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13話

 セラスの家はシマダが居た地域から三日ほど首都に近付いた平和そうな長閑な場所にあった。皇族は帝都周辺に領地を与えられてそこで基本的には暮らしている。

 それはセラスやギルガメッシュ・オジマンディアスも例外ではない。帝都に住まいを構えれるの皇帝とそのハーレムだけである。そして、セラスの家は非常にデカい。この世界は戦車がシマダの世界よりも身近にあり帝都は勿論国が作った道は全て戦車道であり、特に皇族の屋敷は全て戦車が乗入れる様に作られている。

 74式戦車は巨大な鉄門に止まると、屋敷を守っている近衛騎士が74式戦車の側面に回る。


「此処は第八皇女殿下たるセラス=ジャンヌ・アウグストゥス様の屋敷である!」

「そうよ!さっさと開けなさい!」


 そして、砲塔から顔を出したセラスが叫んだ。騎士は慌ててその場に跪き、それから開門と叫ぶ。その後74式戦車の前を騎馬騎士が先導して、玄関まで。その後74式戦車を今まで使われる事がなかった戦車用駐車場に案内した。

 戦車はサトウとサイカがシートを掛けて、アキヤマがシマダの通訳として同行する。

 一足先にセラスとシマダはセラス邸に入ると、初老の執事とメイド長なのだろうメガネを掛けた厳しそうなメイドが大量のメイドを並ばせて頭を下げていた。

 シマダはそれを見て何故か苦しゅうないと手を挙げた。

 アキヤマがそれを訳すとセラスも同じ様に苦しゅうないと告げた。するとメガネのメイドがセラスを睨み付けた。


「お嬢様、何ですかその言葉遣いは?」


 メイドの言葉をアキヤマが訳すとシマダは爆笑しながらセラスの頭をポンポンと撫でてそう言ってやるなと告げ、セラスを脇に抱えて白夜を教えろよと告げる。


「お嬢様、コチラの方は?」

「私の戦車のシマダよ!

 こっちの言葉が喋れないからシマダのメイドか他のプレイヤーに通訳して貰わないと話が出来ないわ」


 セラスの言葉をアキヤマがシマダに訳す。シマダはそれを笑いながら何か言った。シマダの言葉はきれいな鈴の様な音であった。

 メガネを掛けたメイドはスカートの裾を持ち上げてシマダに一礼をする。シマダはそれに対して自身も見えないスカートの裾を持ち上げて礼をした。


「シマダ様は貴女の名前をお聞きに成っています」

「私はこの屋敷でセラス様のお世話を仰せつかっておりますロッテンマイヤーと申します」


 メガネのメイドことロッテンマイヤーが自己紹介をする。

 シマダはそれに対して快活に笑い、それからヨロシクとセラスを脇に抱えた。その行動にその場にいた全員が驚いた顔をしたがセラスは特に文句を言う事もなく普通に脇に抱えられている。


「地理の勉強をしたいと仰ってます」

「そうよ!

 ロッテンマイヤー!白夜を勉強するわよ!」


 セラスは脇に抱えられたまま叫ぶ。その言葉にロッテンマイヤーを始め、セラスの勉強に付き合ってきたメイド達は思わず感極まりそうになった。そんな様子を見てシマダは大爆笑。

 それからシマダはサトウとサイカがあとから来るので二人も案内する様に告げて勉強部屋に向かった。部屋は非常に広く本棚は勿論、鳥や犬等の動物の絵や世界地図等が貼ってある。


