第十二章 disguiser
(約国、キンストラン市)
(「この家の契約にサインすれば、中に入って働ける。」)
(「いいね、食事と住まい付きか。これで街で貸家を探さずに済む。」)
リンスランス・AKは、運搬工[クート・ヤクシ]の偽造身分を借りて、約国軍事基地付近に関連する軍用物資運搬基地に潜入した。
彼は契約にサインすると、そばの工具箱を提げ、基地内部へと歩いていった。
(「BV、さっき俺の身分情報に書いた『万能王』ってどういう意味だ? 俺は魅力と操作能力を兼ね備えたイケメンだが、完璧な人間じゃないぜ~」)
(「私はこちらで通信を切る。君は計画を実行した後、撤出しろ。」)
(「もちろん、爆薬を仕掛け、機密を盗み、軍事基地を破壊する——お手の物だ!」)
運搬基地に入ると、リンスランスは頭上の縦横に交差する輸送プラットフォームを見上げ、機嫌よく鼻歌を歌いながら宿舎へと歩いた。
「政府機関にいた頃は、浮行機に乗れたんだぜ~」
「そうか? それはお前、実に同情に値するな。」
突然耳元から聞こえた男の声に、リンスランスは振り返って警戒した。見ると、ビジネススーツを着た男が彼のそばに立っていた。輪郭ははっきりとし、金髪は濃く、口元にはあってもなくてもいいような笑みを浮かべている。彼はリンスより頭一つ高く、決して凡庸な人物ではなかった。
「ミトヨ・ヤクシ、お前の上司だ。」
「おお、何か用ですか?」
「たまたま通りかかった。お前、上司に対する態度を改めるべきだな。」
そう言うと、リンスランスは脳機からのメールを受け取った。彼の不遜な発言に対する処罰だった。
[給料:—300]
「300約幣、大したことじゃない。」
[給料:-1000]
「ちょっとやりすぎだろ?!」
「給料を引かれても平然としているお前は、俗人には見えないな。」
[給料を返還]
「あなたは本当に冗談が好きですね。」
リンスランスが歩き続けようとした時、ミトヨが彼の手首を掴んだ。
「忘れてた、ちょっと文件を取ってきてくれ~アクセスキーはもう送った。」
(「この野郎!」)
運搬工が割に合わない仕事だとしても、安定していておそらく死なない職業とも言える。この星で、びた一文ないなら、首が飛ぶような裏仕事をやるしかない。政府にはもう余分な雇用がないのだから。
そんな心持ちで、ブイ・ヤクシという小僧は、およそ二十万時幣を稼いだ。彼はその半分を母親に送り、残りの金でロウェイナン郊外に小さな別荘を買った。訓練場の借金を返済し、さらに武器と装備をいくつか購入し、不測の事態に備えた。
「残りの金で、いい仕事を見つけられるはずだよな?」
家があれば、仕事の機会もある。以前、固定の住まいがなかった時は、外で借家を借りるか、流浪するしかなかった。会社は固定資産を持たない者を雇わない。たとえ自分に才能があると思っていても。
(「まだ一万以上残ってる。やっぱり貯めておくべきか?」)
([未知の来信])
「うん?」
ブイはパソコン上のその文件を開いた。ペステルガン武装公司の外介員から送られた情報に、彼は思わず身体を震わせた。読み進める前に、心の中で怯え始めた。
(「バレたのか?! 俺と伭昭さんの関係……」)
ブイは震えながら立ち上がり、そして深く息を吸った。モティス偽死軍集團が約国警察を買収したことは、本来漏れるはずがない。とにかく、何にせよ、彼は早く決断を下さねばならない。
(「ブイさん、ペステルガン武装公司までお越しください。あなたの最近の財産の変動について、我々は最善のアドバイスを差し上げられます。」)
「なんだ、相談の案内か……」
ブイはゆっくりと座り、「不要」と三文字打ち込むと、メールボックスの閉じるボタンを押し、椅子に瘫坐した。
(「ブイさん、選択はされましたか?」)
「閉じたはずだろ……」
ブイは姿勢を整え、またマウスで閉じるボタンを押した。しかし連続してクリックしても、そのメールボックスは閉じず、次の瞬間には鬼畜のようなウイルス弹窗が点滅した。
「うわあ!!」
ブイは驚いて床に座り込み、そのパソコンのエラーを見てどうしていいか分からなかった。ペステルガン武装公司はすでに彼をマークしていた。相手は「アドバイス」を拒否し、退出する権利など全く与えていなかった!
