2.転移
「うむ。嬉しい判断じゃ」
康介は、迷ったが父さんに会えることには、勝てず、結局引き受けることにした。
「ですが、他の人が死ぬのも嫌ですが、流石に自分の命と引き換えにはできません。」
「もちろんわかっている。俺たちとしても、死なれるわけにもいかんからな」
「わしからは、これを君にあげることにしよう。」
現れたのは、ディスプレイだった。そこには国産車のバンが写っていた。
「こいつには、幾つかの改良を施してある。窓は強化ガラスで滅多なことでは割れん。車体ボディにしても強化してある。魔法に関してはよく知らんが、あとで、こいつに魔法への耐性もつけてもらえ。中で、ある程度の生活はできるようになっておる。あと、ルーフにはソーラーパネルをつけておいた。中で電力も使えるじゃろう。あと、これが一番の目玉じゃが、倉庫をつけておいた。こいつは、マンティラのやつが作った倉庫でな。地球で言えば4次元ポケットのようなものじゃ。この中には、生活必需品から武器やツールなどが、たっぷり入っとる。このバンを君にやるから、持っていきなさい。きっと役に立つことじゃろう」
素晴らしいなと、康介は話を聞いて思った。まるでどこかのスパイ映画のようだ。
「俺からも、いくつか用意してある。来い!」
すると、マンティラの神様の横にパンダが2匹と猫が1匹現れた。
康介は、パンダの方は、見覚えがなかったが、猫の方には見覚えがあった。
むかし飼っていた、ペットだった。
「パディントン!」
康介は、その時の名を呼んだ。
すると驚いたことに、その猫は、
「お久しぶりです。」
と言ったのだ。
「喋った・・・?」
「そう。俺の魔法研究の結果生まれた、高い知性を持つ猫だ。改良を重ね、喋ることも可能にした。もちろん、君が飼っていた頃の記憶もある」
「もしかして、このパンダも?」
「はじめまして、マスター。神戸と言います。よろしくお願いします」
「マスター、新神戸っちゅうもんや、よろしくな」
二匹のパンダが挨拶をする。
「さすがは、神様ってところですか。この子達は、戦えるのですか?」
「新神戸は戦闘特化だ。君にも魔法による戦闘力強化を行うが、やはり元々の体力には影響される。そういう点では、新神戸は力になってくれよう。神戸のほうは、戦闘には向かない。ある程度はできるだろうがな。こいつは頭で勝負するタイプだ。アドバイザーか何かのほうが向いているだろうな。パディントンのほうは、静かに動けるからな。偵察や潜入なんかは得意分野だろう。体格の面で劣っているだろうから、戦闘には向かんかもな」
「頼もしいですね。」
「これから、こいつらは君の従者となる。好きに使ってくれ」
「さて、今口座に資金を送っておいた。通帳はこれじゃ」
地球の神様から通帳が手渡された。
「最後に、君の強化を行っておこう」
マンティラの神様が康介に近寄り、おでこに指を当てた。すると、指先から光が現れた。
その状態が20秒位続いた。マンティラの神様はその間、目を瞑り、何かぶつぶつと唱えていた。
指がおでこから離されると、康介は自分の体が軽くなったような気がした。
それを、マンティラの神に話すと、
「君の筋力や体力が急激に変わったからな。軽くなったように感じるのも当然だろうな」
と言われた。
「さて、君はそろそろ旅立ってもらおう。ついてきておくれ」
地球の神様にそう言われ、康介は立ち上がり、すでに歩きだしていた地球の神様についていった。その後ろには、3匹の従者達がついてきている。
歩いてみると、思った以上に歩くのが楽になっていた。そもそも、康介は体力があるわけではなかった。
地球の神様に連れられ、ついた場所は、ガレージのような場所だった。そこには、先程ディスプレイ越しに見たバンが停まっていた。
「さて、このバンは先程も言ったとおり、君のものだ。ほれ。」
そういって、鍵が手渡された。
康介は、運転席に乗り込んだ。トラックよりは小さいが、乗用車よりは車高が高い。康介は、まだ高校生なので、実際に運転したことはない。が、以前ハンドルコントローラーでレースゲームをやっていた経験もあるので、さほど心配はしていなかった。それを、神様達もわかっているのだろう。
神戸が助手席に、新神戸は後ろに設置されたソファに座った。
すると、携帯の着信音がなった。助手席と運転席の間にスマートフォンが置かれていた。
康介は、その電話に出た。
『康介くん、わしじゃ。』
どうやら、地球の神様らしい。
「ええ、聞こえていますよ」
『うむ。エンジンを掛けて、カーナビを操作してくれ。そいつには地球とマンティラの両方のマップデータが入っておる。その中のメニューから”転移操作”を選択してくれ。今は、”ラルエット”と”神戸”と”地球神の家”という選択肢があるはずじゃ。その選択肢は、どこかバンが入る場所に倉庫に入っている転移装置を設置すると、増えるぞ。くれぐれも、他の人間には見られないようにな。じゃあ、あとは、マンティラの神様と話してくれ。では、よい旅を』
通話はそれで切れた。
便利なものだなと康介は思った。