「シマダはそこね。私は此処」


 セラスは自身の隣の席を指差し、自身も椅子に座ってノートと鉛筆を取り出した。

 シマダも胸ポケットに入っているメモ帳とボールペンを取り出し、端末を置く。


「それで、ええっと、白夜でしたか?」


 ロッテンマイヤーは教鞭に立つ家庭教師に尋ねられた。セラスの教師達は屋敷に専属で泊まり込みがさせられており、その間の生活は全て皇帝が責任をもっている。

 逆に言えば碌な教育をしなければ皇帝に殺されると言ってもよく、セラスの勉強嫌いは彼らを戦々恐々させていた。


「はい。

 セラス様はシマダ様から何か刺激を貰ったのか、白夜に付いて勉強すると仰っています」

「分かりました」


 地理地学を教える家庭教師は頷いてから本棚から本を二冊取るとシマダとセラスの二人の前に置く。


「さて、白夜を知りたいとの事ですが」


 家庭教師は二人を見る。アキヤマがシマダに通訳する。シマダが何かアキヤマに告げるとアキヤマが頷いた。


「既に白夜に付いての基本的な知識はセラス様に教えております。

 貴方には何故白夜が起こるのか、と言うそもそもの所を地理学的見地からお教えして欲しいのです」


 アキヤマの言葉に家庭教師は困ってしまった。何故なら、そこ迄体系的な研究が進んでおらず、冬と夏で太陽の位置が違うのは神が位置を動かしていると考えられているのだ。

 そんな世界でまだまだ発展途上な学問で専門的な知識は異世界からやってくるプレイヤー達に劣るか同等ぐらいしかない。故に、白夜が何故起こるのか?と言う疑問は逆に聞きたいのである。