([門口監視:警察到着])
「警察?!」
どうやら、彼は一人でペステルガン武装公司の本部へ行くしかないようだ。相手が彼のこの黒金がどうやって稼がれたか知っているかは分からないが、とにかくできるだけ誤魔化さねばならない。
(「まずお袋に電話して、金を隠しておくように言わないと……」)
………………
「君の助けが必要だ、ジフェイシ。」
「寒い~早く出して!」
ジフェイシは鉄拳で電子波紋が翻る鉄晶窓を锤打ち、両眼を伭昭に死盯着させた。
「今は無理だ。もし君が我々の計画に加わり、保密するなら、バクロフに君を出してもらうよう頼める。」
「寒い……早く出して!」
「君が承諾しなければ、出すわけにはいかない。」
伭昭は鳥肌が立つほど冷えたジフェイシを見つめ、一瞬考えた後、監獄の操縦員に連絡した。
「彼女を出せ。」
「バクロフ総領の指令なしでは、私は——」
「出せ、私が彼に説明する。」
「しかし——」
「この牢籠を開けろ!」
「はい!!」
寒气が牢門の下から散ると、伭昭は右手に背中の光鎌を握り、静かにその場に立っていた。
「この偽死軍の走狗め!」
ジフェイシが窜出して跳び上がろうとした時、伭昭は光鎌を抜き、彼女の首に引っ掛け、そして彼女を重く地面に投げつけた。
「痛い!」
「先に言っておく。私は走狗ではない。その気になれば、ここを離れられる。だが、君はここから離れられない。」
「还不是お前のせいだ! ふん——」
ジフェイシは両脚を伭昭に踢り向け、同時に鉄臂で身体を弹起させた。伭昭は光鎌を上げた後、後方へ相手の踢撃をかわし、続いて光鎌の尾端で一突きし、まっすぐジフェイシの腹部を突いた。
「うぐっ!」
再び倒れたジフェイシは伭昭に光鎌で押さえられ、腹を突かれたため、彼女は冷静になったようだった。
「約束する、約束するから……早く放して。」
伭昭は光鎌を収め、続いて脳機で一枚の計画表を相手に送った。
「これは何だ?」
「これは『覚醒剤』の外殻製作草案だ。私が一寸の間に考えたものだ。まず飛船を降りて、現地の冶金錬廠を探せ。さっきバクロフにメッセージを送った。彼は同意するだろう。」
「でも、メッセージは一分前に送ったばかりじゃ……?」
「咳、咳、それは重要じゃない。私は次に人を探しに行かねばならない。君は私の指令に従い、任務を完遂しなければならない。さもなければ、君の心臓に仕掛けた爆弾が起動する。」
「え?」
「そういうことだ。先に行く。」
伭昭が振り返って離れようとすると、右腿に飛びついてきたジフェイシに抱きつかれた。正直に言えば、彼はこれ以上何も言いたくなかった。しかし相手が哀れな様子を見せると、彼も構わずにはいられなかった。
「待って……私は言っただろ、お前たちに加わると——㭉(カ)さん、仲間同士なら互いに信頼し合うべきだろ?」
「…………」
伭昭は顔を黒くし、その後彼女を蹴り開けた。信頼? 今の彼はきっと信じない。たとえ仲間でも、「仲介者」のような者もいる。彼には仲間の性質を定義する資格はないが、はっきりしているのは、今の世の中で他人を信頼することは危険なことだということだ。
(ロウェイナン、ペステルガン武装公司本部)
「お入りください、ブイ・ヤクシさん。」
その金碧輝煌たる大庁に入ると、ブイは両手を腰帯の二丁拳銃に貼り、心に不吉な予感が湧いた。『疯犬帮』を嫌悪する彼は、この時むしろ全身に義体を装着していたらと思った。
「すみません、私が手配したアドバイス相談はどこですか?」彼は顔を上げてそのドローンに尋ねた。
「よう、ブイさん~」
手を叩き、優雅な風采を帯び、悠々たる歩みでやってきた。まさにそのそばに藍色の兜の戦士を従えたペステルガンだった。いつからか、ブイは周囲が完全武装の兵士と機甲に囲まれていることに気づいた。
「あなたが、ペステルガンさん?」
「そうだ~お前も察しただろう。お前は我が公司にとって非常に重要な意義を持っている。」ペステルガンは指を曲げると、それらの兵士と機甲は銃器を下ろした。「はっきり言おう——」
「お前は、すでに我が公司の敵として列せられている……」
ブイはその場に怔住し、無意識に両手で二丁拳銃の柄を握った。しかし次の秒、二台のドローンがレーザー発射口を開き、左右からそれぞれブイの両手首を射断した。
(「痛い!」)
「表現が不完全で申し訳ない~お前が望むなら、いつでも友方になれる。」ペステルガンはゆっくりと前に進み、振り返って左腕をブイの肩に靠せた。「だが、お前は私に協力しなければならない。そうすれば、お前はあの偽死軍の異端と徹底的に縁を切れる。」
(「彼の脳機の情報はすでに抽出した。殺すか?」)
(「いや、いやいや、C、お前は私のCENTERだ。こんな小物のために手を汚す必要はない~」)
「そうだな、まずブイさんを医療室に連れて行って治療してやれ、いいか?」
一台の冷蔵庫型の医護機械体が前に進み、機械臂を伸ばして二枚の医用護腕をブイの断手に嵌め、続いて冷凝管を伸ばして彼の傷口を凝固させた。
「どうぞ。」
