌した。

 ハリケーンが去った後には、味方も敵も、領地さえも魔力によって擦り潰されていた。

  援軍を送らなかったラドンゴ王国は滅ぼされ、領主に忠誠を誓った者たちは腐食したマナによって『龍魔』へと進化した。

 こうして自らを『龍魔王』と名乗った彼は、大陸全土を滅亡の淵へと追いやったのだ。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

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