 そして、その事を素直に告げるとシマダは大爆笑した。それから、セラスの頭をポンポンと撫でてから手元の端末に目を落とす。


「白夜が見れる地域を教えて下さい」


 アキヤマが告げるとシマダの端末を家庭教師に見せた。そこには家庭教師が今まで見たこともない程に精密で精巧な地図が描かれていた。

 アキヤマが現在地と北を示すと、家庭教師は自身の地図を拡げてシマダの地図を見比べる。それから、震える手で白夜が見える地帯を指差す。北の山岳地帯から海岸線である。

 シマダはそれを見て一瞬だけ真剣な顔をしてからニンマリ笑ってから家庭教師の手を取った。それからシマダはセラスに端末を見せながらアキヤマを通じて話をする。


「この地域が白夜が見れる地域です。

 まだ季節的にはまだ秋に入ったばかりなので白夜はまだまだです。しかし、雪が降り始めれば下手をすると戦車が動けなくなるので雪が振り始める前に移動を開始します。

 そして、雪解けまでこの地域にいる計画です」


 シマダは脇に置かれたデフォルメが激しい戦車の玩具を手に取る。基本的な戦術を学ぶために使う駒である。


「戦車は軟地にとても弱い乗り物です。

 74式戦車は底板と地面の間が大体50センチ前後のスペースが無いと進めなくなる。特に雪や泥は最悪です。すぐに亀になります。

 だから、冬の間行軍するなら履帯の幅を広げるか更新経路を啓開しなくてはいけません。

 そうなるともう大変です。なので雪が降り始める前に移動します」


 アキヤマが説明した所でサトウとサイカが合流した。

 それから、シマダが長となってセラスの教育がてら地図による経路判読と地図の見方が始まる。同時に家庭教師にも地図符号の説明や等高線や基本的な地図の作り方も説明した。

 後に、彼を中心にこの世界の地図が発展していき後世では現代地図の基礎を作った父とまで言われるようになったが、シマダはすっかり忘れている。

 セラスへの勉強でみっちり夜まで行われ、夕食の時間に呼びに来たロッテンマイヤーに言われるまで続いた。

 そして、その日の夜。シマダの下にロッテンマイヤーとセラスの教育を任された家庭教師達が訪ねて来た。


「シマダ様、どの様にしてセラス様に勉強をする様仕向けられたのですか?」


 家庭教師の長でありマナーを教えている乳母のモンテッソーリが尋ねた。

 シマダはサイカの通じて会話をした。


「勉強を押し付けるからやりたくなくなるんだよ。

 知識を求めさせろ。んで、兎に角褒めろ。否定すんな。興味持ったら兎に角褒めろ。マナーを学ばねぇ?ならマナー学びたくなる様にさせろ。人間褒められたらやる気出るんだ。

 お前等褒めてねぇだろ?」


 シマダはそう言いながら、アキヤマが書き写した本の内容と原本を見比べながら告げた。その目は真剣そのもので昼間、セラスといた時のふざけ倒した雰囲気は無い。

 因みにセラスは昼間の勉強に疲れ、眠ってしまった。


「成る程……しかし、我々もセラス様ができた時は褒めていましたよ?」

「褒め方が悪いんだな。どうせ、ギルオジと比べたんだろ?セラス個人を褒めねぇで皇族たるセラスを褒めてんだよ。

 セラス個人を否定すんなよ。可哀想だろうが」


 シマダは呆れた顔で手元の紙を原本に挟み、脇に投げた。


「駄目だ全く読めねぇ。

 読もうと文章見比べる度に本の文字が変わってて何も分かんねぇ」


 シマダは文字も読めんのかーと本気で落ち込んだ声を出し、固く目を瞑り空を見上げる。


「明日はどういった事を勉強しますか?」

「あ?

 知らねぇよ。セラスが勉強したい事だよ。数の計算とかか?」


 シマダは笑いながら用意された紅茶を飲んでみる。一口飲んでから大量のミルクと砂糖を入れると掻き混ぜる。そして、一口。満足した様に頷くと、ロッテンマイヤー達を見る。


「まだ何か用?」

「はい。

 貴方は何の目的でお嬢様にお近付きに?」


 ロッテンマイヤーの言葉にシマダは首を傾げ、それからニンマリ笑う。


「決まってんだろ。

 幼女ペロペロ」


 シマダはそう笑うと俺はもう寝ると宣言した。

 するとサイカ達三人はロッテンマイヤー達を追い出してしまった。それから部屋の前に武装したメイドが一人立哨をし、シマダの隣の部屋に二人が待機する。それを一時間交代で朝、セラスが起こしにくるまでの間その体制が維持された。


「んん~オハようじょ」


 シマダは早く起きろと掛け布団を引剥して、シマダの腕を引っ張りまくってるセラスの頭をポンポンと撫でながらそんな事を言う。

 メイド達はシマダにおはよう御座いますと頭を下げると屋敷のメイドが用意したお湯の張った洗面器とタオル、歯ブラシを差し出す。シマダは暫くそれを眺めてから、俺、王様じゃんと笑う。ほして、それ等で洗面を行いセラスに引っ張られるようにして食堂に。

 食堂では既に朝食の準備を終えて後はセラスとシマダに三人のメイドが席に付けば食事が出来る段階に来ていた。セラスは自身の定位置なのだろう暖炉前の上座に座り、シマダはその右斜め前に座る。

 三人のメイド達はシマダの後ろに控えて屋敷メイド達の仕事を取ってしまった。


「今日は何するよ?」


 シマダは目の前に置かれたカリカリに焼いたベーコンと半熟卵の目玉焼きをバスケットに入れられたトーストの上に載せるとサンドイッチにした。

 ロッテンマイヤーを始めとした食客扱いたる家庭教師達も驚きのあまり手を止めている。シマダはそんな周囲にお構い無しに特製サンドを食べた。


「うっめー!」


 セラスがシマダの真似をしようとしてロッテンマイヤーに怒られた。


「良い良い。

 気にするなよ。飯は好きに食え」


 シマダはロッテンマイヤーを制して、セラスの目玉焼きとベーコンで特製サンドを作ると、食べやすい様にとナイフで縦に四分割して長細くした。

 その際、黄身が当たる部分からトロリと黄身が流れ出てくるが、シマダはそれをナイフですくい上げて黄身の少ないサンドに塗ってからセラスの前に置いた。


「ほら、食べて良いぞ」


 シマダはそう言うとすっかり綺麗に平らげた目玉焼きとベーコンのお代わりを所望した。屋敷メイドがすぐに空の皿を引き取り、直ぐに目玉焼きとベーコンの乗った皿を出す。

 シマダはそれでサンドを作りまた食べる。それを数度繰り返してから、満足した様に食後のコーヒーを飲んだ。

よし、戦車戦をしよう

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