一名の兵士がライフルを背中に掛け、彼をエレベーター間へ連れて行った。ペステルガンはブイが離れるのを見送った後、顔を上げてそばの職員に眼色を与えた。
(「彼を17階の会議室に手配しろ。あの二丁拳銃を展覧台から取り出すのを忘れるな。」)
(「遵命、老板!」)
………………
「大統領、[零之切割]との協議が破裂しました。彼の作風からすれば、我々は人を派遣してSEUにこの件を報告すべきです。彼の報復を避けるために。」
「もう遅い、シャオファンアル。」ジョリナは指で大統領室のスクリーンを引き出し、ペステルガン武装公司公式発表の公告を開いた。「あの男はすでにペステルガンに我々との武器供給関係を断たせた。五日、五日遅れれば、我々の一つの城は偽死軍に奪われる。」
「大統領、どうやら相手は仇があれば報いる爽快な人物のようです。しかし心配には及びません。現在戦事はまだ白熱化段階に達しておらず、加えてユリアン将軍が血戦中です。彼女の軍事才能に、レシミラン司令とその下のウェストトンやヨティらの排兵布陣を加えれば、問題にはなりません。」
「しかし、彼らはこれに不満を感じるだろう? あの軍人たちは一度ならず政府に意見を述べている。特に先ほどあなたが称賛したユリアン将軍、彼女は政府を最も嫌う人物の一人と言える。ある日軍事物資の輸送が遅れれば、彼女は不適切な語彙を含む音声信件を何通も送ってきた。」
「少なくとも彼女は愚痴を言うだけだ。最も恐ろしいのはレシミランだ。彼のように表面に出さない者こそ、我々が最も警戒すべき相手だ。軍隊の統領権の大半は彼のところにある。もし私が当初本当に兵を派遣して[零之切割]の聖石遺跡坑開取を支援していたら、[零之切割]が去った後、偽死軍が滅ぼされようと降伏しようと、レシミランはその時絶対的な実力で我々の政府を転覆させたはずだ。だから、少し厄介を起こすのは何でもない。最も重要なのは軍隊の発展を制限することだ。」
「あなたの言う通りです。そういえば、観察台からの情報によれば、ペステルガンが最近彼の護衛隊を回収しました。これは絶対に何らかの陰謀を隠しているに違いありません。加えて[零之切割]に軍事資源の供給を切らせたこと、彼にはきっと何か重要なことを解決せねばならないことがあるのでしょう。そうだ、糾察警隊からの情報によれば、国境警察が犯人逃亡事件を疑似的に庇護したとのことです。私はすでに人を派遣して調査を明確にしました。追捕されている者は外星からの逃亡犯で、伭昭という男です。」
「そうか? その件は……非常に重要なはずだ。シャオファンアル長官、あなたたち外交部門下の星外旅客事務司に、この期間に約氏星へ来た外星旅客の情報を検索するよう勧める。もしこの逃亡犯の身分が重要なら、必ずその来源地情報を遡及せよ。」
「はい、大統領。」
ブイが両腕の治療手術を受けた後、要求通り彼の武器は卸され、専用貯蔵倉に移送された。再びエレベーターに踏み込み、17階に来た彼の目の前で、会議室は百葉窓で覆われていた。ペステルガンは本革の椅子に座り、脚を組み、左手で頭を支えていた。そばの藍色の兜の戦士は両手を背中に組み、不動如山だった。
「お掛けください。」
そばのドローンが円形の腰掛けを持ってきて、ブイはそれが椅子を安置するのを待ってから、ゆっくりと座った。数秒後、ペステルガンは姿勢を整え、両手を机についた。
「十四歳、まさに働き盛りだ。実は傭兵の中で、お前の『双銃小子』の名はかなり広まっている。残念ながら特殊訓練と身体強化を受けていない。そうでなければ、お前も人材になれた。」
「恐れ入ります……」
(「俺は何を言ってるんだ……」)
「だが、お前は時勢をわきまえず、異星逃亡犯が偽死軍集團に入るのを手助けした。約国の法律によれば、お前はその場で正法されるべきだ。」
「それは、その時相手が異星からの逃亡犯だとは知らなかったんです!」
([情緒波動異常])
「小僧、お前の脳機内の記憶はすべて保存バックアップされている。嘘をつく必要はない~」
(「いつ?!」)
ブイは胸が苦しく、自分の胸を叩いて冷静になろうとした。おそらく公司に入った瞬間、彼の脳機はハッカーに遠隔侵入されていたのだ。しかも彼は何の異常も察知できなかった。
「俺の両手が撃たれた時に、同期して調取したのか?」
「どうやらお前はなかなか賢いな、ブイさん。そうだ、さっきお前の神経痛覚反応が脳機調取時の神経波動を覆い隠した。ただし、容疑者の脳機情報を調取することは、許可なく他人の脳機情報を盗む罪にはならない。」
「お前!」
ブイが頭を上げると、彼の額に次々とレーザー照準線が浮かび上がった。今軽挙妄動すれば、彼は肉泥にされるだけだ。彼は唾を飲み込み、相手が話すのを待つしかなかった。
「しかし、種々の兆候はお前が無実であることを示している、ブイさん。」
「え?」
ペステルガンが指を曲げると、ブイの座席のそばの床がせり上がり、二丁拳銃を収めた展示櫃が現れた。そこに彫られた電子人物図案は間違いない。彼が以前よく見ていた『双銃&リリちゃん』アニメのあのヒロイン:リリ・二島!
