第十章 駆け巡る南北!④ 基地到達
本章は情報量が多めなので、前作『矽元涌離』を読んでいない読者は戸惑うかもしれません。前作を未読の方は、情報を補うために前作をさっとお読みいただくことをお勧めします。
(「皆様、おはようございます。こちらは民間ニュース電台[荒市坊新聞]、パーソナリティのJAMです。最新の戦況通報によりますと、我が国軍はすでにメイメイシュー市及びフェイシュなど12の城鎮を攻略することに成功しました。ヤクサレリ市はSEUから派遣された軍用類人機[零之切割]によって占領を支援されましたが、モティス偽死軍集團の敵軍は依然として頑強に抵抗し、同市の12%の区域を強攻しました。しかし、我が軍は残りの区域を完全に奪回できると信じております——」)
(「ドンドンドン! 国を守る少女、回転する二丁拳銃はすべての敵の心臓を撃ち抜く! 今夜十八時、『双銃&リリちゃん』が時間通りに放送開始!
———本アニメはペステルガン武装公司の提供でお送りします。」)
脳機内の仮想スクリーンに映る番組を見ながら、軽革生物風衣をまとったリンスランス・AK・オルファキは、高速鉄道の外のロウェイナン市街に目を向け、上から下へとこの首都の輝かしいスカイラインを走査した。今彼はあと一時間半、この車両内にいなければならない。列車が終点のキンストラン市に到着するまで。
(「本当にうんざりだ。この戦争狂どもは、自分たちに都合のいい開戦理由をよくも見つけるものだ。電子麻薬がどこにでもあって、知らず知らずのうちに多くの大衆を洗脳している。やはり、俺は遠く離れているのが一番いいようだ。」)
(「馬鹿なことを言うな。お前の任務は軍備運搬基地に潜入することだ。前線の約国脱走兵を演じることじゃない。」)
(「BV、俺は実際に脱走兵を演じたこともあるんだぜ。俺が言うなら、全国の兵士が逃げ出せば、この戦争も終わる。たとえ列を作って味方に首を刎ねられようと、毎日銃に付着した平民の血のせいで力尽きて死ぬよりはマシだろ?」)
(「無駄口が多い。お前はいつも騒ぎを起こしたくてたまらないんだな、俺に厄介事を押し付けて。」)
(「そういえば、BVが買ったこの3000(約幣)の立席券は本当に価値があるな。窓の外の風景もなかなかいいし、俺の両脚も外で高速鉄道と一緒に走っているみたいで、行き場のないストレスが沈殿していくよ。」)
(「お前がそんなに平然としているなら、上から支給された任務資金も必要ないようだな……」)
(「それはダメだ! 俺は金を貯めて、後で外星球の[古生]バーで豪遊するつもりなんだ。同じ職場のよしみで、BV、許してくれよ~」)
(「本当にだらしない男だ。」)
ロウェイナン東駅を過ぎ、リンスランスは立杆のそばに寄りかかり、琳懺星から輸入した[立位背靠貼]を剥がし、それを背中に貼った。すぐに、その背中のナノ垫板が自動的に側壁板に吸着した。
「ふぅ~やっと背もたれができた。」
([例行検査時間])
高速鉄道が東駅に停まると、約国の警察が車内に乗り込んで巡回した。戦時中、偽死軍集團の敵軍によるテロ攻撃を防ぐため、警察庁は不定期の巡回でこの事件の発生を減少させることを決定した。
「例行検査だ、全乗客は端に寄れ。スキャン機で顔面をスキャンする。武器を抜くまたは持ち上げるような行為は禁止する。」
(「これは困ったな~」)
(「私はお前の記憶庫に神経図譜テンプレートを上書きした。お前はいつも通り整備工の身分を装え。」)
「聞いたか? 龔蔑星系が悡爻星系と戦争を始めるらしい。二国は希少資源の問題でずっと不和で、龔蔑星系は最近、数隻の戦列艦を衝突地帯に派遣した。SEUが両国に代表団を派遣して和平交渉させなければ、今頃戦争が始まっていたかもしれない。」
「黙れ、脳機で交流すれば十分だ。誰の声も聞きたくない。」
(「ちっ……サツめ。」)
リンスランスはその人物の愚痴を聞くことができた。正確には、彼は周囲の人間の脳機思考をハッキングした。ただし、短時間の盗聴しかできない。さもなければ、警察が神経網異常を検出する。彼は何事もないふりを続け、右腿を左腿に組んだ。
