1話 朝
朝は絶望だけがある。
また生きなくてはならない。
あといくつこの朝を迎えるのだろう。
毎日同じことのくり返し。
同じ時間に同じ作業をして同じリズムで日常生活を送る。
変わるのは季節と、朝の明るくなる時間だけだ。
休日も、つい通勤と同じ道を通ってしまう。
無意識にハンドルがそちらを向いてしまう。
少し遠回りになってしまうけれど仕方がない。
本当に、同じことの繰り返しだ。
もう少しで会社が見える。休みの日までここに来てしまった。
なんだかなぁと思い、会社がある方向を見ないようにした。
向こう側がキラキラしている。
ああ、そういえばそうだった。
出勤するとき、いつもここを通ると目の端にキラキラし たものが見えていた。
一瞬気にはするけれども、運転中だしよそ見をするわけにはいかない。
目の端に映るだけなので、そこになにがあるかは分からなかった。
ちょうど赤信号に引っかかった。車が停車したのでキラキラしている方向を見てみる。
…あれはなんだ。
縁日のような雰囲気だった。屋台、だろうか。
奥に建物のようなものがある。
この時期に、なんの縁日だろう。
宵宮の時期でもないし。
どこかの会社のイベントだろうか。
答えが出ないまま青信号になる。
気になる。
いつもはこの信号を左折し、会社に向かう。
用事はあるけれど、少し寄るくらいなら。
このままあそこに行ってみようか。
交差点を越えて少ししたらあの場所がある。
その横に、車で通れる道路があるので右折ウィンカーを出した。
縁日と思われる敷地を確認し、ゆっくりと車を走らせる。
隣に空き地があったのでそこに車を停めた。
他に車はいなかった。
すぐに戻るので駐車していても問題ないだろう。
いったん道路に出てからじゃないと行けないみたいだ。
車が一台しか通れない道幅だった。
私が駐車した先は田んぼだった。車通りが少ないのだろう。
キラキラしたものが見えてきた。
敷地の横には松の木が茂って通れない。
大きい道路側からしか入れないようだ。
三段ほどの階段を下る。少し低くなっているのか。
どうりでよく分からない外観だったわけだ。
昔はここも田んぼだったんだろうな。
私が屋台だと思ったものは、お面だった。
いや、お面がたくさん並んでいる屋台と言ってもいいのだろうか。
横並びに十個ほど仮面が飾られている。
それがたてに五段ほどになっている。
上の段から見てみる。
同じようなお面が並んでいると思いきや、よく見ると微妙に違う。 色だったり表情だったり。
歌舞伎とか般若とか、そういう感じ。
まん中の段に来たら、趣が変わってきた。きつねやひょっとこ、アニメキャラクターもいる。
微笑ましい空気かと思ったら下の段はそうじゃなかった。
悪魔や血を流した顔など、ホラー映画に出てきそうな類だ。
なんだろう、ここ。
子どもだけじゃなくて大人にも向けたラインナップなのかな。




