花の都
目を開ければそこは花の都、パリのシャンゼリゼ通りだった。しかし現代と違い少しだけ古風に見えるその光景に、わたしは一人首を傾げた。確かに綺麗な風貌の方々が多いのだが、着ている服が少し古くさいようにも見えた。そう、教科書や資料集などに載る服装。コルセットを巻き腰を少しでも細く見せようとする姿はさすがは女の意地だと思う。ちなみにわたしは細く見せようとするためだけで肺の骨を砕かすバカはやらない。むしろ息苦しくてやってられない。というか死ぬ。
そしてなにを隠そうとあのヒラヒラしたレース、そして裾の長いスカート。見ているだけで背筋がぞっとする。なぜ女というだけであのような格好が一般的だの王道だと思われるのかわたしにはサッパリ分からない。女だからと言って生足を見せていい物か、生足厳禁だ。なにがミニスカだ。わたしの大根足を見て何が楽しい、ふざけるな。女も男もズボンだ。それも長ズボン。まったく何がいいのか分からない。
それにしても、一体全体わたしはどうしてこのような場所に突っ立っているのだろうか? それに周囲からわたしへの視線も一切ない。むしろ空気になったような感覚である。もしかして知らないうちに死んだのだろうか。だったらあの鴉の人生と子孫を末代まで祟ってやる。わたしに不可能は無い、と大きく叫びたいが一般人、ましてや普通のしかもまだ中学にも上がらない餓鬼に何が出来るのだと鼻で笑われそうだ。重たい息が飛び出る最中の事、突然わたしの肩に手を置く感触が起きわたしはその場で馬鹿みたいな絶叫を上げてしまった。振り向きざまに見た人物の姿にわたしは怒りを募らせた。
そう、あの鴉だ。
わたしは鬱憤を晴らすべく、前に漫画で見た技を見よう見まねで実行した。拳を固くし、身を低くする。そして引いた腕に思いつく限りの力を込め、前へと突き出すように押しこむ。狙いは男の無防備な脇腹。わたしは狙いを定めた攻撃は見事命中し、男は目を丸くし驚愕するも、わたしの怒りは収まらなかった。けれど鍛え上げられていないわたしの拳が悲鳴を上げていたので、呻き声一つ上げる男に「よし」と決め込み、わたしは蔑む眼差しを送ってやった。
男のアホ面はなんとも気持ちの悪いものである。




