とある鴉の絶望(男視点)
それにしても伯父ことオッジーとはいったい誰であろうか。わたし自身知らないとなると男の関係者となるだろう。もしかして幼少期の頃に知り合った私の身内か。いや、流石にそれは無いだろう。身内はまだ三十路を越えたばかりのダンディーな大人だ。まあ、伯父の立ち位置だが、あの伯父ことオッジーさんは見る限り三十路どころか六十路を過ぎた感じに見える。むしろ寝ぼけ爺さんと同い年ではないだろうか? なんとなくだか、やけに親しげだ。と言う事は必然的にあの伯父と寝ぼけ爺さんは同じ喜寿となる。ジジより少し若く見えるのが不思議だ。それに何より自分の父親が良いように弄ばれている。年長者としての余裕なのだろうか。コロコロと転がされている。なんと惨めだろうか。せめて、この惨劇を憶えていない事を切に願う。憶えていたらきっと汚点だとか言って首吊るぞ。流石に大黒柱で稼ぎ頭が居なくなったら途方にくれるのでそれはなんとしても阻止したい。
奮い立たせた誓いを胸に秘めているそんな最中、腰に張り付いている蝉のような男は一人愚痴愚痴と喋りはじめた。
「なんで伯父いんの訳わかんないし、なんでドレス着てるの、ああ夢なら今すぐに冷めて現実だけを静かに見ていたい。
ああ視覚の暴力酷い、泣きたい、誰か俺を現実に戻して殺して死にたい」
まるで何かに取りつかれたようにブツブツと言い始めた姿はもの凄く不気味だしすぐさま引きはがしたい衝動に駆られる。しかし先ほどと同じような結果になるのは目に見えているので即行で諦めた。しかし男の発言により確定した。あの伯父は男の関係者でしかも身内だ。悲惨だ。なにが悲惨って三役の内、身内が二人ってなんと酷いキャスティングだろうか。運命の悪戯にしてももう少し優しい配慮が欲しい。寧ろこの光景は悪魔が作りだした悪夢だ。父なんて先ほどの皿一枚の代償により上着と言うかドレス脱がされて下着姿で仕事している。悲しくなる。誰が好きこのんで自分の父親の下着姿を見なくてはいけないのだろうか。男の言葉を借りるなどしたくないが、わたしも言おう。
「なんて酷い視覚の暴力」
ああ、出来る事ならば一刻も早くこの場から去りたい。




