5.大介
「マスター、これってどうやって動いてるんですか?」
今、僕らはバンに乗って、僕の父さんである山之内大介に会うため、大介が住んでいるという、家に向かっていた。
その家は、ザーノルド王国の東、セリア皇国のテユ伯爵領・フュマイエという街にあるらしい。
バンのカーナビでは、3時間程度となっていた。飛ばせばもっと早くつくだろう。
運転の方も、はじめこそ徐行運転だったが、慣れてくれば、以外となんとかなるものだった。もちろん、マンティラ神による強化のおかげだろうが。
「僕もよくは知らないんだが、多分ガソリンだと思う」
そのガソリンがどうなって、車が走っているのかまでは、僕も知らない。
「この世界って、スピード違反とか無いよな」
神戸に問いかけると、首を傾げて、
「スピード違反ですか?ああ、この世界じゃ、馬車に出せるスピードなんてしれてますから、そんなものはなくても良いんですよ。たしかに、この車だと、必要ですね。」
「ないなら、好都合だよ。あるなら、フルスピードで走れないからね。」
もちろん、他の馬車とのすれ違いや追い越しなんかのときは、減速させてはいるが、他の馬車とは、ほとんど会わなかった。
―――――――――――――――――――――――――
「よし。行こう」
ドアをノックする。
すると、声がした。女性の声だった。
しばらくして、ドアが開いた。
”あっ”っと声を漏らしたのは、リルだった。
「お母さん?」
リルはそう言った。
その女性の方も、驚いたように、
「リル?」
と、問ういていた。
「リルのお母さん?」
「ええ。久しぶりね。」
リルの母親が答えた。
「大介さん、います?」
「ええ。居ますよ。康介さんですね?大介さんがお待ちです。」
待っていたのか。ココに来ることを、知っていたのだろうか。
通された部屋は、応接間のようだった。大人数で押しかけるのも、あれなので、神戸とリルと僕で家に入った。残りは、車でお留守番だ。
やがて、老人が入ってきた。
最後にあったのは、10年前だったか。10年とは長いものである。それは、老人の姿を見てもわかることであった。
しかし、いくら年老いていようとも眼の前にいる老人は間違いなく、僕の父親、大介に間違いなかった。
「久しぶりだな、康介。」
大介が、そういった。声も少し衰えた気がする。意外と、父親の声も覚えているものだ。
「久しぶり。全然知らなかった。」
「ああ。この世界か。言っても信じなかったろう?」
たしかに、そのとおりである。
「でも、旅に出るって言った。どう考えても旅とは程遠い。」
「そんなことも言ったかな。しかし、新しい土地に、旅行に行って、人助けをして、気に入ったから永住した、それだけのことだ。」
「それだけとは、言えないと思うけど。」
使用人がお茶を運んできた。大介は、それを1口飲み、1息をついた。
「お前が、俺のあとを継ぐそうだな。」
「うん。務まるかどうかは、わからないけど」
「務まるわけがない。俺もそうだったからな。だが、お前はまだ若い。頑張れ」
「務まるわけがない、か。」
「そういえば、お前魔法は使ったか?」
「いいや、使ったこと無い。」
「ならば、ここに行ってみろ」
そう言って、大介は紙切れを差し出した。
"ウィンストン魔法大学 メクロフ教授"
とあった。
「俺の名前を出せば、魔法を教えてくれるだろう。」
「ありがとう。」
「神戸くんと言ったかな。よろしく頼むぞ。さぁ、もう行け。これから忙しくなる。」
「そうだな。父さんも体には気をつけてくれ。」
帰り際、リルの母親が来て、
「リル、あなたは康介さんに仕えなさい。未来の英雄に仕えられるというチャンスは他にないわ。」
「お母さんに言われなくても、そのつもりよ。」
「いいんですか?」
思わず、そう問うたものだ。




