裏切り
やる気の無いスイングを出し、三月ウサギの女がなかなかで綺麗なショットを見せた事により、一番目の門を通過。そして獲得した権利を使い、二回目のショットを打つも、女は二番目の門のすぐ近くでハリネズミが止まってしまう。これにより再びわたしの番と二戦目が回ってきた。そして流れるようにもう一度やる気の無いショットを出そうとした時、手に持っていた逆さ吊りのフラミンゴが抗議の声を出した。そう、全てはこれが切っ掛けであろう。
「おいおい嬢ちゃん、なんだいさっきのショットは!
まさか今度も同じ負抜けたショットを打つ気じゃないだろうな?!」
「関係ないでしょう」
「いいや、関係あるね。
あんな不真面目なショット見た事も聞いた事もない」
「悪かったわね。
わたしはこの勝負に、乗り気じゃないの」
「ああ、なるほど嬢ちゃん」
フラミンゴが何かを察したのか器用に右翼を負けで顎を擦る。その表情にわたしは小さな苛立ちを募らせながら、逆さ吊りのフラミンゴの方を渋々見た。
「なに?」
「”本気でやって”負けるのが怖いからかい?」
そう言いニヤッと悪顔を作りわたしをニヤニヤと笑ってくる。そのようすに、わたしは握っていた足首に思わず力が籠る。フラミンゴが小さく悲鳴を上げるが知った事では無い。
「はあ?」
フラミンゴの言葉の意図に意味が分からず、眉を寄せ声を張れば、フラミンゴは意地の悪い笑みをさらに深ませてわたしを見つめた。
「だってそうだろう?
嬢ちゃんは、つまり負けるのが怖いんだよ」
「……わたしが?
どうして?」
「そりゃあ、自分に恥をかくのが嫌だからさ」
「そりゃあ、誰だって恥をかくのは嫌よ」
「けど、いつまでも恥を恐れてちゃあ、前には進めないぜ?
それになにより、良いのかい。
潔く負けて」
「どういうことよ?」
わたしは長い首を曲げてこちらに顔を近づけてくるフラミンゴを不思議そうに見やれば、フラミンゴはわたしの耳に近づいて小声で話し始めた。
「あの女に易々と引導を渡しても良いかって話だよ!」
「わたしには関係ない話だし、興味もない」
「おいおい、冷めてんな嬢ちゃん」
「どうもありがとう」
「褒めてねぇよ」
フラミンゴはそう言い呆れた様な溜息をワザとらしく大きく零した。わたしへの当てつけだけ十二分にして理解しているがわたしは涼しい顔で受け流した。
「けど、本当に負けていいのかい?」
フラミンゴが再度わたしに投げかける。わたしはそんなフラミンゴをやや感心した面持ちで見つめながら深くそして静かに頷いて見せた。するとフラミンゴは再びあのニヤついた意味深な笑みを浮かべるやいなやフラミンゴが動いた。
「だが諦めな、”俺たち”は負ける気じゃねぇから」
そしてフラミンゴに踊らされるようにしてスイングすればハリネズミは勢いよく飛んでいってしまった。ハリネズミは動き回り、そして弾き門を三つ通過して止まった。わたしが唖然とする中でふとぶら下がっている逆さ吊りのフラミンゴを見やれば、あのニヤついた顔が見えてわたしは心底苛立った。
ああ、どうしてわたしはここまで運が無いのであろうか。