「お前、顔を上げろ。」
リンスランスは顔を上げ、その厄介なサツたちを見た。その後、そのドローンに顔面をスキャンされた。スキャンの結果、異常なしと表示され、サツたちは車両前方へと歩き続けた。
「大きな官威だな……」
(「AK!」)
「何か言ったか?」
リンスランスは、ここでまた彼の馬鹿をやらかす時間だった。不専門なスパイとして、彼は一時的に口が滑り、相手の感情を全く気にしなかった。
(「この知恵遅れ、また失敗しやがった……」)
「誰の声も聞きたくない? 警察でも他人に黙れと命令する資格はないだろ? まさかお前たちの国では、話すことにも税金がかかるのか?」
外国高企業という偽装身分の彼は、この時側壁板にも寄りかからず、両手を胸の前で組んだ。彼の行動は他の警官たちにも少し警戒させた。
「今は戦時中だ。お前たち平民は厳しく管理されて当然だろう?」その中年警察官は警用手拳銃を抜き、身側に握った。「公司の犬め、我が国に馴染めないならさっさと帰れ。」
(「ほほう、こいつらは痛い目に遭いたいようだ……」)
(「AK、手を出したら、帰国して刑務所行きだぞ!」)
(「BV、サツにいい顔をするわけにはいかないだろ。俺は刑務所に行こうがどうでもいい。」)
………
「ふぅ~お前たち本国人には口で勝てない、参った、参った……」
「この野郎——」その警察官はリンスランスの襟を掴んだが、しばらく考えた後、彼を放した。「もしお前がスパイだと分かったら、銃殺刑だ。」
もう一度スキャンされた後、リンスランスはその警察官が去る時に白い目を向け、再び側壁板に寄りかかった。
(「しばらくは臆病者のふりをしておこう、BV。なかなか上手くやっただろ。」)
(「お前はこれからも厄介事を起こし続けろ。」)
例行検査が終了し、高速鉄道が再び起動しようとした時、リンスランスは脚を震わせながら、最新のニュースを見続け、同時にBVからの新しい情報を受け取った。
(「バクロフが先ほど琳懺星からの協力者と会見した。私は彼の身分を調査したが、この人物の情報はすでに隠蔽されていることが分かった。」)
(「隠蔽? つまり、琳懺星連合国さえも覆い隠したい人物だということだ。なぜ彼はバクロフ総領を訪ねたのか?」)
(「私はまだはっきりとは分かっていない。ただ、そういうことがあったと通知しただけだ。」)
リンスランスはうつむき、足元に浮かび上がった影を見るまでそうしていた。顔を上げると、それはあの警察官たちの中の一人、耳ほどの長さのショートボブの女性警官だった。
「何かご用ですか?」
「罰金です。」
「侮辱警察、罰金1000約幣。」
無表情の女性警官を見て、リンスランスは首を振り、脳機で罰金を支払った。
([罰金到着])
「たった1000で一度か、それなら割安だな。」
「我々はもう一度罰金を科すことを厭いませんよ。」
その女性警官は振り返って去り、去り際にリンスランスをもう一度一瞥した。その嫌悪の表情は、彼の先ほどの発言に呆れているようだった。
(「惜しいな、美人な小娘だったのに、この公司の犬に操られた警察に台無しにされた……」)
(「お前はいつもそうだ、少しも警戒心がない。」)
(「焦るなよ、俺はまだ正体を現していないだろ? 結局、楽々だ~」)
列車が発車し、リンスランスは首を振ってゆっくりと遠ざかる駅を見た。目的地に到着した後、彼は敵の軍事基地内に潜伏し、上級からの命令を待つだけでいい。
([モティス]偽死軍集團移動総基地)
「伭昭さん、あなたの目的は、我々のほうで大体理解しました。[零之切割]を制御する、これは基本的に不可能なことです。我々には[特体小隊]が牽制を行いますが、[零之切割]の知恵と多疑さからすれば、一度牽制されたら、おいそれと我が軍に近づかなくなるでしょう。」
「私もそう思います、バクロフさん。だから私は詳細な対策案を考えました。一度で『覚醒剤』を[零之切割]の神経脈絡に注入しなければなりません。」
「『覚醒剤』? 詳しく説明していただけますか。特製注射筒が必要なら、我が軍がこれを優先製作対象にします。」
