とある鴉の観戦(男視点)
その後の流れは酷く淡々と行われていった。女のハリネズミが人間のハリネズミよりも先に門を通過した。この事により、女は連続で打つ権利を獲得した。付け加えておくが、クロッケーとは一般的に、門を通過した時と相手の球 (しかしここではハリネズミ)を当てる、もしくは弾くなどをすると連続して打つ事が出来るのである。
女は連続で打てるということに密かに喜びを馳せながら、手に持つフラミンゴをまるで熟練ゴルフ者のように構えた。目はまるで鷹か鷲のように鋭く光っており、思わず俺は感心してしまう。さすがは共通種族。やはりどこかしらで血が繋がっているのであろうか。などと軽く心で笑い飛ばしながら、俺はハッとした。不味い、なにを自分はこんな軽い気持ちで観戦しているのだ。これは俺の人生がかかっているのである。
しかし、今の俺は檻に入れられた惨めな鴉である。試しに得意の”力”を使おうと思っても、思うように力が出なかった。どうやらこの檻には外部からにも内部からにも力を打ち消すナニカが作用されているようだ。これにより俺は完全にお手上げとなり、ぐうぐうと寝息を立てる伯父の声をバックに俺は渋々と観戦へと舞い戻るのであった。
さて、女の次のショットは二番目の門を通過することは叶わず、ここで女の番は終了する。二戦目となり、人間が再びフラミンゴの足を握り締めて前を見据えた。そしてどこか気持ちの籠ったスイングを一つすると、ハリネズミは勢いよく転がっていった。それは一番目の門を越え、さらには女のハリネズミを弾き、二番目、三番目と凄い速さで通過していった。これにより人間は二回も打つ権利を獲得したのだが、どうもその表情は鬼も悪魔も逃げ出しそうなほど恐ろしい形相だった。どうしてだろう。俺の身も危険に感じてきた。




