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毎日  作者: 青山えむ
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第2話 寒い朝

屋台はもう一つあった。鈴だ。大量の鈴が並べてある。

なんなんだろう、ここは。とりあえずスマホで写真を撮っておく。

その奥には建物。神社かと思っていたけれども、公民館のような雰囲気だった。

看板もなにもない。なんの建物なのだろう。


寒気がする。空が暗くなってきた。

まだ春の入り口だし、今は朝の七時。

平日は通勤ラッシュのある場所だけれども今日は土曜日。

普段ラッシュに遭っている人たちはまだ寝ているだろう。

いつもは渋滞しているこの大通りも今は誰もいない。


…ぶるっとした。

不気味なお面と大量の鈴。正体不明の建物。

もしこれが民家だったら不法侵入だ。

けど民家で屋台なんてやるかな、そう思って自分を落ち着かせた。

帰ろう。長居してはいけない気がする。


来た道を戻ろうと振り返ったとき、男がいた。

お面の屋台の横で、私を見ていた。


「ひゃっ」


思わず声が出てしまった。

ここの関係者だろうか。それとも私みたいに縁日かと思って見に来たひとかもしれない。


男の顔は笑っていた。パーマなのか、ボリュームのある髪型をしていた。

半袖のシャツに、手には大きい紙コップのようなものを持っていた。

口元が赤く見えた。

紙コップの中に、赤いものが入っているのだろうか。

笑った顔で、私を見ていた。気味が悪い。

下手に関わりたくない。

私は何事もなかったように立ち去った。


気づかれない程度に小走りで車まで急いだ。

無事に自分の車にたどり着きホッとする。

とりあえずスマホを見てみる。雨雲が近づいている通知が来ている。

だから暗くなったのか。

急いで車を出した。


大通りに出て、チラッとルームミラーを覗く。

今見た屋台が見えた。たぶんあの男もいる。

私を尾けてきた様子はない。

近所のひとか、散歩の途中に立ち寄ったのか。

きっとそうだ。半袖シャツにハーフパンツという、ラフな服装だったし。

この寒いのに?

あまり考えないことにしよう。



考えたくないのに、どうしても考えてしまう。

屋台…そう呼ぶのに違和感がある。

そうか、あの屋台はいつもあるのだ。

平日、私が出勤するときにいつもある。


キラキラの正体はお面だった。

表面の素材に反射していたのだ。

宵宮や縁日ではなかった。いつでもあるのだ。

なら、お面屋さんなのかな? あの建物が本物のお店なのかな?

じゃあ鈴は? 卸関係なのだろうか。

考えても分かるわけがない。もうやめよう。


私は今日、目的があったのだ。

最近話題のパン屋さんに開店に行くという。

SNSで紹介されて、すぐに売り切れとなってしまうお店だ。


今日は早起きできたので開店にチャレンジしてみる。

お店の前にはすでに二人ほど並んでいた。

駐車場には停められたので充分だ。

駐車場からお店の入り口に向かうと待っている人間は一人になっていた。

ひと組ずつ入るシステムなのだろう。




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