「君たちは聖石遺跡坑を搬走した。そしてこの『覚醒剤』を作るには、その聖石の『因子』が必要だ。」
二人はオフィスに座り、最高機密性質の談話を行っていた。パンク・ヘンシが伭昭を現地基地に運んだ後、さらに数度の曲折を経て、最後に密閉車両に座って偽死軍集團の総基地に到達した。
「『因子』? 我々の科研所の研究員たちは聖石濃度の高い部位を研究しました。資料によれば、この聖石の『因子』は非視覚性物質で、超分子捕獲機でも採取は難しいでしょう。」
「特体小隊もこの『因子』と関係があるのでしょう。君たちにはさらなる研究を望みます。[零之切割]の前身情報は、すでに君に送った。SEU側が彼の消息を封鎖したので、君たちの情報部は彼に関するいかなる機密情報も調べられない。」
「大体理解しました、伭昭さん。あなたの親友がまさかこんな目に遭っていたとは。しかし彼は生前、機密を盗んだ犯罪者でした。この点において、我々は世論で優位に立てないと思います。それに、[零之切割]が珒京玹であることは、あなた以外には、あの『腸衣』という奴だけが知っているのでしょう?」
「私には、確信が持てません。もし『䬃(さつ)』組織の者が全員犠牲になり、我々二人だけが残ったのなら、君の言う通りです。」
「仮に君たち二人だけが生き残ったとしましょう、伭昭さん、君はあの人とも連絡を取っていないのですか?」
「はい、豚依と別れてから、我々二人は二度と連絡を取っていません。」
「では、あなたは宇宙に他に知り合いがいますか?」
「いません。SEUに逮捕された時期、私はずっと外を流窜していました。何人かの依頼人と短時間同行した人物以外に、親しいと言える人はほとんどいません。」
(「バクロフさん、こちらにご報告したいことがあります。」)
(「私は忙しい、シュンヨウトクに任せろ。」)
(「分かりました。」)
二本の指を脳機のそばから離し、バクロフは視線を伭昭に向けた。
「話を続けましょう、伭昭さん。あなたは計画を展開して話してください。私もできる限り協力します。」
「敬語は不要です、バクロフさん。私は苦難を経てきましたが、戦争の前では取るに足らない小兵に過ぎません。」
「『覚醒剤』の外見はさておき、鍵はその担体が何かです。[零之切割]に元の記憶を蘇らせるのですから、彼の記憶チップを抽出する必要があるでしょう?」
二人が話す間、特体小隊の四人はすでに門口で待っていた。彼らは特殊戦力であるため、総領と直接談話する権限がある。しかし、伭昭の件はすぐに明確に話し合わねばならず、四人は門口に立って待つしかなかった。
「バクロフの奴、一体何をやっているんだ。普段は鍵をかけないのに!」
「亓、バクロフは急用があるんだろう。我々は他のことをして、彼が通知するまで待とう。」アイネイキュウスは亓のそばで穏やかに諭した。
「バクロフは今、一人の男と話している。普段なら直接我々を入れてもらえるが、今回は重要な内容、ひょっとしたら我々の生死に関わることを話しているに違いない。」サルの両眼は緑色の光を放ち、彼はすでに壁の温熱変幅値を通して、横向きに屋内の二人を透視していた。
「もう! キュウス、[威布鲁]に飲みに行こう——」
亓はアイネイキュウスの腕を引き、廊下の端へと歩いていった。残りの二人もそれぞれの行く場所へ戻るしかなかった。
「リシグ、お前の体内の血圧指数がやや高い。時間があれば病院で圧寧-7(標的微小球注射剤)を注射してもらえ、いいな? それとお前のその長い耳、毎日少なくとも二回は手入れしろ。」
「キュウスの身体は、大丈夫か?」
「さっき彼の神経指標を見た。指数はまだ正常だ。少なくとも前回よりはましだ。ただし、彼が5日13分以内に再び能力を使えば、脳の負担が増す。」
こちらがまだ話している間に、アイネイキュウスと亓は移動基地の最下層へと移動していた。[零之切割]の奇襲のため、偽死軍集團の基地は、複数の巨構車で構成された合体車城に改造されていた。この移動基地の総長は約二千米、全体は五角形を呈し、五層に分かれ、各層はおよそ一万五千人を収容できる。彼らが尾部区域へ歩くと、そこには好感度百パーセントのバーがあった。
