12話
皇帝一族の決まりとして新たな機甲部隊を作った場合、皇帝の前で閲兵式の行進を行わなくてはならない。
その時期は決まっていない。しかし、必ずやらなくてはいけないのだ。元々は元服した皇族が持てる近衛騎士団をお披露目式であったが、近年では近衛騎士団よりも私有化出来る機甲部隊をお披露目する方が多い。
「ツー事はなにか?
俺ちゃんはセラス引っ提げて帝都を歩くのか?」
シマダは肉を切り分けていたナイフを目の前に座るギルガメッシュ・オジマンディアスに向けた。
場所はカチンガルドの森の近くにある例の街だ。
時間はシマダが鱗粉を手に入れて3日経っていた。
「シマダ様が提げるのではなく、セラス様が引っ提げるのだと言っています」
サイカの通訳にシマダは大爆笑して机を叩く。そして、隣で同じ様にステーキを頬張っていたセラスの口を拭った。ステーキのソースがベッタリと付いていたのだ。
「何にせよ戦車一両は締まらねぇ。
もう何両か揃ったらだな」
なー?っとセラスに首を傾げるとセラスはセラスの隣でサイカに比べると明らかに雑な給仕をしているサトウを見る。サトウがもっと仲間集めてから観閲式する方が良いでしょうと告げるとセラスはそうねと頷いた。
「パレードするならもっと沢山いたほうが楽しいと仰ってます」
明らかに話を聞いていなったらしいセラスが頓珍漢な事を告げ、スープをズズズっと音を立てて飲むとパンを齧った。そこに“お姫様”を見出すのは些か難しい。
「そうだろうそうだろう。
だからよ、ギルオジ。暫くはやらねぇ」
諦めなよとシマダは笑う。
その目はギルガメッシュ・オジマンディアスの後ろに並ぶ近衛騎士なのだろう豪奢な騎士達を向いていた。顔はフェイスガードを下げているので見えないが性別は男だ。
それが二人、抜身のツーハンドソードを体の前に立てて柄頭に両手を置いていた。シマダはそんな騎士達から目を離して更に周りを眺める。小銃や拳銃で武装したこっちの世界の人間にプレイヤー達。
「お前はギルガメッシュ・オジマンディアス様が怖くないのか?」
そして、目が合った一人のプレイヤーが怪訝そうに尋ねた。プレイヤーの言葉にギルガメッシュ・オジマンディアスも些か興味を示した様に身体を前のめりに、手を組んで顎を乗せた。
イケメンがその動作をしても属性があってないのではキモいとシマダは心の底から思った。
「怖い?ギルオジが?」
「そのギルオジと呼ぶのを止めろ!相手は次期皇帝なんだぞ!」
プレイヤーの言葉にギルガメッシュ・オジマンディアスが何かを告げた。
「ギルオジとは自分の事か?と聞いています」
隙かさずサイカが通訳をした。
「オメー以外に誰がいるんだよ。
セラスのフルネームにゃギルもオジも付かねぇだろうが。イカれてんのか?」
シマダの言葉にプレイヤーは銃を抜きかけ、その動作にサイカ以下3名のメイドは完全に銃を構えた。周りの騎士も一拍遅れて反応する。この険悪な雰囲気の中でセラスは全く目を向けずに食事を続け、シマダも特に気にせず食事をしていた。
ギルガメッシュ・オジマンディアスは何か一言告げるとプレイヤーも騎士も武器を渋々下げた。
シマダはそれを見て爆笑。セラスの口を拭ってやった。
それから食事を終えると、テーブルの上にこの前シマダが奪った銃を並べた。ガバメントとマカロフを並べた。
「俺の戦利品見る?」
シマダの言葉にプレイヤー達は殺気を滲ませた視線を向けたがシマダは反応しない。
「あ、そう。
じゃ、良いや」
シマダは別段見せる気は無かったと言う風で拳銃達を脇に退かすと食事を終えたのかその拳銃達に手を伸ばそうとしたセラスを見る。セラスはマカロフを手に取るとサトウに何か尋ねた。
「シマダ様、セラス様が銃を欲しいと仰っています」
「あーん?
