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勇者と聖女、そして謎の『Rランク・サンカ』

 昼過ぎ、一行は巨大な外壁に囲まれた城塞都市セラムへと足を踏み入れた。

 堀に架かる重厚な跳ね橋を渡り、活気溢れるレンガ造りの街並みを馬車で進んでいく。

「あそこに『冒険者ギルド・セラム支店』って看板があるわ!」

 カレンの指差す先、一際大きな石造りの建物が見えた。ヴァイデたちの案内で中へ入ると、そこは熱気と酒の匂いが入り混じる、いかにも異世界らしい喧騒に包まれていた。

「た・の・も・う~~~!」

 シオンが道場破りのような声を上げ注目を集めたが、荒事には慣れているはずの冒険者たちも、ヴァイデが「辺境伯様の命だ」と一喝すると静まり返る。

 奥から出てきたのは、金髪にタイトスカートの事務能力の塊のような美人受付嬢、ソフィアさんだった。

「この賢者の石に手をかざしてください。魔力値、職業、スキルが可視化されます」

 カレンに「あんたが最初に行きなさいよ!」と背中を押され、俺は観念して水晶に手を置いた。どうせいつかはバレる。サンカの秘匿主義に反するが、ここは異世界だ。

「な、なんなんですか、いきなり! えーっと……竹内巧。レベルは、Rランク? 魔力値はゼロ。属性なし。職業は……『サンカ』」? スキルは『隠密』『竹細工職人』『竹使い』?」

 ソフィアさんの透き通った声がギルド内に響き渡る。

「おいおいソフィアさん、Rランクなんて聞いたことないぞ! 職業「サンカ」ってなんだ? スキルが竹細工職人?」

 冒険者たちの困惑の声。ソフィアさんも頭を抱えて呟いた。

「……か、神は彼に何をさせたいのかしら。理解不能だわ」

(……Rランクって、レアってことか? それより異世界でも『サンカ』扱いなのかよ。大和朝廷の支配を逃れた山の民って設定まで反映されていないよな?)

 俺の微妙な結果に場が冷めかけたが、続くヤスキヨと女子三人の鑑定結果が、ギルドを爆震させた。

名前 ランク 魔力  魔属性  職業 スキル

ヤスシA 49 土 勇者サポート(丁稚)身体強化、命中補正、特攻

キヨシA 52 土 勇者アシスト(奉公)身体強化、命中補正、身代わり

シオンS 88 火 勇者 剣聖、天衝幽玄流、縮地

カレンS 90 水 聖女 癒し、萌え、魅了、ワープ

リ ナS 85 風 勇者 弓聖、 時津風流、飛翔

 ヤスキヨの「丁稚・奉公」という悲しい職業表記はさておき、女子三人の数値は異常だった。

「Sランクが三人……勇者に聖女、魔力値も平均の三倍以上……! スキルも剣、弓、癒し、さらには空間移動系まで……。こんな完璧なバランスのパーティー、見たことがありません!」

 ソフィアさんは顔を真っ赤にして興奮し、慌てて奥のギルドマスター室へ駆け込んでいった。

 勇者、聖女。そして、よく分からない『Rランクのサンカ』。

 俺たちの異世界生活は、望むと望まざるとにかかわらず、国家規模の騒動へと巻き込まれていく予感がした。

「おい、タクミ! その持っている棒も鑑定しちゃえよ」

「それいいっす! ウチも気になってたっす」

 ヴァイデやヴァウロニアに急かされ、俺は半信半疑ながらも自作の竹槍を賢者の石に押し当てた。

 刹那、賢者の石がこれまでで一番の輝きを放ち、文字列が浮かび上がる。

【名称:竹槍】

魔力値:百

属性: 無属性魔法

特性: バンブーナノファイバー製。高効率でマナを魔力に変換。魔力による事象干渉で「超軽量」「超柔軟性」「高硬度」を実現。

「な、なんだこれ……」

 どこかの新素材のプレゼンみたいな煽り文句だ。バンブーナノファイバーって、この世界の用語なのか? だが、周りの冒険者たちは身を乗り出して叫んだ。

「魔力値『百』だと!? こいつ、魔獣か何かなのか!」

「バンブーナノファイバー……聞いたこともねえが、伝説級のレア素材か!?」

 どうやら「素材」として認識されたらしい。ドラゴンの鱗のような扱いだ。


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