「付着式機甲より、あの大型機甲を操縦する方が刺激的だと思う。安全感の強い操縦室に座り、同時に窓の外の敵を爆撃する、その味は言い表せない——」
「お前は臆病者だ。実際に宇宙を遊泳するのが刺激的だ! あの太空軍たちを見ろ、誰が威風堂々としていない? みんな鉄包肉だ。有人機甲の損傷リスクの方がむしろ大きい。」
バーの鉄柵の門を一脚で蹴り開けると、亓は両手を頭の後ろに組み、アイネイキュウスは後ろに従い、両手をポケットに突っ込んでいた。
「亓、いつも通りか?」
「いつも通りだ、ウェイブル~一日酒を飲まないと、全身が辛くなる。」
「私はジュースだけで。」
「はい、お二人のお客様。合計500(約幣)です。こちらはどちらがお支払い?」
「私が——」
「いや、私だ!」亓は左腕を上げ、そして片手で強化ガラスのカウンターを叩いた。「前回はこの奴が先に払った。今回私はこの衣桁野郎に負けないぞ!」
瞬間、ガラスのカウンターが粉々に砕け散った。亓は頭を掻いて苦笑し、アイネイキュウスは仕方なさそうに首を振った。
「では、賠償費を加えて、100000約幣。」
「いくら?!!」
その二人が泥酔しようとしている間、バクロフと伭昭はまだ対策を協議していた。先ほどバクロフが問いかけた難題について、伭昭はしばらく考え、そしてついに解決方法を思いついた。
「バクロフさん、君は『特体』についてどのくらい知っている?」
「私のところの四人、それに時似對銘国の四人、加えて[零之切割]。この九名の特体の中で、私が知っているのは『荼姝』が公式発表の最強で、残りの四人、[零之切割]は特体を類人機に改造したもの、残りの三人は、君がくれた珒京玹が盗んだ機密文書によれば、私のところの四人と同程度だ。」
「バクロフさん、君は一人を遗漏している。」伭昭は両手を円卓につき、十指を組んだ。
「遗漏……つまり、『式』実験の失敗体のことか?」
「その通り、そして彼こそが、我々が逆転勝利する鍵だ。」
バクロフは驚愕して立ち上がり、その後ゆっくりと座り直した。彼は大体伭昭の計画を推測した。そしてこの計画は、宇宙の中でも空前絶後の存在となるだろう。
「『失敗体』を盗み出し、『痛苦値』を利用して[零之切割]と『覚醒剤』を接続する。伭昭さん、これはほぼ死路一条だ。もし[零之切割]が痛苦によって自分の経歴を思い出さなければ、我々にもう機会はない。」
「そして彼が[珒京玹]としての記憶を思い出すことを確実にするには、誰かが彼の記憶を採集する必要がある。彼の記憶は大抵压制されている。専門のハッカーが近距離で彼の脳機内の記憶を抽出し、しかもすぐに察知されないようにする必要がある。その後、それを『痛苦中』と融合させ、続いて聖石の『因子』を携えた注射器に一緒に押し込み、そして再び彼を奇襲し、正確に彼の神経中枢に注入する……」
「うむ……もし本当に彼を覚醒させられたとして、彼が我々偽死軍集團に加わるかどうかも考えねばならない。」
「私が彼を説得する。この点は安心してくれ。[零之切割]の助力があれば、偽死軍集團は約国に対して圧倒的優勢を得る。」
「もう一つ、伭昭さん……SEUが、黙って見ているはずがない。」
「分かっている。SEUは絶対に[零之切割]を拱手让人的に渡すことはない。この計画は、難易度が極めて高い。バクロフさんが私の提案を拒否するなら、私は再び宇宙を流窜するしかない。」
「熟考させてくれ、伭昭さん……まずは我々が特別に用意した休憩室でしばらく休んでください。ドローンが案内します。」
「私は一日か二日しか待てません。ご決断を。」
会談が終わり、伭昭は静かにオフィスを出た。やるかやらないか、これは生死を分ける問題だ。
(「賭けるか?」)
「戦争が好きな人間は、戦争を経験していないか、さもなければ完全な殺人鬼のどちらかだ。本当に平和を愛する人間は、『平和のために戦争の進行を加速させる』などとは決して言わない。」———某有名政治学者の発言。




