4.リル
今回は、少し短め。
さて、リルという人物を探さなければならない。
セーフハウスを出ると、そこは小さな村だった。村は近世ヨーロッパの小さな村のような感じだった。
こういう景色もなかなか良いものだ。
何人かの村人に質問しながら、リルという人物が住んでいるという、家にたどり着いた。幸いなことに、マンティラの言葉の知識を、マンティラ神はくれていたようで、村人の言葉はわかった。
「さて、行きますか」
玄関のドアをノックする。当然、インターホンなんてものはない。
「はーい。どなた?」
中から声が聞こえた。若い女の声だった。
しばらくして、ドアが開いた。現れたのは、中学生くらいの女の子だった。それも、かなり可愛かった。
「リルさん?」
康介が話しかける。
「ええ、私はリルだけど、あなたは?」
「康介という」
「コウスケ?珍しい名前ね。」
と、その時ドアから音がした。”ビーンッ”という矢が刺さったような音だ。
康介は、ドアの反対側を見た。10メートルくらい先に弓兵が立っていて、その後ろに多くの人々が見えた。よく見れば、剣や弓を装備している。
「なっ!!!」
「とにかく中に!」
リルに言われて、家に入った。
「あいつらは?」
神戸が尋ねる。
「分からない」
リルもわからないようだ。
「それにしても、あなた変な格好ね」
「ああ、これか。スーツと言うんだ」
詳しく説明したいが、今はそんな状況じゃない。
あいつらは何なのだ。いや、それよりもこの状況をどうすればよいのだろうか。車まで行けば、なんとかなるだろう。しかし、車までどうやって行く。今の武器は、ホルスターに入れたPPSだけだ。予備弾倉は、2つ。弾は、合計21発。しかし、もうすぐ大軍がやってくるだろう。行動は早くしなければならない。
「よし、安全なところに行こう。」
「どこ?」
パディントンが尋ねる。
「セーフハウスだ。あそこなら、入っては来れない。」
「分かった。行こう」
「走るぞ」
扉を開けて、一気に飛び出す。
敵軍は10メートルほどのところまで来ていた。僕らの姿を見つけると、弓兵は打ってきた。
「走れーっ!」
両手でPPSを構え、真ん中にいた弓兵に向けて発砲した。胴体にあたり、弓兵は倒れた。発砲音に驚いたのか、敵軍は動きを止めた。
その間に、僕らは走った。もちろん、動きを止めたのは一瞬で、すぐに打ってきたが、走りながらも僕はPPSを構え、特に狙いはつけずに、残りの6発を打ち切った。
案外当たるものだ。構え方などは、友人のモデルガン好きから一通り教わっていた。再装填し、また弾をばらまく。
こんなことなら、アサルトライフルかなにかを持ってくるべきだった。
神様に底上げしてもらった、能力のおかげか、命中率はかなり早かった。
なんとか、セーフハウスにたどり着いた。
神戸の肩を矢がかすったが、軽傷だった。倉庫に入っていた包帯で応急処置をした。
「なんとか、ココまでこれたな」
「ええ。助かったわ。でも、それは何?」
リルが、PPSを指差して言った。
「こいつは拳銃と言ってな。この弾をものすごい速さで発射するんだ。」
そう言って、僕は弾を取り出し、見せた。
「これは、明らかに弓より便利ね。あなた何者?それにこの家って、英雄が住んでた家じゃないの?」
「ああ、僕はその英雄、大介の息子だ。」
そう言うと、リルは納得したようにうなずいた。
「なるほど。どおりで。あなたが私を訪ねてきた理由がわかったわ。私の母親は英雄に気に入られて、彼のアドバイザーとして働いていたのよ。」
「そうだったのか。なるほどな」
「知らなかったの?」
「ああ。」
「マスター、早くココから逃げたほうが」
神戸が言った。たしかにそうだ。だが、
「いや。村人を見捨てる訳にはいかない。それが俺の仕事だ。」
「そうでしたね。」
「いえ、その必要はないわ」
パディントンが言った。
「なぜだ?」
今にも、攻撃が始まるはずだ。
「おそらく、マスターのそれによっぽど驚いたのね。今、撤退を始めているわ。」
なんとまあ、腰抜けなことか。それとも、もともと本気で侵攻する気はなかったのかもしれない。
しかし、戦わなくて済んで良かった。




