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21話 閑話

 ロスターク城塞都市正面ゲート守備隊は未だ嘗て無いほどに戦慄した。

 時速40キロという速さで走りながら機敏かつ柔軟に走り、そして何よりも正確に観測手と機関銃座を撃ち抜いて来るのだ。


「くそ!観測手がやられては砲撃が出来ないんだぞ!」

「何故奴等は観測手の位置がわかるんだ!」


 観測手の居る位置は城壁に無数に作られた眼孔から観測しているのだが、それを毎々潰してくるのだ。

 しかも、薄暮なのに、だ。

 敵が朝駆け夜討ちは戦いの常だが、薄暮にかけて来るのは向こうの装備と兼ね合ってこの時間になったのだろう。彼等は知らないが74式戦車と90式戦車にはパッシブ式暗視装置が搭載されており、壁に無数に開いた眼孔は勿論そこから覗く観測手の影までくっきりと見えている。

 後はそこに対して砲弾を撃ち込めばよいのだ。


「か、観測手全員死亡!

 敵の高機動部隊はセラス皇女殿下の旗を掲げています!」


 伝令の報告に正面ゲート守備隊長は目を見開く。


「何だと!

 こ、これでは砲撃が出来ない!」


 隊長の脇に控えていたプレイヤーがにべも無く告げる。


「もう遅い。

 400は近過ぎて撃てねぇよ。それ迄に奴等を削るのが自走砲共の仕事。しかし、それが出来なかったら俺達の出番だろ?」


 ロスターク側のプレイヤー達が笑っていた。誰も彼もが楽しそうだった。久し振りの戦車戦だ。自身が勝てる見込みは少ないが、負ける見込みはそれ以上に少ない。誰も彼もが120mmと105mmのAPFSDS弾を舐めていた。機動しながら射撃出来る第2.5世代、第3世代主力戦車を舐めていた。


「門を少し開けろ!

 突撃してくる馬鹿共を撃ってやるぜ!」


 戦後戦車どれも第一世代戦車ではない。第1世代戦車の定義としては90mm或いは100mm砲を搭載し、ジャイロ式の砲安定装置を搭載して行進間射撃が出来る事である。この二つに合致しない戦車は第1世代の主力戦車とはいえない。

 そして、第1世代戦車は第2世代以降の戦車に正面からぶつかって勝利するのは不可能である。

 ゲームでは勝てただろう。しかし、此処はゲームではないのだ。ゲート前に掘られた戦車壕にハルダウンさせた二次大戦末期から第1世代戦車達はその砲眼を通してシマダ達の主力戦車と顔を合わせた。距離は200だ。非常に近い距離。

 次の瞬間、74式戦車が火を噴く。僅か2秒足らず。どの戦車も狙いを付けれていない。

 中央に陣取っていたT29重戦車の正面装甲にぶち当たり、砲手と装填手1名を即死、車長は重傷。射撃装置を大きく損傷させて射撃不可能とした。全員がまさかの一撃に出遅れる。そして、74式の後ろに隠れていた90式戦車が脇から出ると発砲。そのすぐ脇にいたマウスの主砲防盾に直撃させて一撃で大破させていた。砲閉鎖装置を損傷させ、砲塔の要員全員を重傷させた為に砲撃は不可能、閉鎖装置に当って軌道の変わった砲弾はエンジンルームに直撃して黒煙が上がり始めた。

 その後、74式が煙幕を発射した所でゲート守備隊長の判断でゲートを閉鎖した。直後、数発の砲弾がゲートに向かって飛んできたが貫通させることはなかった。一瞬にして正面ゲートの要たるマウスやT29を失ったのだ。


 ゲート守備隊長は戦車から飛び出すプレイヤーや協力者を尻目に視察口から白煙の中を悠々と帰って行く2両の戦車を見る事しか出来なかった。

 部下達も彼等の救助に駆け付け、弾薬庫爆発を防ぐ為に木桶に水を汲んだり、砂を持って来いとてんやわんやだ。

 プレイヤーは死なない。死なないが協力者はこの世界の人間だ。この世界の人間はプレイヤーのように()()ではない。命はあるのだ。

 そして、協力者は多く居るがプレイヤー達の扱う戦車に乗るには相応の訓練を要する。戦力として勘定出来る様に成るには早くても3ヶ月は掛かる。それでも基礎基本だ。

 バグ相手ならそれでも良いが対プレイヤー戦は全くもって役に立たないだろう。


「なんて事だ……」


 そして、やられた2両の戦車は強力だがそれ故に扱いが非常に難しい。どちらの戦車の協力者も、数年単位で乗っていた。それが僅か2発の砲弾によって一瞬で失われてしまったのだ。

 両戦車のプレイヤー達は死亡したり重傷を負って運び出された仲間を前に愕然としている。

 戦車一両に対し歩兵は一個連隊が掛かっても全滅させられる。

 攻城戦において防御側は攻撃側の3倍の戦力を最初から保有している。例えば防御側が一万の軍隊を持っていると、攻撃側はその三倍たる三万の軍を用意しなければならないのだが、戦車がいれば1両あるだけでその優位を覆してしまう。

 弓矢や魔術の効かぬ装甲と弓矢や魔術の射程外から来る範囲攻撃。物に寄っては外堀を埋めることすら容易く行う戦車もある。その場合、戦車が前に出て外堀を埋め、城門を吹き飛ばし、物見櫓を壊すのだ。

 歩兵が無傷で城にまで到達し、あっという間に占領してしまう。そんな不条理が簡単にできてしまうのが戦車である。

 プレイヤー達の話では歩兵でも簡単に戦車を破壊出来る武器があるとの事でドワーフやエルフ達が研究しているが、未だにその兵器は完成していない。

 なので、この世界の軍隊が戦車に勝とうとするなら扱いの難しい飛龍部隊を使うしか無い。

 ただ、飛龍を出すには航空機をどうにかしなくてはいけない。アレのお陰で一瞬でやられてしまうし、そもそも、航空機が無くとも対空戦車で瞬殺されてしまう。技術の進歩、いや躍進しなくてはプレイヤー達に勝てる術は無いのだ。

 ゲート守備隊長は力無く首を振り、それから正面ゲートを吊り上げる鎖を巻く為の装置を破壊する様に告げた。


「出鼻を挫かれたな」


 ゲート守備隊長はそう漏らし、破壊された視察口を補強する様告げた。また、壊れた戦車から使える部品を取るようにとも告げる。無事な機銃、弾薬、装備等等沢山有るのだ。

 戦争は始まったばかりなのだから。

フライング

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