(「彼らは俺のAP站での視聴記録を調査したのか? これは一体どういうことだ……」)
「この二丁拳銃、私はわざわざ人に作らせた。原型はフリナン2511(約国独立記念年)、12mm口径、スマート追跡、防ハッキングレベル一級。内部には爆発モジュール、及び両腕の義体に合う連接体も追加装備している。一発撃てば、中の蓄能弾が頭骨を砕く。そうだ、ブイさん、私はこれを君に贈り、君と私の間の協力の誠意を表したい。どうだ?」
「ありがとうございます、でもこれは受け取れません——」
「そう言わないでくれ、ブイさん。」ペステルガンは目を細めて笑い、手に箸状のものを回していた。「お前は受け取って、我々が長く協力するか。さもなければ、お前のその二丁拳銃をここに残し、私の別のコレクションとするか。」
(「まずい……」)
ブイは斜めに展示櫃を瞟み、生き延びるため、ゆっくりとその二丁拳銃を取り出した。重さは重くないが、ずっしりとした存在感がある。目が利く者なら、これが高価な品だと分かる。
「本当に受け取っていいんですか……」
「すまない、先ほどは少し態度が強硬だった。」ペステルガンは手の動作を止め、続いて立ち上がって言った。「受け取ってくれ。私の下した決定は撤回しない。」
「何か聞きたいことはありませんか?」
「お前の脳機はすべて調査済みだ。失礼を言えば、お前はただの道具人だ。しかしこれは確かに事実だ。」
「分かりました……」
「お帰りください。あの二丁拳銃は贈り物として受け取ってくれ——」
そう言うと、二名の兵士が彼をエレベーターへと連れて行った。ブイはうつむいて考えた。自分は伭昭に関する厄介事に巻き込まれた。おそらく下半生は誰かに暗中監視されるだろう。
しかし、厄介事は時にこんな簡単な代償では終わらない。
(「突き落とせ。」)
「———前提として、お前にそれらを受け取る資格があるかどうかだ。」
「何?!」
エレベーターに近づいた瞬間、その二名の兵士はブイの襟を掴み、彼が銃を抜く前に、開いた落地窓へと投げ飛ばした。
(「口を封じるつもりか? ペステルガン——」)
(「何発か追い打ちをかけろ。」)
その二名の兵士は動能ライフルを構え、ブイの身体に向けて数発射ち、ついでに彼が落ちる前に爆殻手雷を一つ投げ下ろした。
「ドン———」
………
………
………
「うわああああ!」
ブイは大声を上げて目を開け、顔に冷や汗をかきながら、自分が古びた部屋にいることに気づいた。
「お、俺は死んでない?」
「そうだ、自分の身体を見てみろ? 小僧。」
余光で一名の義体改造者を瞥見し、ブイは全身の力が抜けるのを感じた。彼がやっとの思いで首を捻ると、見下ろしたのは自分の義体で満たされた半身だった。
「こ、これは何だ?! 俺の身体、俺の身体が——」
「全部取り替えてやったぞ、小僧。お前に付けたのは安物じゃない。お前に俺たちの親分を取り戻してもらわねばならんからな! いひひひ——」
「何がおかしいんだ? 俺の肉体はどこへ行った?!」
「おお、お前の肉体は、爆発でぐちゃぐちゃになった~」その義体改造者は手のひらに突き出た棘を舐め、舌の縦条とその刀先が火花を擦った。「デカが道でお前を見つけなければ、お前はとっくに街のネズミのように道端で死んでいただろう!」
「な、なんで俺はこんなに運が悪いんだ!」
ブイは、この瞬間、涙で顔を濡らした。