マカロフかー……予備弾倉無いからなぁー」
シマダがガバメントを見る。ギルガメッシュ・オジマンディアスが後ろのプレイヤーに何かを尋ねるとプレイヤーは耳打ちした。さらに言葉を交わすと、プレイヤーの一人がホルスターから銃を抜く。それに対してメイド達が一斉に反応し、シマダが止せよと笑う。
銃を抜いたプレイヤーは、その銃、マカロフの側面を見せ、それからゆっくりと弾倉を抜き、また腰の弾納からも予備弾倉を引き抜くとテーブルの上に置いた。
ギルガメッシュ・オジマンディアスは何かを言った。
「売ると言ってます」
「ほーん?」
シマダは興味無さそうに頷くと、席を立ち上がる。それから、セラスを小脇に抱えて外に行こうとするのでギルガメッシュ・オジマンディアスが慌てた様子で何かを喋った。
「買わないのか?と仰っています」
「だって、俺が欲しいわけじゃねぇし。
セラスは別にそれを撃ちたいから欲しいんじゃないんだろ?」
シマダの言葉をアキヤマが通訳する。
「私が危なくなったらシマダ様や我々が戦えば良い。カワイイから欲しいと仰っています」
セラフの言葉にシマダはこやつめハハハとセラスの頬をプニプニ摘むとそのまま外に出てしまう。
外にはシュリダンとエリザベートが待ち構えていた。
「よぉ」
そしてシュリダンの車長、名前はシュリダン、が手を上げた。何故彼がシュリダンに乗っているのかと言えば彼の先祖が先ずフィリップ・H・シュリダン将軍の下で戦い、次に祖父がベトナムでシュリダンに乗り父がパナマ侵攻、湾岸戦争にて乗っていた為に彼もまたウォー・タンクきってのシュリダンフリークになっている。
「よぉ、シュリダンバカにセラスの姉ちゃん」
シマダはセラスを降ろすとシュリダンに歩み寄っていく。エリザベートも挨拶をした。シマダはアキヤマとサイカに戦車の準備をする様命じた。
「君はこれからどうするつもりだい?」
「どうもしねぇよ。
この世界で楽しむには些か常識的過ぎる。ヨリコのババアも国に呼び出されたとかで居なくなっちまったし」
シマダは何か面白いことしたいと肩をすくめた。
「なら、戦車で虫を狩れば良いじゃないか」
「虫殺して楽しむってお前、俺は幼稚園児かよ?」
シマダの言葉にシュリダンはこの世界じゃ皆幼稚園児に憧れると肩を竦める。
「君はセラス様の閲兵式に出るんだろ?」
「またその話か。
まだ出ねぇよ。たった一両の戦車で何する物ぞ?せめて一個小隊3両の戦車で行進したいね」
「ならタイプロクイチやチハが居たよ」
シュリダンが彼等に移籍を頼んでは?と告げるがシマダは首を振った。
「向こうにその気があるならとっくに何かの行動をしてる筈だ。コッチに音沙汰ねぇのは興味ねぇからだろ」
実際は少し違う。ギルガメッシュ・オジマンディアス派で皇位簒奪大会ともいえるこの争いに参加していないと思われていた。その最大の理由が機甲部隊を保有していないと言う所にある。
皇帝の座に着くには少なくとも前皇帝及びその側近に皇帝自身もある程度の戦力を保有し、更にはそれ等を率いて戦える事を認めてもらえねばならない。
皇帝の座を狙う者はギルガメッシュ・オジマンディアス以外全員がセラスは参加しないし参加した所で何も出来ないと踏んでいたのだが、そのセラスが事もあろうに74式戦車を味方につけてしまった。
最早誰にも展開が分からなくなったのだ。
故に安易に74式戦車に、シマダに連絡を取ろうとしないのである。
「それもそうか。
それはそうと、74式戦車は本当に姿勢を変えられるのかい?」
「当たり前だろ?そうじゃなきゃ山岳地帯で戦えない」
シマダが肩をすくめると74式戦車がシュリダンの脇に止まる。サトウとアキヤマが顔を出して、手を振った。
「じゃ、俺達は帰る」
「何処に?」
「何処ってセラスのお家だよ。
セラスのお家を俺達の拠点とする」
何言ってんだこいつ?とシマダは首を傾げると、セラスを脇に抱えてサイカと共に砲塔に上がった。サイカが先に砲塔の中に入り、セラスをキャリバー50の前に座らせる。シマダも車長用ハッチに腰を掛けて前進と告げた。
シマダは車内からスピーカーを引っ張り出して端末を操作する。するとスピーカーから音楽が流れ出す。
シマダとセラスは会話が出来ないが音楽はわかる。
そして、今流れているのは移民の歌だ。セラスは歌詞で疑問があると直ぐにアキヤマを呼び質問をする。
「夜も太陽が登る土地があるのか?と仰っています」
「あぁ?
白夜だろ?」
シマダの言葉にアキヤマもそうかと思いますと頷くとセラスに告げた。するとセラスが行ってみたいと言い出した。シマダは顎に手を当ててそれは良いと頷く。
「取り敢えず、セラスの家に行って何日か休んだら白夜ある地域言ってみっか」
シマダは地図を開き、セラスに顔を寄せる。
「これ世界地図な~
上が北な~」
シマダはニコニコとセラスを見ているとセラスは暫く地図を眺め、それからシマダを見た。セラスはだから何だ?とアキヤマに尋ねる。
「へいへいへーい!
セラスはどうやら地理を理解してないな?しょうがないな~可愛い奴め」
シマダは自身の知識とメイド達の知識を持って自分達の世界の地理を話した。その話はセラスの興味を引き、そして、楽しませるのに大いに貢献したのはセラスの顔を見れば分かるだろう。
そして、同時にセラスは少しばかり後悔した。あれ程までに嫌っていた勉強にもう少し興味を持っていればシマダにこの世界の話をしてやれたかもしれないし、何よりも“白夜”がこの世界にもあるかどうか位は分かっていたのではないか?と。
故に決めた。自身の決意をアキヤマを通してシマダに伝える。
「家に帰ったら勉強して白夜のある地域を探すと仰ってます」
「いーねー!
俺ちゃんも一緒に勉強するわ。んで、白夜のある場所行って一日中遊んでようぜ!」
シマダの言葉を聞いたセラスは大いに頷いた。そして、初めて勉強が楽しみだと思った。
「つーか、ある程度の気象状況とか知ってないと戦車乗れねぇしな」
シマダはそう独りごちるとセラスの頭をポンポンと撫でてから空を見上げた。良い天気であった。
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